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「 140文字の物語 」
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起きてはいた。
もう少し微睡の中にいたかったから、ベッドの上で横になっていた。
「いい加減、起きてください」少女が青年の体を揺する。
「起きてるよ」と青年は言った。
「嘘ばっかり」と少女は満面の笑みを浮かべながら、青年の腕を折れんばかりに握る。
「君も昼寝を楽しもう」と腕を引く。
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夜、パソコンに向かってゲームをする。
顔も知らない相手が一番の仲良しだということが皮肉だった。
現実は厳しい。
心を許せる友だちはいなかった。
見ず知らずの相手の方が自分をさらけ出せた。
それでも聞きたくない話が持ち上がることがある。
そんな時はリアルで用事ができたと離席する。
硝子のような片想いをした。
透明で君のことがくっきりと見える。
それなのにふれると冷たい。
声をかけるのを阻まれている。
いっそのこと割ってしまおうか。
そうすれば君にふれることができる。
硝子は粉々になって、僕の心を鋭く傷つけた。
切れ端で手は血塗れ。
こんな手で君にはふれられない。
世界は虹色に染まっていた。
どんなことだってできる。
そう思っていた時期もあった。
昨日の続きの今日を迎える。
それがどれほど幸せなことだと知らなかった。
当たり前のように僕の隣に君はいる。
それが自然すぎて見落としていた。
世界は常に変わっていく。
別れの時が来ることを知りたくない。
-
「サヨナラは言わないよ」と君は言った。
頑固者の君らしい発言だった。
だから僕は無言でうなずいた。
「また」君は手を上げ言った。
僕はその背中に手を振った。
君には見えないだろう。
それでも君の姿が星より小さくなるまで振り続けた。
それから、僕は空を見上げた。
潤んだ眼。
引き結んだ口。
-
『君が好き』
今日も伝えられなかった。
たぶん明日も伝えることができないだろう。
想いが溢れかえっているから。
どこから話し始めればいいのか分からないから。
だから、上手に伝えることができない。
物語の主人公のように『恋』をすらすらと囁ければいいのに。
口下手な僕にはできそうにない。
-
泣いて泣いて泣き暮れているうちに、朝がやってきた。
どうして静かな夜のままでいてくれないのだろう。
また泣いた。
それでも空を明るくしていく太陽を見ていたら、涙は止まった。
誰かに泣いていたことを知られたくなかったから。
次の夜が来るまで、泣くのはお預けだ。
作り笑いを浮かべる。
「ありがとう」あなたは言葉を惜しまない。
嬉しいことがあれば嬉しいと言う。
楽しいことがあれば楽しいと言う。
「愛している」幸せそうにあなたは言う。
あなたが愛してくれるからではない。
あくまで僕が、あなたを愛していたいんです。
僕の悲しみを。
僕の苦しみを。
救ってくれたあなただから
神剣・神楽の巫女だったとはいえ、できることは少ない。
特に青年に同胞殺しの妖刀を押しつけてからは見守ることしかできない。
せめて、日常だけは心地よさを保ちたいと思う。
率先して家事を行った。
生活に無頓着だった青年に感謝されるが、感謝するのはこちらの方だ。
少女は毎日が幸せだ。
連続して葬儀が営まれた。
君は涙を耐える。
本当は棺桶にすがりついて、大泣きしたいことだろう。
けれども残された家臣たちの前でそれは許されなかった。
後継ぎとしての期待に応えなければならなかった。
だから、いつもよりも背をピンと伸ばして、堂々と喪主を務める。
そんな君が悲しそうだ。
「これは吊革に届かないだけだから」と電車内で君は言い出した。
「別に貴方のことを頼っているわけじゃないのよ」君は言い訳を続ける。
目を逸らしつつ、僕の腕にしがみつく。
本当は手を繋ぐタイミングを探しているだけだと僕は知っている。
そんな君が可愛くて、思わず笑顔になってしまう。
生命を賭けても守る。
あなたはそれを、恋といった。
それでは片恋だ。
決しても両想いにならない。
そんな切ないことがあって良いのだろうか。
あなたは頑固だから考えを譲ることはないのだろうな。
分かっていた。
それでも、もっと幸せな恋がしたいと思った。
どうすれば、待っているのだろうか。
屋台巡りをして、かき氷ばかり食べている少年が心配になった。
正確には、その舌が。
かき氷を制覇した少年は大口を開けて笑った。
少女は頭が痛くなった。
心配は的中した。
少年の舌は形容がしがたい色に染まっていた。
かき氷のシロップのせいだろう。
それを指摘すると、少年はなおも笑った。
泡沫のように生まれては消える戦乱の世の中だ。
そこで生まれたことに後悔はない。
生命が軽々しく扱われることに不満に思ったことはない。
ただ、唯一と思った姫君が哀れだった。
今日も名を呼ばれ反射的に笑顔を作った。
どこまで守ると心の中で誓う。
命を賭しても。
それほど貴重な笑顔だった。
可愛いものは全て妹のものだった。
背が高く、ニキビだらけの自分のものではなかった。
妹は可愛かった。
誰もが笑顔になるような存在だった。
もちろん自慢の妹だった。
でも、一つぐらい可愛いものが欲しかった。
似合わないくせにね。
視線に気がついたのだろうか。
「お姉ちゃん。あげようか?」
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