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「 140文字の物語 」
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「少しはこっちのことも察しろよ、馬鹿。」苛立つようにあなたは言った。
「そんなことを言われても言葉にしてくれなきゃ分からないよ」私は小さく言い返す。
「俺がどれだけ我慢しているのか、気がついている?」あなたは壁に手をついた。
退路は断たれた。
「ごめんなさい」と私の心臓は跳ねる。
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何でも普通が良い。
目立つことはするな。
制服の着かた。
テストの成績。
交友関係。
普通を押しつけられて、つぶれそうだ。
そんなに普通のが良いのだろうか。
髪を染めてみたい。
たまには赤点を取ってみたい。
不真面目な友達を作りたい。
「あなたは、いつまでも普通でいてね」母の言葉に縛られる。
すれ違いざま良い香りがした。
香水だろうか。
それが知りたくて、追いかける。
けれどもコンパスのせいで逃す。
香水の主は背が高く、一歩が大きかった。
女性が好みそうな甘い香水を纏っていたから、理由を知りたかった。
でも、これでいい。
見知らぬ他人に急に声をかけられたら驚くだろう。
繋いだこの手を離したくなった。
だから優しく、両手のひらを折れんばかり握る。
「痛いよ」君は言った。
「ずっと繋いでいたいんだ」僕は言った。
「そんなに強く握らなくても、私は逃げたりしないよ」君は笑った。
少し力を緩める。
君の言葉を信じて。
すると、君は僕の手を握り返してきた。
『好きだよ』何回、心の中で練習したことだろうか。
できるだけ自然に、できるだけスマートに。
君に伝えたかった。
君が僕の名を呼ぶ。
新しい遊びを見つけたのだろうか。
満面の笑みだ。
ほらまたそうやって笑うから、何も言えなくなる。
僕の口は固まったように動くことができなくなる。
君と出会って、僕の胸には大きな穴があいた。
何もない、ぽっかりと開いた穴は時折痛みを伴う。
君が笑う時、君が涙する時。
君の心に合わせて、キリキリと痛む。
それは君と繋がっている証拠のようで、嫌ではなかった。
ただ君に伝えることができないことが寂しかった。
君は知らなくてもいい。
ひとひらの花びらが空を舞うのを僕は見る。
その光景は、あまりにも現実味がなかった。
まだ夢を見ているような光景だった。
思わず、僕は目をこする。
風にあおられた花びらはゆっくりと落下してきた。
僕が手を差し伸べると、すんなりとおさまった。
これから幸運が運ばれてくるのだろうか。
酔っぱらいの足取りは千鳥足。
アスファルトに引かれた白線を行ったり来たり。
決して、交通量が少ないとは言えない道だから僕は不安になった。
案の定、車が向こうからやってきた。
こちらに気がついていないのだろうか。
スピードを落とさない。
僕はさりげなく、君の両手を折れんばかり握る。
テストが返ってきた。
案の定、絶滅だった。
蝉の鳴き声をシャワーのように浴びながら、夏休みも学校に通う羽目になりそうだ。
緑が輝く初夏だというのに気分は陰鬱となる。
学校で習う勉強なんて、社会でどれだけ役に立つものだろう。
馬鹿々々しいと思いながらルールに従う他なかった。
新しい傘を買った。
それなのに晴天続きで、出番がなかった。
居間で天気予報を見ていた。
予報通り、雨になったら良いのに。
そうしたら、新しい傘を差せる。
忘れん坊の幼なじみと相合傘で帰れる。
傘の中、囁くように話がたくさんできる。
だから、明日こそ雨が降ってほしいと願った。
楽しみだ。
小さな子供を残して、男は旅立った。
子供の母は一生分の涙を流して見送った。
再びまみえることはないと知っていたから。
子供もやがて大きくなり、父と同じように旅立つ。
恋人に『絶対、帰ってくる』と約束をして。
その約束が守られないことを恋人は知っていた。
それでも、笑顔で見送った。
現代社会にとって丑三つ時はどれぐらい意味があるのだろうか。
ちょっと夜更かしをしたぐらいの感覚だ。
青年は撮りためたDVDを眺めていた。
たいして面白くない番組だった。
少女が隣にやってきた。
「まだ寝ないのか?」青年の問いに指と指を触れ合わせる。
そのままにしていると、少女は喜ぶ。
青年は深い眠りについているようだった。
近づいても起きる気配がしなかった。
少女が優しく、青年の腕に触れる。
何もできない自分は、この腕に守られている。
薄っすらと傷跡が残っている。
痛かったはずだ。
青年は何も言わなかった。
怪我した時も、治った時も。
神剣・神楽の使い手だというのに。
初めてできた彼を家に招待した。
『試験勉強』という口実に。
実際、彼は上から数えた方がいいぐらい頭が良い。
ベッドの上に置いてあるクマのぬいぐるみを見つけて「可愛いですね」と呟いた。
抱いて眠るぬいぐるみを見つけられた恥ずかしかった。
「まぁ、お前の方が可愛いのですが」と彼は笑う。
携帯電話が鳴る。
さきほどから、しつこいほど鳴っている。
それでも少女には出ることはできなかった。
クッションを抱きかかえて、振動をくりかえす携帯電話を見つめる。
こんな時間にかかってくる電話なんて、嫌な予感しかしない。
どうしても出る勇気が湧かなかった。
知りたくないのだ。
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