鎖が張られた先には廃墟があった。
裕福な人たちが住んでいたのだろう。
それはお化け屋敷も立派なたたずまいだった。
「帰ろうよ」と少女が言った。
「ここまで来たんだし、何かの記念に撮影するぐらいいいだろう?」と少年は言った。
不安がる少女の頭を撫でる。
「帰ろうよ」と少女は繰り返す。
青年が神剣・神楽に気に入られて同胞との戦いに巻きこまれた。
押しつけた少女側から見れば、怪我をしてくる青年を介抱するのに慣れ切っていた。
けれども病気は違う。
神剣・神楽は病を治してくれることはない。
少女は泣きそうになりながら、青年の指先にしがみつく。
「大丈夫だ」と青年は言う
「君は僕にとってのラッキー7だ」嬉しそうに青年は言った。
「君と出会ってから良いこと尽くめなんだ」噛みしめるように言葉を続ける。
孤独な時間が長かった青年に喜びを運べているのなら光栄だ。
辛かった分だけ、幸せを味わってほしいと感じた。
いつまでもラッキー7でいたいと思う
「愛してる」そう君に伝えることができるのが、どれほど幸せだったか。
君は知らなくてもいい。
君と過ごした時間は、記憶から淡い想い出になりかけている。
それすら愛おしくて、寂しくはなかった。
君と出会えたことには意味があった。
僕が僕らしくあれるために必要な、いわば『運命』だった。
君は別れ際「幸せになってほしい」と言った。
それが僕との最後の会話になった。
幸せになんて、なってやらない。
不幸せになってやる。
そうすれば君の心に引っかかり続けていられるだろう。
君以外の誰かと幸せになる未来なんて描けない。
こんなに悲しい気持ちに終わりが来るなんて信じられない
大学生になって初めてやったことは一週間の服を買い揃えることだった。
制服があった時代には気づかなかったが、圧倒的に私服が少ない。
制服があるということは、着回しに心配することなく、流行を追いかけることなくすんでいた。
そのことを思い知らされた。
見苦しくない程度に服を購入した。
父が愛用している万年筆を拝借してきた。
父のように素晴らしい歌が詠めるような気がしたから。
題材になるものがないかキョロキョロとする。
上ばっかりを見ていたから水たまり気がつかなかった。
見事に転倒した。
万年筆は水面に浮かぶ。
大変なことになったと震える。
痛みよりも不安が先だった
屋上が出入り自由だと知る生徒は少ない。
昼休み、買ってきたパンを食べながら、流れていく行く雲を眺めていた。
貸し切りだと思っていた屋上に君がやってきた。
購買で買ったと思われるおにぎりを抱えていた。
「こんにちは」と僕は挨拶をする。
そしてさりげなく、君の小さな両手を両手で包む。
君が来た道を辿る。
キラキラと輝いている想い出の欠片を拾い歩く。
君は一人でどんなこと考えながら、この道を歩いたのだろうか。
一緒に手を繋げなくて残念だ。
「寂しくはなかったかい?」そう尋ねたら、君はきっと「大丈夫」って答えるんだろうね。
これからはずっと二人だ。
もう君を離さない
彼の視線は行ったり来たり。
雑貨屋のウィンドウを見たかと思うと、車道を見たりする。
少しも落ち着いたところがなかった。
少女は不満に思い、彼のコートの袖を引く。
ようやく、彼の視線がこちらを向く。
「せっかく一緒にいるんだから」と呟くと「ごめんごめん」と軽い口調で返事が返ってくる
彼女は不幸にも自分が機械だということを知らない。
造った科学者はずいぶん精巧な機械を作ったものだ、と最初は感心していた。
家族に恵まれなかった科学者にとって唯一の存在だったのだろう。
科学者が亡き後、引き取り手に指名された青年は機械を見て嘆息した。
科学者の孤独を思い心で泣く。
座っていたら『切るな』と言われてるから伸ばしている後ろ髪を踏まれた。
痛みから踏んだ人物を睨む。
「次、踏んだら肩まで切るよ」と言うと「もったいないからダメ」と謝りもせずに言う。
「こんな綺麗な髪なんだから」と言いながら髪を一房持っていかれた。
痛くはなかったが気恥ずかしかった
君は僕を見ると、しかめっ面浮かべた。
毎日のことだっが、心が折れそうになる。
夢の君は、笑っていたのに。
現実の君は、厳しい表情を浮かべる。
それが僕だけなのが気になる。
他の人物には朗らかな笑顔を見せる。
どうして僕には笑顔を向けてくれないのだろう。
理由を教えて欲しい、と思った。
カチッと音がした。
蛍光灯がついた。
暗いとは思っていたが、もう夕刻になっていた。
スイッチを入れてくれた人物に感謝をする。
熱中すると、寝食を忘れてしまうのは悪い癖だったが、なかなか治らない。
パズルの最後のピースをはめた。
額縁に収めながら、次のパズルのことを考えていた。