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「 140文字の物語 」
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初めて銀盤に立つ。
スケートシューズを履いて恐る恐る歩き出す。
すでにリンクの中央にいる彼が手招きする。
エッジが氷を刻む。
それが怖くて、滑るよりもおっかなびっくり歩く形になる。
見守ってくれている彼も微苦笑を浮かべている。
やっぱりスケートなんて向いていない。
運動音痴なんだから
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飼い主バカだと言われても仕方がない。
毎日、写真を撮ってはSNSにアップしている。
たくさんいる中で、一番うちの子可愛い。
今度は動画が撮れるカメラを買ってこようか。
ペットショップで出会ってから、毎日が楽しい。
うちの子と過ごすことで幸福な気分になる。
どんなに仕事が辛くても癒される
心が重ならなくても二人でひとつになれたなら快感だと知ってしまった。
気持ちの共わない快楽は、終わる度に虚しさでいっぱいになる。
けれども君をつなぎ留めておく方法を知らない。
好きなのに好きと伝えられないのは苦しい。
何度、夜を一緒に過ごしてもスポーツみたいな交わりに溜息が出る。
生まれて初めて生命のやり取りをする場所に立つことになった。
鍛錬とは違い、殺すか殺されるかの世界だ。
生き残りたかったら、他者の生命を奪わなくてはいけない。
そのことが怖くて震えた。
誰にもばれないように、さりげなく、指をぎゅっと握る。
手の平に爪が食いこみこれが現実だと知らせる
少年は恐る恐る、少女の指をぎゅっと握る。
まるで壊れやすいものにふれるように。
緊張が伝わってくる。
少女は「大丈夫だ」と伝えるように指を握り返す。
少年は弾かれたように少女の顔を見る。
少女は微笑んだ。
まだ恋人同士になる前の出来事だった。
今ではどちらからともなく自然に手を繋ぐ。
全然、大丈夫じゃないのに笑顔で「大丈夫」と言った。
本当は泣き出したいくらい辛いのに。
優しく抱きしめてほしかったのに、言えなかった。
簡単な嘘くらい見抜いてよ。
何年一緒にいるの。
言葉少なに帰り道。
「辛かったら辛いと言ってほしい」と表札の前で言われた。
不意打ち過ぎて涙が零れた
残業が終わって、すし詰めの満員電車で帰ってきた夫は、風呂も食事もせずに撃沈した。
スーツも脱がずにソファで眠っている。
待っていたこちらとしては文句の一つもつけたくなる。
が、相手はすでに夢の中。
寝ている夫にキスをする。
王子様ではないから眠り姫のように起きてはくれないようだ。
写真整理をしていたらブルーな気分になった。
アルバムは生まれたての自分から始まっていた。
折々に撮られた写真はある日を境に途切れる。
間が開いて日々を刻むように風景写真に変わる。
アルバムに貼られる写真には少女が映りこんでいた。
「どうかしましたか?」声をかけられて青年は狼狽する
幼馴染はいつもでも明るい。
真昼の照明器具のように、無駄に輝いている。
一番近くにいるから、苦しいことも、悲しいこともあることは知っている。
それでも幼馴染は何でもないことのように笑顔でいる。
そのしなやかな強さの元を知りたい。
ずっと一緒にいるのに分からない。
それは好きの始まり
桜が咲くのが楽しみな季節なことだった。
きな臭い噂はあった。
それが的中するとは思わなかった。
家族と暮らしていた屋敷が炎に飲まれる。
侍従に手を引かれ落ち延びた。
どうせなら両親と一緒に朽ちたかった。
まだ引き返せる。
抵抗するけれども侍従の手は力強い。
自分ひとり生きてどうするのか
今日は家に傘を置いてきた。
最近の天気は不安定でコロコロと予報が変わる。
星占いを見るついでに天気予報を見た。
午後から下り坂だと天気予報士は言った。
予想通り、雨になったら良いのに。
そしたら、それを口実に傘に入れてもらえる。
一緒に帰る理由になる。
もどかしい距離にいる二人だから
惚れたほうが負け、とはよくいったもんだ。
我が儘な彼女に振り回されている。
猫のように気分屋な彼女にペースをかき乱さられている。
そんな状況も悪くない、と思ってしまう。
次はどんな出来事が待っているのだろうか。
どんなことも彼女が提案すると飛び切りの魔法がかかっているようだった。
誰もいないオフィスで独り言をつぶやく。
上司に押しつけられた仕事のせいで、今日も残業だ。
しかもサービスという名を冠する。
どうしてこの仕事を続けているのかわからない。
転職しても、待遇が変わるとは思わない。
それが最大の理由だろう。
それでも自分ばかり残業をしている現状は苦しい。
アラームをかけていたのに、寝坊した。
前日の睡眠時間が極端に短かったせいだろう。
疲れが出て眠ってしまったのだろう。
いつもよりも2時間遅く起きた朝は、白かった。
明るい日差しが部屋に入りこんで、すっきりとした目覚めだった。
休日でよかった。
仕事のある日だったら笑い話にならない。
学生時代から付き合っていた恋人と別れた。
喧嘩をしたわけじゃない。
他に好きな人ができたからじゃない。
「君とは、幸せになれないから別れよう」というのが理由だった。
クリスマス一週間前の出来事だ。
幸せになれない。
待っているだけでは、いけなかったのだと思い知らされた。
辛い理由だ。
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