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「 140文字の物語 」
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少女は道を曲がるまで、何度も振り向く。
その度、少年の柔和な微笑みと出会う。
笑顔で見送ってくれることが苦しい。
それが役目だと分かっているけれども、辛い気持ちになる。
少女は、また振り返る。
少年はにこやかに微笑んでいた。
どんな本心を抱えているのか。
それを思うと悲しくなった。
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虫が鳴いている。
命がけの愛情表現だ。
恋する相手を探して、懸命に知らされている。
本能と言えばそれまでだけれど、自分には足りないものだ。
たかが恋だと思ってしまう。
誰かを命をかけてまで愛することなんて夢物語だ。
それとも、これから出会う誰かとなら、そんな恋ができるのだろうか。
何度目か分からないお見合い話。
今は結婚よりも仕事を大切にしたい。
そんな話を聞いてくれる親戚連中ではない。
女の幸せは結婚して、子どもを産み育てることだ。
そんな一昔前の考えに凝り固まっている。
確かに恋話ひとつ噂にならない私のことを心配してくれるのは分かる。
でも選ばせてほしい
愛していると貴方は言うけれども、体を繋げるだけの関係だ。
二人でどこかへ行くこともない。
ただただ体を重ねるだけだ。
貴方の都合に振り回されて、こちらの事情を聞くこともない。
だから、今日でお別れしましょう。
だってこんなの、愛じゃない。
今度は私を大切にしてくれる人を探すわ。
暗くなると順番に街灯が灯っていく。
まるで星が地上に降ってきたように、周囲を照らす。
毎日くりかえされる光景だけれども何度見ても素敵なものだ。
夜長になってきて、街灯が灯る時間も長くなってきた。
できた影を踏みながら、羽虫のように街灯に近づく。
真っ白な輝きは本当に美しかった。
「好き」だなんて嘘でもいえない。
貴方に出会ってから、温めてきた大切な気持ち。
そう軽々しく口に出せない。
冗談だと受け取られたなら、辛い。
本気だと思われたら、今までの関係が崩れる。
どっちの結末も苦しいから今日までいえないでいる。
私の想いは私だけのもの。
今日も貴方を追いかける
-
悲しいことがありました。
そう口に出してしまえば陳腐なことですね。
私の悲しみは私だけにしか分かりません。
それでも、私が悲しんでいることを受け止めてほしいのです。
ひどく傲慢なことを言っていることは理解しています。
ですが悲しいことがあまりに大きすぎて一人では抱えきれないのです
-
君から貰った幸せの数を数えてみた。
両方の指では足りないぐらいだった。
僕にとって君は幸せそのものだと気がついた。
そんなことは君は知らないだろう。
君の笑顔、君の明るい声、君と重ねる想い出。
僕は常に幸せを感じる。
砂糖菓子のように甘い幸せに浸かっていたい。
僕は欲張りになる。
今日の客は見るからに貧しい身なりの青年だった。
続けて通えるようなお金はなさそうだった。
「私は高いわよ?」女は言った。
青年は一夜限りの恋愛遊戯には向いていなさそうだった。
「一目惚れだったんだ」真剣な目をして青年は言った。
女は鼻で笑った。
ここでは本物の恋愛は禁止されている。
また一人になってしまった。
ようやく手に入れた幸せは、あっけなく去って行ってしまった。
孤独という鎖につながれている囚人のようだった。
一度、幸せを味わってしまったからだろうか。
二度と手に入らないと分かっているからだろうか。
堂々巡りの壁にぶち当たって、打ちのめされる。
辛い。
何度も繰り返し言われた。
人間の振りをして紛れこんでいる鬼がいるから、決して名前を教えてはいけないよ。
大人たちは耳にタコができるほど言った。
子供たちはみな愛称で呼ばれる。
言いつけを一度きり破った。
遠く離れなければいけない幼友達に名前を教えた。
元気だろうか、と思いを馳せる。
どこに行っても所謂めんどくさいひとたちがいる。
親切心からかもしれないが、大きなお世話だということに気がついていない。
そんなひとたちと話を合わせなければならないと思うと気が滅入る。
今日は特に酷かった。
貼りつけた笑顔にヒビが入りそうだった。
それでも表面を取り繕うことができた
少女に出会うまで、季節は移ろうだけのものだと思っていた。
なんとなく時間が経過していくだけで、注意を払ったことはなかった。
どうでもいいことの一つだった。
それが少女と出会ってからは季節の訪れを楽しむようになった。
少女が一つ一つ丁寧に教えてくれる。
そのおしゃべりが楽しい。
何気ない日常を送っていると忘れがちになる。
いや、正確には努めて考えないようにしている。
非日常というアンバランスな土台に築かれた砂上の城だということを。
神剣・神楽に選ばれた青年は、中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶ。
今宵もとっておきのパーティーの招待状が送られてきた。
アスファルトから反射される熱と太陽の日差しを浴びながら通学路を歩いていた。
二人並んで歩けば、単調な日々が彩られる。
幼馴染みの少女は学校であった話を楽し気にする。
少年は聞き役に徹していた。
少女はそっと、少年の指先をぎゅっと握る。
二度と離れないように強く。
少年は握り返した。
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