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「 140文字の物語 」
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君は真面目だから、どんなことも全力でする。
そんな君が今、夢中なのは読書だ。
図書室には行っては何かしら借りてくる。
そのジャンルは多岐に渡る。
漫画から哲学書まで。
正直、僕にはついていけない。
「読んでみなよ」と君は言うけれども、今日も僕は曖昧な笑顔で誤魔化した。
君が羨ましい。
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ノートを開いたら最後の頁までぎっしりと書いてあった。
すっかり忘れていたが、今日の帰りに買ってこようと思っていた。
背に腹は代えられない。
姉の部屋に入って勝手に拝借することにした。
事後に伝えればいいだろう。
引き出しには使いこまれたノートがあった。
見たいと囁く。
海の寄せては返す音がした。
それは人の温もりを伴って。
DNAに刻まれた原初の記憶だろうか。
肌の下に流れる血脈は確かに海の音がした。
もう少し、その音に揺られていたいから、傍らの温もりを抱きしめる。
目覚めたばかりの温もりは嬉しそうに、両手に爪を立てる。
子猫のするような痛みがした。
君の『好き』の一番は決まっている。
だから、僕はその座を他の奴に譲らなくてはならない。
本当は嬉しくもない。
僕は君の一番心臓の悪い存在になりたい。
君の心を占領したい。
『好き』が貰えないのだから、せめての抵抗だった。
そんなこと君に言えない臆病者なのにね。
どうすればいいだろう。
魂が鎖で縛りつけられているようだった。
訃報を聞いて少女は慟哭する。この日のために、少年は生きていたのかもしれない。
死をもって、少女の国を守ろうとしたのかもしれない。
けれども、少女は認められなかった。
運命のように少年と繋がっていると思っていた。
鎖がなかったら共に逝けたのに
今年の春は駆け抜けるように過ぎ去っていった。
名残のように散る桜吹雪を満喫する。
ざっと風が駆け抜けていく。
視界が薄紅色の花弁で染まる。
少年は恐る恐る、少女の腕に指を絡める。
桜に連れ去れそうだったから。
細い腕にドキリっとした。
「花びらがついているよ」と少女はニコッと笑った。
軒先に金魚が描かれた風鈴をぶら下げる。
わずかな風にゆらゆらと揺れて硝子は鳴る。
涼しげな音色だった。
青年は満足して、ソファに戻る。
そこへお茶を淹れてきた少女がやってきた。
ローテーブルに盆を置くと、風鈴にふれる。
そして、クスリと笑った。
年頃らしい笑顔に、青年は目を細める。
伝承を求めて書庫に降りる。
そこには古びた紙の匂いで満ちていた。
その中から一冊の古書を引き抜く。
パラパラとページをめくりながら文字を見る。
そこには神剣・神楽が神刀だったことが書かれていた。
軽いフラッシュバックを起こす。
妖刀が持ち主を癒すのは、その頃の記憶があるからだろうか
「わたしはあなたのことが嫌いよ」キッパリと断言されてしまった。
そんな素直なあなたに僕は苦笑する。
「あくまで僕が、あなたを愛していたいんです。」と僕が告げると、あなたは膨れっ面をする。
「好きにすれば。わたしの気持ちは変わらないけど」あなたは視線を逸らして僕に向けて言った。
いつまで咲いている桜は不気味だった。
それも白い花弁ではなく、濃い薄紅色。
小説ではないけれど、死体でも埋まっているようだった。
妖艶な桜は、人の心を惑わせる。
僕もその中の一人だ。
とっくのとうに葉桜になっていてもおかしくない桜に、散らないでほしいと思う。
まるで真逆だった。
雨合羽を纏った体に雪が積もる。
あまりの寒さに震える。
雪の結晶は一つとして同じものはないという。
それはまるで人間のようだと思った。
同じ制服を着て、同じ机を並べて。
個性なんて生まれてくることがないようだけれど違う。
一人一人、抱えた理想は違って抱えた悩みは違って。
雪のようだ。
「私のこと好き?」無邪気に君が尋ねてくる。
その様子が可愛くって、つい意地悪をしたくなる。
「好きじゃないよ」僕は言った。
君は泣きそうになりながら、僕の両手のひらを指先でつつく。
「私は好きなんだけど」君は言った。
「うん知っている。そんな君が大好きだよ」僕は君の耳元で囁く。
ぼくたちが恋する理由は独りが寂しいから。
心にぽっかりと穴が開いたような感じがして、片割れを探す。
ジグソーパズルの最後の1ピースを見つけるように。
孤独な夜を少しでも軽くするために、恋をする。
寂しければ寂しいほど、恋の焔は燃え上がる。
ぼくたちの恋は軽薄で、貪欲かもしれない。
少女の肩が震えているのは知っていた。
少年はかける言葉が見つからず、見て見ぬふりをした。
やがて青年がやってきて少女を優しく抱きしめた。
少女は青年の腕の中でポロポロと涙を零した。
見てはいけない秘密を見てしまったような気がして少年は足早に立ち去った。
少年にはできないことだった
「眠れないのですか?」家庭用機械が尋ねてきた。
「いつもなら消灯している時間ですが」律儀に機械は言う。
青年は溜息をつく。
「寝るよ」
「それなら電気を消された方がよろしいと思いますが」機械は淡々と事実を述べる。
「少し読みたい本があるんだ」
「では寝ないのですか?」堂々巡りになる
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