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「 140文字の物語 」
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そろそろ帰ってくる時間だ。
今日は何事もない日だ。
買い出しに出かけた青年が厄介な相手とすれ違うこともあるかもしれない。
そう思うといても立ってもいられなくなってしまった。
そわそわと台所と玄関を行き来する。
一秒でも早く帰ってきて欲しいと思った。
一緒に出掛ければ良かった
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急に入った飲み会のせいで、帰宅できたのは12時を過ぎていた。
終電ギリギリで帰ってきたのは後ろめたく、静かにドアを開けた。
玄関には怒り顔で、両手のひらを握り締めた姿の妻がいた。
「ごめんなさい」と謝りながら、コンビニで買ってきたスイーツを差し出す。
怒りは解けたようだ
青年は飛びこんできた少女に何も訊ねなかった。
空き部屋を提供して、生活を共にしていても何も問わなかった。
戦いが激戦化していく中疑問も増えていく。
そろそろ神剣・神楽を持ち出した経緯を訊いても良い頃だろう。
それで少女との関係が変わるとは思わない。
だから青年は口を開いた
「これからご飯、食べにいかない?」自然に誘えたと思った。
どもらなかったし、唇は微笑みを保っていたはずだ。
「ごめん。今日は予定があるんだ」すまなそうに同僚は言った。
「また、今度」体の良い断り文句だ。
優先された予定が羨ましいと思う。
「いつなら空いているの?」と訊いた
ドーンっと音を立てて花火が夜空を彩る。
二人は無言で空を見上げていた。
受験を迎えた今年、最後のデートになるだろうと思って気合を入れてきた。
人混みの中、目立つわけじゃないけれど浴衣を着て、髪をアップにした。
恐る恐る、手のひらを触れ合わせる。
ぎゅっと指を握り返された。
少女と青年は外食をした。
いつもは少女が台所を受け持っていて、料理を作っていた。
ねぎらいを込めての外食だったから、嬉しかった。
家では食卓の上に載らないデザートまでごちそうになって、幸福感に包まれた。
お手洗いに行っている間に会計が済んでいた。
青年は大人なんだと思った
中途半端な長さの髪をヘアゴムで結ぶ。
神剣・神楽の鞘を持つと、立ち上がった。
玄関では少女が待っていた。
「行きましょう」硬い表情で少女は言った。
青年は無言で頷いた。
灼熱の太陽も沈み、世界は曖昧な色で染まっていた。
結界内に入ると、ひらりと浴衣の袖を翻す女性が待っていた
好きになった人のことは何でも知りたいと思う。
特に思い出とか。
そこには自分がいないのが少し寂しいけれども、好奇心の方が勝る。
こうしている間にも二人の思い出が増えていくのかと思うと嬉しい。
だから、過去を知りたいと思うのだ。
嬉しそうに語る横顔を見れれば充分だった。
「ナイショだよ」少年は囁いた。
少女は真剣な顔つきで頷いた。
二人は付き合いたての恋人同士。
二人の両親は二人が仲良くするのを快く思っていなかった。
だからこそ燃え上がる恋心。
二人が相思相愛の関係になるのは早かった。
秘密が増えたが、それすら心踊るものだった。
「誕生日、おめでとう」と茶封筒を手渡した。
中にはピン札が入っている。
「ありがとう」と彼女は喜ぶ。
初めの頃は現金を渡すのに躊躇した。
プレゼントを買って渡した方がいいと思った。
けれども、彼女が現金の方が喜ぶ事実を知った。
それ以来、お祝いごとには現金を渡している。
メールで早朝の教室に呼び出された。
鉛のように重い空に不安を覚えながら、教室のドアを開けた。
呼び出し人は机の上に座っていた。
男子生徒はスマホの液晶画面を見せる。
そこには罵詈雑言が並んでいた。
「知ってた?」と笑う。
他人がどんな目で見ていたか知って、心が傷つく。
出来立てのたこ焼きを口に運ぶ。
口の中が火傷しそうなほど熱い。
とろっとした生地とカリッとした表面が美味しかった。
ごろりと入ったタコがアクセントになっていた。
ソースと踊る鰹節と青のりが食欲をそそる。
熱いのが分かっているのに二個目を頬張る。
やっぱり美味しい。
目が覚めたら昼だった。
二度寝した記憶はあるが、ここまで眠るのは計算違いだった。
今日は夕方から友達との約束がある。
急いで支度をしなければならない。
目覚ましをかけなかった自分も悪いが、起こしてくれなかった家族を恨む。
とりあえず風呂に入る準備だ。
ゆっくりしたかったのに
窓から入ってくる太陽光で朝が来たことを知る。
寝ぼけ眼をこすりながら、起き上がった。
昨日、出来た傷が痛む。
思わずうずくまってしまった。
息を止めて、痛みに耐える。
枕元に置いてある神剣・神楽を手にする。
すーっと痛みが引いていく。
呼吸が落ち着くまで神剣・神楽を抱いていた
もう逢えなくなる。
これが最後だと思ったら、視界が揺れた。
少女は泣きそうになりながら、少年の指先を折れんばかりに握る。
こうして手を繋ぐのも、終わり。
少年は空いている方の手で、少女の頭を撫でる。
「絶対、戻ってくるよ」と少年は微笑みながら言った。
少女は無言で頷いた。
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