ベッドの上で膝を抱えて座り込んでいた。
外は冷たい雨が降っている。
足元にある携帯電話が震えた。
長い着信の後留守番電話にメッセージを残したようだった。
今日は誰とも会話したくない。
静かな雨音に耳を澄ましていたい。
それなのに携帯電話がひっきりなしに鳴る。
孤独には浸れない
神剣・神楽を前に心がざわめく。
これから殺し合いが始まる。
引き分けはないデスゲーム。
気が引き締まるというものだ。
神剣・神楽の律動に気分が高揚してきた。
あまりよろしくはない兆候だった。
敵【同胞】を殺すことに慣れていくのは。
たとえ自分の生命をかけた戦いだとしても。
戦いのお誘いが届いた。
紙を見ていたら、少女が覗き込んできた。
「まさか一人で行こうって思っていませんよね」と呟くような小声で言う。
「家で待っていても良いんだぞ」と青年は言った。
出来るだけ少女を巻き込みたくない、そんな気持ちがあった。
「大丈夫です」と少女の瞳が煌いた
ゆっくりと太陽が昇り始めた。
吐く息は白く、冬の訪れを暗示させていた。
青年は中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶ。
寝室に戻ると、枕元に置かれている神剣・神楽を手に取る。
神剣・神楽は嬉しそうに律動していた。
今日もここに戻ってくると胸に誓う。
玄関先では少女が待っていた。
残業が終わって、同僚とファミレスで遅い夕ご飯を摂ることになった。
メニューには写真つきで美味しそうな料理が並んでいた。
セットメニューも豊富で、どれを食べるか悩む。
それは同僚も一緒だったらしい。
食後についてくるデザートをどっちにするか悩むと言った
駅でぱったり学生時代の友人と出会った。
歳月が過ぎても変わらないものがある。
一目で友人と分かった。
あちらも同じらしく連れ立って居酒屋に行くことになった。
酔いが回ると学生時代の話になった。
出てくる思い出は失敗談ばかりだった。
友人にどう思われているのか、心配になった。
少女が言うには、今夜は流星群のピークを迎えるそうだ。
それで天気を気にしていたのか、と思った。
流れ星に3回、願い事を言うことが出来たら、その願い事は叶うそうだ。
迷信と切り捨てることも出来たが、少女の顔を見ていたら、そんなことは出来なくなった。
晴れるといいと思った。
他人と違う。
そんなささやかなことで心配になるのは青春の特権だろう。
他人と自分は違うのだと分かるまで悩む。
社会に出て大人になってしまえば、そんなことは笑い話になってしまう。
少しでも心が軽くなるように、失敗談を語ってやるのは大人の務めだ。
時間が解決してくれるとしても
クリスタルグラスと英語で気取ってみたけれども、普通の水晶造りのコップだ。
夜光の杯とも言える。
手の平に収まってしまうほど小さなそれをラッピングしてもらった。
大切な友達の家まで歩く。
今日は何でもない日だけれども、自分的には大切な日だから。
赤の他人から友達になった日。
今日は小テストが返却される。
少女の心臓は自然と弾む。
今回はケアレスミスはないはずだ。
少女は白金色の頭髪の少年を見やる。
いつも通り無表情で席についていた。
視線は真っ直ぐに黒板に注がれていた。
机の上には何も置かれていない。
筆記する必要はないと言わんばかりだった。
雨の日はどうにもうっとおしい。
晴れを見たのはいつのことだったか。
下駄箱で傘を開いた。
すると玄関先でクラスメイトと目が合った。
「傘、忘れちゃったの」と彼女は言った。
これって最高のチャンスじゃないか。
「良かったら入ってく?」と俺が言うと、彼女は「ありがとう」と笑った
しっかり者の長女で、ずーっと通ってきた。
小さな弟妹の面倒を見るのは当然で、我慢もさせられた。
忙しいお母さんの代わりに、小さなお母さんという役割を担っていた。
社会に出てもそれは変わらない。
そう今日までは。
酔いが回ったのが悪かった。
後輩はニヤニヤと笑いながら口を開く
「誕生日、おめでとう!」祝いの言葉と共に大きな箱を手渡された。
「出会ってくれてありがとう!これからもよろしくね」と彼女が笑う。
それはこちらの台詞だ。
祝いの言葉が嬉しかった。
今日は365日の中で何でもない日だ。
自分の誕生日を覚えていてくれたことに、心を動かされた。
車の中は一人きりだ。
誰も邪魔しない。
お気に入りの曲をかけて、どこまでも遠くに行ける。
孤独は感じない。
逆に、自由になれることが心地よい。
特に目的地はない。
一人旅の特権だ。
気になる店があればそこで駐車する。
小腹が空いたのでカフェに入る。
どんなメニューがあるか楽しみだ