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「 140文字の物語 」
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一学期最後の登校日だった。
君と一緒に家まで歩いていく。
夏休みに出された課題と置きっぱなしだった副教材が重かった。
それでも君が明るい笑顔を見せてくれるから、僕は笑顔でいられた。
「夏休みも遊ぼうね」と君が言う。
僕は頷いた。
君が好きで、嘘をついた。
今日が君と会える最後の日だ。
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手のひらに残った温もりを逃がさないように握りしめる。
ここからの道を進むと決めたのは自分自身だ。
振り返ったら、二度と歩きだせそうにない。
それが分かっているから、帽子を深くかぶって、背筋を伸ばす。
残していく人たちの記憶には立派だったと思われるように。
前だけを真っ直ぐ向いた。
「愛している」僕の言葉に君は大きな瞳をさらに大きくする。
「どうしたの?」君は唐突な告白に目を瞬かせる。
「一回、言ってみたかったんだ」僕は白状する。
恋を知らない僕らが愛を知るわけがない。
二人の関係はいたって健全な幼馴染同士だ。
「それでドキドキしてくれた?」尋ねると君は笑う
朝、日が昇りきらないうちに水を撒く。
日が出てからでは残った雫がレンズの役目をして、花びらや葉を焼いてしまうからだ。
日当たりの良い場所に植わっている花にも水をやる。
ひまわりだ。
夏が楽しみで思わず微笑む。
背丈を抜いて、黄金の花を咲かせるだろう。
太陽を追いかけて咲くだろう。
チクタク。
胸の奥にある時計は生命を刻む。
正確なように感じられて、それは錯覚だと気づかされる。
好きな人と一緒にいると、時計はリズムを崩す。
壊れてしまうんじゃないかと思うぐらいに強く鳴り響く。
一緒にいるだけでも、眩暈がするほどだ。
恋のステップを踏んだら時計はどうなるだろう。
「わ、私は、ずっとあなたのことが好きです」生まれて初めての告白だった。
緊張してうつむいてしまう。
あなたの手が伸びてきて顎をつかまれる。
視線が合う。
「うん、知ってる」と残酷なまでにもあなたは微笑む。
「君の瞳にそう書いてある。それでどうしたいんだい?」
あなたは甘やかに問う。
子どもが描いたようなパステル色の夕焼けは終わった。
二人は今、無言で夜風にあたっていた。
言いたいことはたくさんあるのに言葉にならない。
このまま時間だけが無為に過ぎていくのだろうか。
二人が一緒にいられる時間は残り少ないというのに。
遠ざかる君へ掛ける言葉を引き出しの中から探す
飴色の昼下がり。
空調の利いた部屋は快適だった。
「恋人同士、たまにはイチャイチャしませんか?」飼い猫がそうするようにすり寄ってきた。
「本気でそう思っているのか?」細い手首をつかみ、そのままソファに押し倒す。
「真昼間ですよ!」
「誘ったのはそちらの方だ」優しく額にくちづける。
離れて初めて気がつく。
君がいる日々がどれほど美しかったか。
僕は君のことをどれほど愛していたのか。
君が隣にいない世界は、とても寂しいものだと思い知った。
今まで君がくれた心を頼りに生きていく。
君が別れの瞬間まで笑顔でいてくれたのだから、僕が泣きごとをつくわけにはいかない。
「嫌い、って言ってよ」切羽詰まった声で言われた。
そう言われても壁ドン態勢で言われては説得力はない。
新しい告白の仕方だろうか。
「君のこと、これ以上好きになりたくないんだ」と続けられる。
「初めまして、だよね」思わず確認してしまった。
「ずっと君を見ていたんだ。片想いってヤツ」
家族よりも一緒にいる時間が長かった幼なじみ。
ずっと一緒にいるのが当たり前のような気がしていた。
好きだったけれども、のんびりと構えていた。
今の関係を壊したくない。
そんな言い訳をしていたら、幼なじみに恋人ができた。
告白されたから、お試しで付き合うことになった、と報告された。
僕は一目見て分かった。
君が運命の相手だと。
僕の人生を彩る花だと。
できるだけ自然に、僕は君に近づいた。
寂しがり屋で、ちょっと傷つきやすい性格の君が心を許してくれるまで粘り強くアプローチした。
あとは仕上げ。
この感情はどこに向かえばいいのかな。
友だちから恋人同士になるために。
並んで歩きながら、手が触れ合いそうで触れ合わない。
正しい友達の距離だ。
二人の間に空いたわずかな隙間を風が通り抜ける。
物足りない。と思ってしまう。
いつからそんなに貪欲になったのだろうか。
最初は一緒に帰れるだけでも嬉しかったのに。
他愛のない話ができることが幸せだったのに。
君は僕の気持ちを知らずに笑顔で接してくる。
その度、僕の胸の鼓動は速くなるばかりだ。
嫌ってほど好きで、憎たらしいくらい愛してる。
僕は天邪鬼だから、君には内緒だ。
君が僕に「好きだよ」と言ってくるまで、絶対に教えてやらない。
それぐらいの秘密にしておいても罰は当たらないだろう。
幸せになりたがる君と振り回される僕。
可哀想な君は今日も幸せを見つけることができなかった。
傷ついているばかりの君に、僕はかける言葉が見当たらない。
誰よりも幸せになってほしい君だから僕はいくらでも付き合う。
この感情はどこから湧いてくるものだろう。
なんだ、答えはここにあった。
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