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「 140文字の物語 」
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「何でもできることをするって約束だろう?」と少年は言った。
軽はずみな約束をしたものだ、と少女は後悔した。
赤点ギリギリの少年のやる気を出させるためだった。
「ほら、ついたぞ」お化け屋敷の前で少年は言った。
その顔は生き生きとしている。
少女は仕方なく、両手のひらにしがみつく。
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君はこの世でただ一人だけ、僕を殺すことができる人間だ。
君のことを想うだけでこの胸は灼熱に焼かれるようだった。
君のさりげない一言に一喜一憂する。
こんなにも誰かを想うことは初めてだった。
君の為なら、この生命は惜しくない。
君を想って痛む心臓を一突きすることは、とても簡単だ。
学校は坂道の上にある。
自転車を降りた。
漕いでいるよりも、歩いた方が早い。
そう判断したからだ。
自転車を押しながら学校を目指す。
どうしてこんな急勾配の土地に学校を立てたのだろうか。
恨みたくなる。
そんな私の考えを馬鹿にするように一台の自転車が通り過ぎる。
「またな」と去っていく
羽織る白装束は死に帷子。
生命を捨ててまで前進する覚悟の表れ。
武士の家に嫁いできたのだから、いつかは覚悟しなければいけないこと。
今度が最後だろうか。
今度も無事に帰ってきてくれるだろうか。
白の単を縫っていたら、ぽたぽたと涙が零れてきた。
嗚咽から慟哭になる。
単を抱え独り泣く。
「大丈夫だって」夫になったばかりの人が言う。
「だって鉄の塊だよ。空を飛ぶなんて信じられない」と私は言った。
「飛行機が墜落する確率と交通事故にあう確率は後者の方が多いんだ」と諭す。
「ずっと手を繋いでいてやっから」と夫は言う。
私は恐る恐る、両手に触れる。
薬指には揃いの指輪。
-
青い空だった。
雲ひとつない青だけの空だった。
どこまでも突き抜けていくような空の下、冷たい風を受ける。
桜も咲いて、春爛漫だというのに。
この空は粉々に割れるようなガラスのような空だった。
何もないから、そう思うのだろうか。
雲のひとつでも浮かんでいたら、違って感じただろうか。
「うちの子可愛いでしょ」とスマホ画面を見せる。
少年は冷たい目で、少女を見た。
いつもと違う反応に、少女は途惑った。
家猫を見せると、たいていの人間は『可愛いねぇ』と返してくれたものだ。
猫が嫌いなのだろうか。
少女がそんなことを考えていると少年は口を開いた。
「お前の方が可愛い」
風雲急を告げる。
鉛色の空は何かを連れてきそうだった。
だいたいその予感は当たるので、今度こそ外れてほしい。
先ほどまで青空が見えていたのが嘘のようだ。
重たい雲は領土を広げていく。
強い風と共に。
何かが来るまでに、家に逃げこんだ方がいいだろう。
分かっているけれども動けなかった。
眩しい光を避けて木陰に逃げこんだ。
そこには先客がいた。
恐る恐る手を伸ばしてみると、猫は手を噛む。
声をかける間もなく逃げ去った。
残ったのは傷跡だけ。
ほんの少しの未練を感じながら本来の目的を思い出す。
木陰の下で本を広げる。
猫が残した痛みが鼓動と同じリズムを刻む。
溜息をついた
本当に嬉しそうに、少女は少年の両手を指先でつつく。
こちとら受験勉強中。
浪人できるような経済的余裕はない。
必死に過去問を解いているというのに、少女は楽しそうだ。
「何するんだよ」喧嘩腰で問えば「好きって確認しているの」のんびりとした答えを返す。
暖簾に腕押し。
喧嘩にもならない
「君が『好きだ』と言ってくれるなら、世界が滅びてもいい」と少年は言った。
なんて物騒な願い事だろうか。
少年はそれだけをできる力があったから厄介だった。
伝説の勇者様に気に入られたのは光栄だけれども、自分の意思がないようでなかなか返事ができなかった。
「滅ぼしてもいいのかな?」
満天の星が地上に落ちてきたようにキラキラしていた。
一つ一つに人の営みがあるのかと思うと、不思議だった。
見事な夜景に少女はかじりつく。
それを少年は微苦笑する。
「すごいね」と少女は振り返って、少年に同意を求めた。
分かっているから少年は「凄いですね」と窓の外を見ながら返した。
「寒いね」と少女は習いたての言葉を使う。
少年は微笑んで「寒いね」と返した。
これで和歌の通りだ。
実際、息が白く濁る寒さだった。
あと幾夜続けば春が来るのだろうか。
少女は満面の笑みを浮かべながら、少年の指先を握る。
「これで寒くないよ」少女は言う。
小さな手から伝わる温もりに綻ぶ
-
あなたが寂しさに泣き濡れる夜。
傍にいて一晩中、耳を傾けていたいと願います。
けれども、私はあなたの傍にいると傷つけるだけの刃に戻り、いらぬ言葉であなたの傷を抉ってしまうでしょう。
ですから、あなたの泣く姿を思いながら、離れている方がいいのです。
それがあなたのためなのです。
-
貴方のために生きているような人生でした。
私のために私は生きていませんでした。
後悔しているわけではありません。
事実がポンと落ちてきて納得しただけです。
気がついてしまった以上どうしたものか。と思案します。
不幸せではなかったのだから、このままの関係でもいいのかもしれませんね。
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