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「 140文字の物語 」
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「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は、情けなく笑って最後の嘘をついた。
こんな弱々しい態度でつく嘘は、へこんでいた。
それでもそれは前へ進むための嘘だった。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と君の瞳を見つめて言った。
暗い絶望だからこそ輝く希望だというのに。
頼むよ、ごまかされてください。心に傷が増すから。
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暖房の暑さに眩暈を起こす。まだ春遠い時期だというのにアイスを買ってしまった。
家に帰れば暖房が利いている。炬燵にもぐりながら、食べるアイスも悪くないだろう。
帰り道「雪見だいふく、一つちょうだい」と妹が笑った。
「半分寄越せよ」と俺が言った。
暑さにやられた理性は計算ができない。
君はたった一つの生命だった。かけがえのない生命だった。他に代わりがない生命だった。
そんな君の手を握り締めて、言葉を言おうとした。
最期になるかもしれない、と分かっているのに、言葉は喉に引っかかって出てこない。
その代わりに、涙ばかりがぼたぼたと零れる。
君はそんな僕に微笑んだ。
妹が腕をつついた。「こんな日ぐらい寝癖を直してきたらどう?」と言われてしまった。
「何にもやる気がわかなかったんだよ」と俺は答える。
青空に昇っていく煙を見つめる。
早すぎる永訣だった。
もう親友とは話し合えないと思ったら、目頭が熱くなった。
涙を零さないように煙を見つめ続ける。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
どうか、この願いが叶いますように。
そうどこかの神様に祈った。
それは現実逃避のための嘘だった。
厳しすぎる現在から逃げ出すように「まだ一人で生きていける」と、君に嘘をついた。
これが本音なら、楽だったのに。と僕は存在しない神様に願った。
君は揚げたてのコロッケを口に運ぶ。嬉しそうに笑う。
僕はこの瞬間の君が好き。
だからついつい『お肉屋さんに寄っていく?』と尋ねてしまう。
君の答えは決まっているのに。
パクパクとコロッケを食べて、食べ終わった後、ちょっと寂しい顔をする。
それからショーケースをながめて、溜息をつく。
妹に添い寝して静かな口調で童話を読み聞かせる。
一日の終わりの幸せな時間だった。
「ハッピーエンドね」と妹はためいきをついた。
「幸せな結末は嫌いかい?」と僕は童話をかばうように言った。
「だって、現実はそうじゃないでしょう?」と妹は切ない口調で言った。
僕は童話の表紙を撫でた。
君が乗せてくれた秋の欠片。
夕陽のような、赤い血のような紅葉。
それを僕はそっと、指を両手で包む。
秋の香りは目に映らないものになってしまったけれども、乾いた感触がした。
君がくれたものだ。宝物になる。
「大事にするね」と僕が言うと、君ははにかんだ。
そして「ありがとう」と告げた。
「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、首つりピエロのように情けなく笑って最後の嘘をついた。
宙ぶらりんの二人の関係にピリオドを打つために。それは現状打破のための嘘だった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と首からぶら下がった縄を締める。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。
臆病すぎて、本当のことを言えなかった。
生まれる前から幼馴染であった少年がいた。
母親同士が親友で、家は隣同士だった。
どちらも一人っ子だったから兄妹のように育った。
小中高と同じ学校に通った。
そんな二つ年上の幼馴染と、最近ぎくしゃくすることが増えた。
この関係に名前を付けるとするならば、恋人ではないことは確かだった。
毎朝、お弁当を用意してくれる母に感謝していた。
家族の朝ご飯と共に作られるお弁当は大変だっただろう。
けれども、素直に感謝の言葉を伝えることができなかった。
睨むような視線で弁当箱を持って通学した。
空にした弁当箱がせめてもの感謝の印だった。
母はそのことに何も文句を言わなかった。
青い薔薇がこの世になかった頃。
ブルーの名を冠しても青紫色が限度だった。
青い薔薇を作り出すのは研究者たちにとって悲願だった。
そして、その悲願は叶うこととなった。
鉢の中で咲いた薔薇は空のように青かった。
同僚が肩に手を多く。とうとう願ったのだ。
青い薔薇の花言葉が『奇跡』になる。
本人に悪気はなかったのだろう。男の子は手を重ね合わして「これなんだ?」と言ってきた。
女の子にとって嫌な予感がした。立派ないたずらの一環だった。
男の笑顔で手を開く。
そこには女の子の嫌いな虫がいた。充分すぎるいたずらに、女の子は泣きだす。
男の子は慌ててそっと、指にしがみつく。
「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
少なくとも、平然を保って、慌てないように気をつけた。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
「永遠を信じている」と寂しがり屋な君に告げる。
永遠なんてものはないのは、知っている。
だから僕は心の中で本当に、ごめんね。と何度も謝った。
何でも思い通りになった。失敗することなんてなかった。
それだけの立場と、容姿と金があった。
それなのに生れて初めて落ちた恋は思い通りにならなかった。
すっかり僕は君に夢中になった。
今まで通り過ぎた一夜の恋が虚しく感じるほどに、君に夢中だった。
それなのに、この恋は叶いそうにない。
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