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「 140文字の物語 」
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「今日はのんびりしましょう」少女が明るい声で言った。
特に用事もなかったので、青年は頷いた。
「決まりですね!」嬉しそうに少女は笑う。
青年はのんびりするとはどういうことをすればいいのか首をひねる。
少女がお茶と菓子を運んできた。
「縁側で食べましょう」と少女の提案に乗る
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早朝だったから声をかけずに家を出た。
少しだけでも睡眠時間を確保して欲しかった。
なかなか寝つけないでいることを知っていた。
用事を済ませて帰ると涙で頬を濡らした少女が待っていた。
胸がずきりと痛んだ。
少女の小さな手が青年の服の裾を掴んだ。
「どこにも行かないでください」
名残りの椿がポトリと落ちた。
音もなく落ちたそれを拾う。
紅い椿はまだまだ瑞々しかった。
たなごころにしっとりとした感触を残す。
椿が落ちるのは自然なことなのだけれど、心がざわめく。
悪い予感が脳裏をよぎる。
ただ花が落ちただけだというのに、ここまで心をかき乱される。
出会った瞬間、魂が震えた。
遠い昔に別れた魂の半分だということが分かった。
涙が零れそうになるのを我慢する。
また巡り会えた奇跡に神様に感謝した。
今度こそハッピーエンドになりますように。
それだけを祈って駆け寄った。
こちらに気がついたのか微笑んでくれた。
あの日のように。
長き道のりに友にするのは懐かしい歌。
誰に聞かせるものでもなしに口唇から零れる。
かつて一緒に歌った幼友達は息災だろうか。
独りきりの旅の合間に思い出しては消える想い。
楽しかった。
温かかった。
心地良かった。
思い出はいつも優しい。
立ち止まり遥か遠くを見る。
故郷のある方へ
窓越しに欠けはじめた月を仰ぐ。
今夜は頭痛がひどい。
月のように真っ白な錠剤を取り出して、飲みこんだ。
明日は雨だろうか。
月が観られないのは残念だが、この季節には恵みの雨だ。
降らなければ降らないで問題だ。
季節はゆっくりと巡る。
それに置いていかされそうになる。
神剣・神楽を持ち出した時に決めたはずだった。
同胞殺しの妖刀と運命を共にするなら、この人しかいないと思ったはずだった。
巫女と担ぎ上げられていても、何もできない自分に嫌気がさしていた。
けれども戦闘を見守っているだけしかできないのもまた辛いことだと知った。
だから祈る。
「コンビニに行こうよ」と少女が言った。
「それで無駄遣いをするんだね」と少年は言った。
「無駄遣いじゃないもん。甘い物を食べたくならない?」と少女は少年の腕を掴む。
「ちっともならないね」にべもなく少年は言う。
「こんなに暑いんだからアイスとか」少女は食い下がる。
雲のような綿菓子を食べながら、熱気にあふれた道を歩く。
慣れない浴衣姿で熱せられたアスファルトを歩くのは苦行だった。
でも、一番キレイな自分を見て欲しかったから我慢した。
綿菓子じゃなくてかき氷にすればよかったと今更、後悔する。
真夏日の日差しにくらくらと眩暈を起こす。
青年のヘアゴムが切れて中途半端に伸びた髪が血に染まる。
神剣・神楽を持ち直す。
その姿は戦神のようで壮絶な美しさがあった。
少女は勝敗の行方を目を潤ませながら見守る。
何もできないから辛くて、泣き出しそうだった。
本当は戦って欲しくないと口から零れ落ちてしまいそうだった。
-
眠れない君の元へ、そっと忍んでいくよ。
だから窓は閉めないで。
大人たちにはナイショだよ。
魔法が解けてしまうからね。
枕元で終わらない物語を綴るよ。
旅の途中で見聞きしたことを君にだけ伝えるよ。
君が行ったことのない異国の恋物語をしようか。
さあ瞼を閉じて。
夢の世界へ行こう
昼の暑さも夕方になるとだいぶ和らぐ。
犬の散歩をする人たち。家路を急ぐ人たち。
窓からは今日の晩ご飯を作る匂いが漂ってくる。
この時間が大好きだ。
涼しげな風が頬を撫でて去っていく。
陽が沈んでいくのを眺めながら今日の終わりにそっと感謝する。
今日も幸福だったことに。
実は気になる人がいる。
いつも同じ電車に乗っていて、同じ車両出会う人。
私の方が先に降りちゃうから、どこまで電車に乗って行くかはわからない。
名前も住んでいるところも分からない。
そんな人を好きになってしまった。
毎朝、出会うあの人の名前が知りたい。
今日こそ勇気を出す。
青空にぽっかりと雲が浮かんでいた。
風が爽やかに吹いていた。
デート日和の一日になりそうだった。
木漏れ日が目に楽しい。
市民に広く愛されている公園は、今日も賑やかだった。
彼と並んで歩いているのが嬉しくて、心が躍る。
ちょっと大胆な気持ちになる。
そっと、彼の腕に触れる。
ヘアゴムが切れた。
使い続けていれば当然のことだ。
予備のヘアゴムは買ってある。
引き出しに仕舞ってあったそれを手にする。
中途半端に伸びた髪を結ぶ。
切れたヘアゴムをゴミ箱に捨てようとして、手が止まる。
思い出が詰まり過ぎたヘアゴムだった。
だがもう用をなさない。
心が揺れる
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