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「 140文字の物語 」
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あなたに差し出せるものは、みなガラクタばかり。
清い心を持っていなかったから、どこか薄汚れている。
あなたには相応しくないものばかりだ。
それが悲しくて、それが辛くて唇を噛む。
唯一、差し出されるものは歪で美しくなかった。
愛なんて綺麗なものじゃない。
あなたには似合わないのに笑う。
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綺麗な夕焼けだったから、室内にいる青年にも教えたかった。
サンダルが脱げかけだった。
きちんと脱ぐのも、もどかしくて玄関から声をかける。
青年は不思議そうにやってきた。
「空が綺麗ですよ」少女が言うと、青年は靴を履く。
二人そろって空を見上げる。
「見事な夕焼けだな」青年は呟いた。
今日は二人にとって大切な記念日だった。
彼はちゃんとデートコースを選んでくれたし、仕事の話を一切しなかった。
大切にされている。
けれども、私は日常の鬱憤を吐き出したくなった。
「じゃあ、これはいらないな」彼は小箱を見せる。
目を逸らしつつ、手のひらにしがみつく。
「いる!」と言う。
自然公園に来たのはいつぶりだろうか。
コバルトブルーの青空が広がっていて、眩しかった。
こんなにも太陽に照らされていると、今まで外に出なかったのが愚者の気分になる。
空が高い。
手を伸ばしても届かない。
思わず、子どもたちの笑い声にためいきが出た。
青い空を目に焼きつける。
歩いていると看板が見えた。
看板には『落とし穴にご注意を』とはっきりと書いてあった。
その看板の横には立派な落とし穴。
看板があるのだから、落ちる者などいないだろう。
そう思うのは早計だった。
背中を押されて落とし穴に落ちていく。
準備も覚悟もしていなかった。
それを人は『恋』と呼ぶ。
寄せては返す波打ち際を少女は歩く。
青年は浜辺に降りていく階段で座りながら、その様子を見守っていた。
電車を乗り継いで、海に来るのは何度目だろうか。
いくつの季節をまたいだろうか。
少女は海がお気に入りのようだ。
『どこへ行きたい?』と尋ねると、『海に行きたいです』とくりかえす。
授業で使うコンパスを忘れてしまった。
隣のクラスの幼なじみは持っているだろうか。
休み時間を利用して、隣のクラスに向かう。
「奥さんが来たぞ!」呼び出してくれた少年はからかうような口調で言う。
「コンパス持っている?」手早く尋ねる。
頬を染める。
幼なじみはブルーのコンパスを手渡す。
クラスメイトから背後から声をかけられた。
板書が間に合わなかったからノートを貸してほしい、と頼まれた。
お安いご用だと口を開きかけたら、幼なじみがやってきた。
幼なじみは堂々と、僕の両手に触れる。
「あなたは私だけのものでしょ」幼なじみは断言した。
クラスメイトは「ごめん」と言う。
立派な浮気だと思うのは、私の心が狭いからだろうか。
みんなが平気にしているのが不思議だった。
そんな彼の新しい彼女はスマホの画面の中。
新しくリリースされたばかりのゲームだ。
現実の彼女をほったらかしにして、毎日ログインしている。
デート中でもスマホをいじっている。
浮気だと感じる。
水音がした。
青年は不思議に思って足を運ぶ。
神殿の奥近くに澄んだ泉があった。
そこでは美しい巫女姫が体を清めていた。
水面が波立って、こちらには気づいていない。
青年は見てはいけないものを見てしまったような気分になった。
早く立ち去らなければいけないのに、石になったように動けない。
少女は堂々と、青年の手のひらを両手で包む。
「紅葉よりも大きいですね」少女は笑った。
「君を守るための手だ」青年は真摯に言った。
「ありがとうございます」少女は礼を言った。
「こんな、あたたかい手に守られると思うと嬉しくなります」少女は青年を見上げる。
「君を守るのは当然のことだ」
夏休み前に、誕生日を祝ってもらえることになった。
本当に誕生日は夏休み中だったから。
前倒しでも祝ってくれる友だちの気持ちはありがたかった。
けれども、贅沢をいうのなら、恋人とふたりっきりでいたかった。
仲良しグループで騒ぐのも悪くはない。
でも穏やかに過ごしたいと思ってしまった。
残業でパソコンに向かっていた。
今日はコンビニで自分にご褒美を買おうと心に決めた。
甘いスイーツは刹那だけれども、疲れを癒してくれる。
キーボードを打鍵していると、デスクに菓子が置かれた。
「お疲れ様」と上司が笑っていた。
「食べてね」と断るのを許さない口調で言う。
私も微笑む。
昆虫の中には交尾中にオスがメスに食われる種が存在するらしい。
知っていて近づくのは、命がけの愛情表現だ。
それに比べて、僕は君に声ひとつ告げられない。
まるで空気のように漂っているだけだ。
君の目には映らない。
それは悲しいことだけれども、自分で選んだ道だった。
君の傍にいるだけだ。
魔法の短杖のために外へ出た。
どんな素材も短杖になるが、自分にあったものを見つけたい。
堅い木の枝が目に入った。
心惹かれるものがあった。
ナイフを使って、枝を切り取った。
手にしっくりと馴染む。
翌日、授業前にみんなに披露する。
けれどもそれ以上の短杖を持った者がいて打ちのめされる。
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