忍者ブログ
「 140文字の物語 」
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

君と知り合ってから、もっと君のことを知りたくなった。
どんな顔で笑うのか、どんな顔で泣くのか。
僕のことをどれぐらい思っていてくれるのか。
君のすべてを知りたいと思う。
他人とかかわるのは嫌いだったのに。
君は『特別』のようだ。
僕のすべてをさらけ出すから、君を優しく教えて欲しい。
PR
外から声がした。
寝癖がついたままの頭で、青年は外に出る。
気配に気がついたのか、しゃがみこんでいた少女は立ち上がり抱きついてきた。
青年の胸で慟哭する。
少女の座っていた場所には、見るも無残な猫の死体があった。
こういったことは初めてではない。
同胞の戦いが始まってから何度目か。
こんなはずじゃなかった。
色んな所を見て回って、美味しいものを食べて。
想い出になるような旅行を計画していた。
それなのに前夜まで飲んでギリギリに待ち合わせ場所まで来た。
こっちはお洒落をしたのに、思いっきり普段着だった。
「ごめんごめん」と軽薄に謝る。
怒り顔で、指に爪を立てる。
-
君を連れていく「サヨナラ」は口にすることができなかった。
二人の関係を切り離す言葉だ。
僕は君が大好きだったから、別れるなんて考えられなかった。
けれども、どれだけ想っても、どうにもできないことはある。
僕は白い封筒に想いをこめて綴った便箋を入れる。
いつか君の助けになるように。
-
ほんの少しの間、私と一緒にいてください。
永遠は望みません。夏の夜のようにわずかな時間でいいのです。
あなたと過ごした時間は一秒たりとも忘れないでしょう。
どうかお願いです。
刹那の時を共にしてください。
一度だけでいいのです。
それ以上は望みません。
ですから願いを叶えてください。
-
「私の代わりはいくらでもいますから」そう言って少年は微笑んだ。
少女は瞳から大粒の涙をぼたぼたと零した。
「どうしてそんな悲しいことを言うの」少女は嗚咽混じりに言った。
その姿を見た少年は初めて、言ってはいけないことだったと気がついた。
自分のために流された涙は胸を鋭く痛める。
-
貴方が「死にたい」と呟いた時、私は涙を零すことしかできませんでした。
貴方と一緒の時間を、もっと過ごしたいと思っています。
でも、私のエゴだけで、貴方を止めることはできません。
貴方は限界で、何もかもに疲れてしまったのですね。
我儘な私はそれでも、貴方に生きていてほしいのです。
-
「寂しさを半分こできればいいのに」と少年が言ったら、少女は頬を染めた。
意外な反応に「どうしたの?」と無邪気に少年は尋ねる。
少女はもじもじしながら「結婚式の誓いみたい」と小さく言った。
結婚式に出たことのない少年は納得した。
「君とだったら結婚してもいいよ」と少年は微笑んだ。
君は立場上、泣いてはいけない。
どれほど愛した人が亡くなっても、人前で涙を零してはいけない。
兵士のひとりひとりに泣いているほど、悠長な位ではない。
親しくしていた人物であろうと、縁者だろうと、泣くことはできない。
だから君のかわりに、泣いてあげる。
声を上げ、涙を零してあげる。
「真実の愛か、確認できるまでキスをしてはいけないよ」魔女が言った。
「どうして?」この城の姫が尋ねた。
「キスには魔法がこめられているからね。魅了されちまう」と魔女は大鍋をかき混ぜた。
魔女の話をすっかり忘れた姫は、隣国の王子とキスをした。
魔女が言ったとおりだった。
納得する。
「遅れたけどチョコのお返し」先輩が紙袋を手渡す。
「気を使わせてしまったようでスミマセン」と少女は謝った。
「気にすんな。家に帰ってから食べてくれよ」というと先輩は立ち去った。
家に帰ると紙袋をさっそく開封する。
中にはクッキーと万年筆で書かれたカードが入っていた。
少女は読む。
初めて来た公園だった。
遊具がたくさんあって、これまでの公園と違った。
楽しくて遊んでいると、一緒に来た母の姿が見当たらない。
かくれんぼだろうか。
幼い少女は公園の隅から隅まで探し回る。
「どうしたの?」年上の少年が声をかけてきた。
泣きそうになりながら、差し出された指を握る。
-
あなたの孤独に寄り添いたいと思うのです。
独り静かに星を眺めている隣に立ちたいと思うのです。
言葉は必要ありません。鼓動が、呼吸が、沈黙を埋めてくれるでしょう。
あなたの傍にいたいと願ってしまうのです。
闇夜の中でしか見せない心細さを知ってしまったから。
祈りは届くでしょうか。
-
あなたの優しさは、あなただけのものにしてください。
たとえ傷だらけでズタボロの私を見て、手を差し伸べないでください。
一瞬でもふれた優しさに縋りついてしまいたくなります。
優しいあなたに迷惑をかけたくはないのです。
こんな小汚い存在まで優しくしないでいいのですよ。
あなただから。
-
忘れられるものなら、忘れられるうちに忘れてしまおうと思ったのです。
そう考えれば考えるほど、沼に沈みこむように、沈んでいくのです。
どうやら、この想いは忘れられるような類のものではないようです。
いえ、それならそれでいいのです。
忘れずに一生、覚えています。
生命が尽きるまで。
PREV ← HOME → NEXT
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH