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「 140文字の物語 」
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今日は空色が見事だ、と君が言った。
君と同じものが見たくて、サングラスを外した。
途端に襲い来る紫外線。
痛がる僕に、君はサングラスをかけさせた。
サングラス越しの空は明るくもなければ、美しくもない。
一瞬だけでも見られた空の方が何倍も輝いていた。
僕の目にとって有害であっても。
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勉強なんてやり慣れていないものに向かうのは時間の浪費だった。
問題集が遅々として進まない。
「気分転換に肝試しをしないか?」誰かが言い出した。
あっという間に賛同者が集まる。
一人を除いて。
少女はさりげなく、少年の手のひらを指先でなぞる。
声なき声を挙げていた。
少年は指を握った。
「好きだよ」何回、聞いたセリフだろう。
まるで挨拶のように、少年は言った。
「私は嫌いよ」少女は棘をまぶして返事をする。
「うん、知ってる」少年は笑顔になる。
嫌われている人間に「好きだ」と伝える精神が分からなかった。
それでも少年はくりかえす。
日常の風景の一つになったようだ。
誰もわかってくれない。
私は泣きたい時や苦しい時がある。
他人の愚痴から耳を塞ぎたくなる時だってある。
体のいいサンドバッグではない。
悪口を聞けば傷つくし、悲しくなる。
どうして貴方たちはそんな汚い言葉を平然と使うのだろうか。
私は口が堅いかもしれないけど誰かに話したら終りなのに
新緑を吸い取ってインクにする。
万年筆で文字を書けばこの季節らしい色合いになる。
それで手紙をしたためる。
寒さに凍える君に届けばいいと思いながら。
僕は笑顔を滲ませる。
君はこれからやってくる季節に微笑んでくれるだろう。
僕は魔法をこめて手紙に封をする。
君の苦しみが軽くなるように
「おはようございます!」元気が良すぎる挨拶が飛んできた。
少年は目立っていることに気がついていない。
少女は目を逸らしつつ、自分の腕を握る。
無視して電車に乗ろうとした。
「おはようございます!」少年は先ほどよりも大きな声で言った。
無視したのを聞こえなかった、と解釈したようだ。
「他に好きな子ができたんだ」ありきたりな別れ話。
「君のことが嫌いになったわけじゃないけど」言い訳を並べられる。
「こんな気持ちのまま付き合っていくのは無理だよ」決定打を告げられる。
泣くくらいだったら、笑ってやる。
「その人とお幸せに」物わかりの良い言葉がするりと滑り落ちた。
どれほど少女のことを愛しているのか、わかってほしかった。
少年の瞳は一瞬ごとに表情を変える少女のことを追いかけていた。
まるで太陽を追いかける向日葵のように。
少年の瞳は忠実だった。
生命が尽きる瞬間までそうしていられれば、どれだけ幸せだろう。
やがてくる別離に少年の胸は痛んだ。
雲が散り散りになって空を演出していた。
まるでお手本のような青空に疼く。
スマホのカメラ機能でも充分、撮れるのだが、完璧に残しておきたかった。
来た電車に飛び乗り、自宅へと急ぐ。
そうしている間に、雲を形は変えていく。
自宅からデジカメを取ってきた時には少し早い夕暮れだった。
二人でよく来た海辺。
今は一人で訪れる。
海に沈めたあの日の思いは、いまだに胸の中であがく。
水面に浮かび上がっては、海へやってきた。
沈んだことを確認するために。
もう二度と、口にすることはないだろう。
そうは思っていても、何かの拍子に思い出す。
それほどまでに深い思いだった。
「どっちが本命だったんだ?」間抜けにもほどがある。
恋人にはすでに好きな人がいたのだ。
それに気がつけなかった。
「違う!」恋人は反射的に言う。
「幼なじみだよ。小さい頃から知っているから、家族みたいなもので」恋人は言い訳をする。
恋人よりも幼馴染の方を大切にしたのだから同じだ。
永遠に寄り添う約束を交わすために贈り物をした。
プラチナ製のリングの内側には互いのイニシャルとダイヤモンドがはめこまれていた。
それが幸せの絶頂期だったのだろうか。
裏切りは早い段階で起きた。
結婚してみたかっただけなのだろう。
その願いが叶ってしまえばあっけない。
許さないと思う
昼下がり。
満腹になったせいだろうか。
青年はソファの上で午睡をしていた。
少女にいたずら心が芽生えるのも、当然の帰結だろう。
青年にかまってもらえる休日が来たのに遊んでもらえないのだから。
少女は目を逸らしつつ、指に爪を立てる。
健やかな寝息は途切れることはなかった。
力をこめる。
恋に堕ちた。
一夜限りのものだろうから恋情は灼熱のように燃え上がった。
仮面舞踏会でラストダンスを踊った青年は、よく知った香りを纏っていた。
マスクをしたままもつれるように寝台にもぐりこんだ。
マスクの下は見せないのが仮面舞踏会のお約束。
ただの男女になって恋を味わう。
君が彼女を好きだったように僕も彼女が好きだった。
けれども小心者の僕は告げることができなかった。
君は彼女に選ばれて恋人同士になった。
その姿を見て胸の奥に汚い感情が淀むのが分かった。
早く結婚してくれれば良いのに。
そうしたら彼女のことを諦めることができる。
終りまで他人任せだ。
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