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「 140文字の物語 」
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「iotuは、感情を抑えながら最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「全部忘れていいよ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、荒波のように激しく揺れる感情を抑えながら最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。それでも、君のために嘘をついた。
「全部忘れていいよ」と君に向かって微笑んだ。
それでいいんだ。僕だけでも覚えていれば想い出になる。
本音は仕舞い込んだまま、僕は大きな嘘をついた。
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君は私を泣かそうとして、いつも意地悪をしてくる。
ある日は、私が苦手な昆虫を靴の中に入れた。
ある日は、私の手のひらにカエルを乗せた。
私は怖くてめそめそと泣いてしまった。それに気を良くしたのか、悪戯はエスカレートしていく。
だから私は決意した。
泣くくらいだったら、笑ってやる。
どうして青春は、こんなにも痛々しいのか。過ぎていく季節の一つでしかないのに、輝かしいのか。
ずっと不思議だった。
青春が終わる年頃になって、煌めいていた日々に振り返る。
二度と返ってこそないからこそ、痛みがあった。輝かしかった。
二度とやってこない青春を思って流れる時を見送った。
背伸びをして、太陽とキス。光を浴びて、体中が喜んでいる。ふいに、引っかかる。
私が太陽にキスをしたのか、太陽が私にキスをしたのか。
ささやかなことだったけども、重大なことだった。ひとひらの風が頬を撫でる。
どちらでもいいじゃないか、というように。
だから私は太陽に向かって笑った。
電車の車内はガラガラだった。君と並んで座った。
そしてそっと、君の指先を握る。電車のリズムとは違う震えが伝わってきた。
やっぱり、外に出ていくのは早かったのかもしれない。
人の少ない昼間の電車なら大丈夫かもしれない、と思ったのは早計だったのかも。
震える指先をぎゅっと握り締める。
『普通』って何だろう。僕は『普通』にできているだろうか。
他人と違ったことをして、変わり者になっていないだろうか。
そんなことを頭の中でぐるぐると考えてしまう。
お母さんの言う『普通』になれているだろうか。優しいお母さんが笑い者になっていないだろうか。
僕は心配になってしまう。
僕は適当に拾ってきた枝で、大きな釜をくるくると混ぜ返す。大きな釜の中には、雨が溜まっていた。
これから地上に降らす雨だ。
少し前まで師匠は、あれこれと言ってきたのに、今は『任せる』の一言で、布団の中だ。
僕が一人前になったのだろうか。それともこの仕事に飽きてしまったのだろうか。
君をベッドの上に組み敷いた。僕は無理矢理、君の腕を両手で包む。これで君は逃げることができない。
これから起こる惨劇に、君はおびえるように震える。
大きな瞳を瞬かせて、まるで懇願するように僕を見つめる。
けれども、僕はこの好機を逃すつもりはない。僕はそっと唇を君の口に近づける。
「iotuは、まるでいつも通りに最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

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僕は、まるでいつも通りに最後の嘘をついた。いつものように、普段のように嘘をついた。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
「君が居なくても何も変わらないさ」と、君を心配させないように言った。
だってもう、しかたないだろう?
分かりやすい嘘でも、君は騙されてくれる。それに感謝した。
あの日、家族はバラバラになってしまった。残されたのは兄弟だけ。それすらも別々の家に引き取られた。
もう少し一緒にいたかった。そんな未練が後ろ髪を引く。
けれども、もう戻ることはできない。懐かしいあの日を思い出す。
そして、心の中で涙を流す。帰ってこない日々に、あたたかい日々に。
春を通り越してしまった日差しの中、黙々と道を歩く。今日も昼ご飯を食べていないだろう博士のために。
手元を見ると、時計はぴったりと長針と短針が合わさっていた。
博士は、今日はどんな話をしてくれるだろう。それが楽しみで足を運ぶ。
ちょっと不格好なサンドイッチを喜んでくれるだろうか。
「挨拶しなさい。お前の婚約者に」と父が背を押す。
けれども、どんな言葉を紡げばいいのか分からない私はうつむいた。
すると力強く、私の手のひらに指を絡めるあなたがいた。
「よろしく」という言葉に、そろそろと私は顔を上げる。
眩しいぐらいの笑顔をあなたは浮かべていた。私は微笑んだ。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それは明日という未来を歩き出すための嘘だった。
「ずっと君と一緒だよ」と僕は分かりやすい嘘をついた。
繋いだ手がゆるりと解ける日は近い。僕と君は違う道を歩いていく。
嘘だと言えたら、どんなにいいだろうか。僕は言葉に出来なくてうつむいた。
「何の用?」と君が目が合った。視線が絡むのは何度目だろうか。
「目で追ってしまうのは、つい癖で」と僕は言い訳をした。
君を子ども扱いをしたわけではなく、魅力的な君が他の男を見つめる日が来るのだろうか、と君を見つめてしまった。
君をジロジロと見るのは不躾だと分かっていたけれども。
椿油を塗って黒髪を誇っていた女たち。僕自身の髪にも塗られて、髪はしっとりと、真っ直ぐになった。
今でも気持ち悪い女たちの仕草だったと思う。
そんな女たちになりたくなかったから、自由になった時に、僕は髪をバッサリと切った。
綺麗な髪がもったいないな、と君は惜しんでくれたけれども。
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