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「 140文字の物語 」
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もう二度と会うことはないでしょう。
あなたにとって大切なものがあるように、私にも大切なものがあります。
その大切なものを守るために、離れ離れるになる。
悲しいことですが仕方のないことです。
そろそろ終幕の時間が訪れます。
サヨナラにくちづけをしましょう。
秘密を閉じこめるように。
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霞の中、呻き声が聞こえる。
まるで泣き声のようだと思った。
出て行って『大丈夫だ』と抱きしめてやりたくなるが、それは命がいくつあっても足りない行為だ。
理性を持った人間は自分一人だけなのだろうか。
街には徘徊する人であふれている。
恐怖で心が撃たれる。
早く小さな娘を見つけなければ。
悲しい時は皿洗い。
それが母だった。
文句もつけずに、黙々と皿を洗う後姿を覚えている。
そんな私の気分転換はお風呂掃除だ。
黒ずみを落として、湯船をスポンジで磨く。
タイルを洗っていると、足を滑らさせた。
泣きそうになりながら、両手のひらを握る。
魔法は効かないようだ。
涙が溢れてくる。
海に行く夢を見る。
君は笑っていて、波打ち際を歩いていた。
そんな夢を見る。
海に沈めたあの日の思いが浮かび上がってくる。
君と別れて以来、海に行くことはなかった。
海に行けば、君の笑い声を思い出す。
僕の名を呼ぶ、その澄んだ声を思い出す。
そんなものは埋めてしまったのだから忘れたい。
水滴がついたグラスを揺する。
ゆらゆらと水が揺れる。
私の気持ちのように。
彼は俯いたままだ。
ここで別れ話を切り出せば、私はいい女になれるのかもしれない。
でも、まだ心の中では彼がいっぱいだった。
浮気だった、ちょっとした出来心だった、と言って欲しい。
本命の彼女は私だけだと。
彼がいつも身につけているロケットペンダント。
誰の肖像画が描かれているのか気になっていた。
鎖が緩んで、ロケットペンダントが落ちた。
僅かな狭間から、見たこともない美女が微笑む絵が見えた。
悔しくって奥歯を噛む。
「ありがとう」と彼は言った。
誰なのか、問い詰めることはできなかった。
夏も真ん中。
珍しく雨も降っていない。
裏の墓地に肝試しがてら散歩に行こうとなった。
僕は嫌な予感がしながら、賛成も反対もしなかった。
ワイワイと話しながら墓地まで辿り着いた。
君は泣きそうになりながら、僕の腕に指を絡める。
痣ができるほど強く握られ、幽霊よりも厄介だと思った。
逃げ回った罰だというのか。
神剣・神楽の使い手としてふさわしい態度ではなかった。
だからといって結界の外にいた少女の腕を切りつけた同胞は許せない。
絶対守ると決めていたから青年は打ちのめされる。
中途半端に伸びた髪をまとめていたヘアゴムを結び直す。
ここからは全力で行く。
決めた。
屈辱だった。
没落しかけているとはいえ、れっきとした貴族。
平民ごときに頭を下げなければいけないのか。
怒り顔で、指先を握り締める。
そうしていなければ平民の顔を殴り飛ばしてしまいそうだから。
こちらの足元を見た商談は苛々する。
それでも貴族の矜持を持って挨拶をした。
手は震えていた。
テーブルの上から落とせば、切ない音を立てて砕け散る。
そんな恋をした。
まるで硝子のような片想いだった。
告げた瞬間、壊れてしまうような。
千年かけて土に戻るような。
水が入ったグラスのように、時間がたてば表面に滴がつくような。
それは、どこか涙に似て、口に出せないような恋でした。
サーカスのピエロは笑い役。
身振りだけで涙を笑顔に変える。
一言も発しないで、ユーモラスに体を動かす。
誰も彼もがその様子に笑う。
するとピエロはもっと面白そうに手品をしてみせる。
連れてきて良かったと思った。
普段、笑うことの少ない少女が声を上げて笑った。
青年は泣きたくなった。
空という湯船に流れる流れ星は、どれほど矮小な存在なのだろう。
それでも願い事をすれば叶えてくれるという。
自分と重ねる。
そんな心の広いことはできなさそうだ。
己のことでいっぱいいっぱい。
湯船を肩まで浸かって、今日の疲れをいやす。
色んなことがあった、と振り返りながら心に星を宿す。
少女は小さく咳をコンコンとする。
お見舞いにきた少年は少女を寝かせようとする。
「大丈夫。起きている方が楽なの」少女は微笑む。
そして嬉しそうに、少年の指先と自分のそれを触れ合わせる。
「お見舞いに来てくれて、ありがとう」少女は言った。
「ちょっと心配だったからさ」と少年は言う。
求人広告にも墓の管理人が載る時代。
ビックリして手が止まった。
ノアの箱舟から遠く。
死はカジュアルなものになってしまったのだろうか。
折込チラシをながめながら思った。
墓参りをこまめにしよう。
最近、足が遠のいていた。
そんなことを考えた。
ちょっとだけ寂しい気持ちになった。
いまだに意中の少女に『好きだ』と告白できていない。
女々しい思考回路に言い訳を、そろそろできなくなってきた。
少女と出会った時に、滑り落ちるように恋に堕ちた。
世界は彩られたように、はじけて輝いた。
一目惚れだった。
それなのに、たった一言が言えないから、いまだ友だち同士だ。
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