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「 140文字の物語 」
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「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。それでも、つかずにはいられない嘘だった。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と僕は君に告げた。今、この瞬間にも希望を持っている。
君が嘘だと見破ってくれたらいいのに。と僕は都合の良いことを思う。
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気持ちいいぐらい空は晴れた。
今日はデートだ。バレンタインデーの日から約束をしたデートの日だった。
一緒に遊びにいくのとは違う。何ていったってデートなのだ。心が浮かれる。
カレンダーにつけられたバツ印も、浮かれているようだ。
そのぐらい楽しみにしていた。この日を期待をしていた。
「ほら、薔薇が咲き始めたのよ」と少女が言った。
生命のやりとりをしている青年は、その言葉を無視をした。
咲いた薔薇を見る心の余裕なんてなかった。神剣・神楽が歌うような律動の方が大切だった。
「薔薇が咲いたの」少女は繰り返し言った。
今度の言葉には涙が滲ませるものだったの気がつく。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

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僕は、冷静であるように心がけつつ最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
君のことをこれっぽっちも考えていない嘘だった。
「別れよう。もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と僕は言った。
いつでも誠実でいてくれた君に告げる言葉ではなかった。
嘘だと言えたら、どんなに。
君と目をあわせたその一瞬、何とも言えない感情が渦巻く。
視線が宙でからんだら、君はそっけなく視線を逸らす。
君の目をもっと見ていたいのに、視線は窓の外。
僕は君と目をあわせた一瞬に、ときめくのに、君はそうじゃないらしい。
逸らされた視線が物語る。
そっと君を見ると視線を逸らされた。
親鳥のように、今まで見守ってくれたことに感謝する。
巣立ちのシーズンがやってきた。鳥たちのように、僕は旅立つ。
かつて親鳥がいたという場所へと、渡り鳥のように目指す。
新しい土地は一人かもしれないけれども、何とかやっていけるだろう。
だから、最後に笑顔を浮かべて抱きしめあった。
事態は緊迫していた。とうとう終わりがくるのだ。そう思うと心から笑う。
この事態を招いたのも、この事態にたどりついたのも、自分たちの責任だった。
樹の枝のように別れていて選択肢の中から選んだものだった。
それなのに醜く、己たちだけは助かろうとする。
その醜悪さに思わず笑みが零れる。
真夜中に、君から電話がかかってきた。LINEでもメールでもなく、電話だった。
電話口の声は少し震えていて、ただ『会いたい』とだけ言った。
僕は君が待っているという公園に走った。
ブランコに座っていた君が僕に気がつく。
すると君はさりげなく、僕の腕を折れんばかりに握る。
「寂しかったよ」
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは僕にとって最初で最後の嘘だった。少なくとも君に対しては。
「もう希望の捨てられるのはいやなんだ」と希望にすがりついている僕は言った。
君の大きな瞳は複雑な色が過った。
こんなことしか言えなくて本当に、ごめんね。と僕は思った。
虚栄心が勝って、君への贈り物は背伸びをした物になってしまった。
一生懸命に稼いだ金で、君に一番似合うペンダントを選んだつもりだった。
君は贈り物を見て、つまらなさそうな顔をした。
僕の心が大きく揺れ動く。
君にはありきたりな物だったかもしれないけれども、僕には大切な物だったんだ。
ちらちらと先ほどから君の視線を感じていた。
でも君は恥ずかしがり屋だから、自分からは言えないのだろう。
だから僕の方から君の手を伸ばした。
その結果は、まだ早かったようだった。
君は軽々しく、僕の手のひらに爪を立てる。子猫が爪を立てるように、可愛らしい痛みだった。
僕は微笑んだ。
「iotuは、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をついた。
君だけに届けばいい嘘だった。君以外の誰かに聞かせたくない話だった。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」と、僕は小さく笑った。
すでに、あきらめているのに。
本当に、ごめんね。と君に心の中で謝った。
するりと足首を撫でるように君は通り過ぎる。
ご飯は充分に食べているはずだ。空になった食器が物語っている。
甘えるように鳴く声に、僕は君の頭を撫でる。
「ちょっと待っていてな。仕事終わらせるから」構って欲しい君に話しかけた。
君は不満そうに足首を舐める。「くすぐったいよ」僕は笑う。
君と温もりを分かちあうなんて、重大すぎる罪だった。
まるで赤いリンゴを半分ずつ、食べあうようなものだった。
君はいつまでも綺麗でいなければいけない。
僕のような穢れた存在と隣り合ってはいけない。
それでも僕は君に、唯一のものを差し出すのだろう。
そして君の笑顔に罪を重ねるのだろう。
君は飛び切り可愛かったから、僕は思わず視線を逸らしてしまった。
それなのに君は「初めまして。これからは仲良くしましょ」と言った。
僕はぼそぼそと俯いたまま「よろしく」と呟いた。
そんな僕の両手のひらにしがみつくように君は握手した。
僕は目を逸らしつつ、君のぬくもりにドキッとした。
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