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「 140文字の物語 」
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花束を抱えて青年は帰ってきた。
玄関先で出迎えた少女は目を丸くした。
「どうしたんですか?」少女は問う。
「いつも家事をしてもらっているから礼をしようと思ったんだ」困ったように青年は言った。
「置いてもらっているから当然ですよ」少女は微笑む。
「君に似合う花が分からなかったんだ」
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朝食を食べ終えて、少女はシンクに立つ。
洗い物の音を聞きながら、青年は新聞を広げる。
小さな事件が一面記事を彩っていた。
どうやら、世界はまだ平和のようだ。
青年は安心する。
ふいに音が止まった。
青年は顔を上げる。
少女が肩を震わせていた。
驚いて青年は立ち上がる。
少女は涙を流す。
「どうしてデートの度に邪魔するのよ!」君は目を三角にして怒る。
「俺以外の男と仲良くするのが気に食わないんだよ」僕は言い返した。
「だからといって、邪魔する権利はないじゃない!ただの幼馴染でしょう?」君は言った。
「つまりはまぁ、好きってことでして」僕は言い訳がましく言った。
ふわりと風が吹き抜けていった。
甘い香りに鼻をくすぐられる。
「いい匂いだね」と僕が言う。
「気がついた?シャンプーを変えてみたんだ」君は笑った。
「前のも良かったけど、今のもいいね」僕は甘い香りの正体が分かってスッキリした。
「ありがとう」君は笑みを深くする。
気づけて良かった。
昼休みの後の古典の授業は眠たくなる。
例にももれず居眠りをしていた。
先生が立ち止まり「君、現代語訳をしてみなさい」と起こされた。
まだ眠っていたかったがバレてしまって仕方がない。
「黒板に書きなさい」と言われたら起きるしかない。
幸い予習をしている範囲だったので、答えを書けた。
『人里には行ってはいけないよ』母親の言葉を無視して子どもは人里には降りた。
時はちょうど節分。
「鬼はー、外」大豆を持った幼子たちの声がした。
友だちになれるだろうか。
子どもは声の方に向かって行く。
元気な声を上げていた幼子たちは「鬼が来たぞ!」と家に駆け戻る。
子どもは悲しむ。
これが最後だと分かっていた。
だから嫌々ながらも、君の両手のひらを両手で包む。
ひんやりとした手に、僕は何度ドキリっとすればよいのだろう。
僕たちはまだ力がない子どもだ。
大人に従わなければならない。
もっと大きくなれば違う選択ができたはずだ。
ここで『サヨナラ』なんて悲しすぎる。
人質のように嫁いできた帝国は国土が広かった。
気軽に海へと行くことができないほど。
海の側の小国で生まれ育った姫にとって窮屈だった。
寄せては返す波の音を聞きたいと郷愁にかられていると、皇帝陛下のお出ましの時間になった。
「どうした?」不機嫌そうにこちらを睨む。
姫は笑顔を作る。
ふいに落ちた沈黙に僕は困った。
何かを喋らなければならないと思っても、話題が思いつかない。
ぎこちない沈黙は僕と君の関係のようだった。
沈黙を楽しめるほど、想い出を重ねていない。
君は目を逸らしつつ、両手のひらを指先でつつく。
会話の糸口を見つけられないのも、君も同じなのだろう。
何万光年から光を届ける星たちは、今も存在しているのだろうか。
すでに滅んでしまっているのだろうか。
それとも、まだ輝いているのだろうか。
それを知るすべはしらない。
ただ夜空を見上げて、輝きに見惚れるだけだ。
あの星のように煌めいていたい。
誰かの憧れの存在になりたい。
そう思った。
銀河に広がる星たちを二人して眺めていた。
一晩中、見つめながら、いろんな話をしていた。
それも、もう終わりの時間だった。
東の空が白み始めた。
「朝だね」君が囁く。
「そうだね」と僕も頷く。
誰にも邪魔されない貴重な時間は、静かに終焉を迎える。
明るい太陽の出現で。
君の手が僕にふれた
赤く染まった木の葉が散る。
影は徐々に長くなってきた。
太陽は溶けるように空を染めながら落ちていく。
眩い光に目を細める。
すると無理矢理、君が腕を折れんばかりに握る。
痛みが現実に引き戻す。
「ゴメン。あっち側に行っちゃうかと思って」君は心細そうに言った。
「ありがとう」と僕は言う
もともと政略結婚だった。
まだ幼い姫を娶るのだからと、白い結婚が前提だった。
両国の関係はまずまずと安定していた。
そうなると、その血を引く後継ぎの声が上がる。
幼い姫も年頃と成長した。
皇帝は姫を組み敷いた。
破られた不可侵条約に姫は怯える。
それが加虐性欲を煽ることを姫は知らない
ちょうど付き合って一年の記念日だった。
君の知らない一面をたくさん見た一年だった。
これからもたくさん知っていくのだろう。
デートコースは一年前と同じコース。
笑顔を交わしながら回っていく。
ふいに君は上目遣いで、指先をぎゅっと握る。
「どうしたの?」不安にさせることをしただろうか
青年はベッドの上で微睡んでいた。
うつらうつらとするのが最高の気分だった。
そこへ少女がやってきた。
目を微かに開ける。
少女はベッドの上に腰かける。
「お寝坊さん」と青年の頬をつつく。
青年は目を逸らしつつ、手のひらを折れんばかり握る。
少女の長い髪にふれたい。
信頼関係が崩れそうだ
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