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「 140文字の物語 」
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近道に霊園がある。
お彼岸が近くなると人が絶えない場所だ。
しかし、もう夜遅い。
管理している人たちも帰った頃だろう。
それにちょっとした肝試しだ。
「罰が当たるよ」と幼馴染は言う。
この極度の怖がりも直した方がいいと思う。
僕は優しく両手を指先でなぞる。
「大丈夫だよ」と僕は微笑んだ
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あなた宛てに手紙を書きました。
投函する予定のない手紙です。
誰かに読ませるつもりもありません。
それでも、目に見える形にしておきたかったのです。
もちろん、あなたに渡すつもりもありません。
永遠に引き出しに眠らせる予定です。
時折、取り出して書いたことを確認するかもしれませんが。
今宵、愛する貴方へ宣戦布告です。
私のことを『愛している』と言わさせてもらいます。
私ばかりが貴方のことを愛しているなんて不公平です。
貴方からも『愛している』という証拠を見せてもらいます。
この戦争が終わるまで、私は『愛している』とは言いません。
貴方を驚かさせていただきます。
僕は独りぼっちだ。
誰も僕のことなんて考えてくれない。
親しい友だちもいなければ、暖かい家族もいない。
誰もが手にしているものを僕だけが持っていない。
そんな人生は空虚だった。
決まった時間に食事をとり、決まった時間に眠って、決まった時間に起きて、独りだと再確認する。
空しかった。
青年は今日も神剣・神楽を手に、呼び出された場所に赴く。
同胞を殺しあうのは正義なのだろうか。
人を害なすからと生命を奪って良いのだろうか。
青年の心は揺れ動く。
神剣・神楽に選ばれたのだから職務を果たすだけだ。
鼓動は平常通りに穏やかだ。
まるでゲームをするように落ち着いている。
少女は遠慮がちに、少年の手のひらに指を絡める。
「えへへ、恋人みたいだね」少女は言った。
「みたいじゃないよ」と少年は笑った。
「恋人同士だ」少年は少女の手を包むように握り返す。
少女の顔をは見る見ると赤くなった。
これが街中でなければ抱きついているところだ。
恋人になれて嬉しい。
雨は止み、透明な水たまりをいくつも作っていた。
腕時計を確認する。
針は待ち合わせの5分前を指していた。
待ち合わせ場所には濡れた姿の君がいた。
屋外を待ち合わせ場所にしたのは失敗だったと思う。
今度こそは、暖かい室内を待ち合わせ場所にしようと胸に誓う。
君はこちらに気がつき笑う。
「たくさんの想い出を作ろうね」と言われてしまったら「そうだな」としか言い返せなかった。
少女は満面の笑みを浮かべながら、少年の両手のひらを握る。
自分とは違う温もりにドキリっとする。
在学中、一度しかない修学旅行だ。
回るコースは考えている。
少女が言ったように想い出を作りたい。
僕は「大丈夫だよ」と言って微笑んだ。
君の顔は泣き出しそうに歪む。
うまく笑えてないのは自覚している。
君の心配を増やしただけだろう。
それでも僕は大丈夫だと告げる。
僕を想ってくれる君がいる限り、僕は無残に倒れたりはしないだろう。
だから微笑む。
まだ大丈夫。
君に何回でも言う。
夫が夜更けになっても帰ってこない。
夕食用に用意した料理はとっくに冷めている。
さっき電話で『先に眠っていていいから』と疲れた声が言った。
そうなると意地でもお出迎えをしたくなるものだ。
忙しい職務だと分かっている。
結婚前に何度も念押しされた。
それでも運命の相手だと感じていた。
街から武士の家に嫁いできた。
寺子屋の推薦だった。
礼儀作法は一通り仕込まれてきたが不安は残る。
夫になった人は「もっと自分勝手にしていいんだぞ」と言ってくれる。
その優しさに心が揺れ動く。
離縁されないように慎ましく振舞う。
その様子が卑屈に見えるのだろうか。
どうしたらいいか迷う
いつでもそう。
悪いことをしたと思っていても『ごめんなさい』が言えない。
それどころか責任転換してしまう。
よくない癖だとは分かっている。
いつか君が離れていってしまうような気がする。
『ごめんなさい』を言う代わりに、そっと、君の腕を握り締める。
君は優しく微笑んで、手を重ねた。
「君は何ひとつ悪くない」と少年は言った。
「全部僕のせいにしていいよ」と続ける。
甘い誘惑だった。
付き合っている人がいるのに、他の人に惹かれる。
長すぎる春は倦怠感を生んでいた。
もし浮気がばれたら別れるのだろうか。
そんなことが脳裏をよぎる。
「だから僕のこと好きになってよ」
少女の耳元でドンという音がした。
少年が壁に腕をついて、閉じこめられた。
いわゆる壁ドンというヤツだ。
「ドキッとした?」明るい口調で少年は言った。
生まれて初めて少女漫画のような展開をされた。
「驚いた」と素直に答えた。
漫画の主人公と同じ状態になって、嬉しさを隠せなかった。
「誕生日プレゼントは?」と僕が尋ねる。
「マグカップ以外なら何でもいいよ」今年も同じ答えだった。
踏みこんで欲しくないだろうと理由は訊いたことはない。
内緒で同じマグカップを買ってペアな気分を味わいたい、思っていた。
悔しさが心の中でわだかまる。
君はマグカップに誰かを重ねて忍ぶ
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