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「 140文字の物語 」
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一人分のお味噌汁とは難しい。
実家で飲んでいたものと同じものにならない。
そんな些細なことで孤独を感じる。
けれども、人間扱いしてくれなかった家庭に二度と帰りたくはないと抵抗する。
唯一の味方だった姉も出て行った家に用はない。
自然と涙が流れた。
少しだけお味噌汁が塩辛くなった。
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わがままだって分かっている。
迷惑だと分かっている。
それでも「吊革代わりになってくれる?」と少女は尋ねた。
少年は困ったような笑顔を浮かべ「どうぞ」と腕を差し出した。
少女はぎこちなく、少年の腕にしがみつく。
理由がなければ、こうしてふれあうことができない。
距離がもどかしかった。
ささいな嘘は人間関係を円滑にする。
ほんの少しの嘘で、人間は笑いを取り戻すことができるものだ。
自分が我慢をすればいいことだった。
穏やかな微笑みと嘘混じりの言葉で、人間は安心する。
そうやって生きてきた。
けれども何故だろう。
彼女の前では上手にできない。
嘘つきの本音が零れ落ちる。
少女は皿を睨む。
先ほどから、ナイフとフォークは止まったままだ。
どうやらお腹いっぱいになってしまったようだ。
残すことが嫌なのだろう。
けれども、水すら飲まないところを見ると、満腹なのだろう。
「残してもかまわないんだよ」青年は言った。
「料理してくれた人に悪いです」少女は言った。
クラスメイトに声をかけられた。
先ほどの授業で分からないところがあったらしい。
そこへ幼馴染がやってきた。
不機嫌な表情だった。
クラスメイトが去ると「誰なの?」と尋ねる。
「ただのクラスメイトだよ。彼氏もいるしね」僕は答えた。
すると嬉しそうに、指に指を絡める。
「勘違いしないでよ」
手紙が来た。
珍しいものもあるものだと思った。
学生時代の友人たちととは、せいぜい年賀状をやり取りをするだけだ。
封筒を裏返して、差出人の名前を見て、さらに驚く。
急いで封を開ける。
白い封筒には、白い便せんが一枚、入ってただけ。
『もう一度、あの夏で会いましょう』一言書いてあった。
空が波立っていた。
一つとして落ち着きがなく、雨が降ったり止んだり。
そろそろ青空が恋しくなる。
洗濯物を外に出すかどうか悩んでいると、虹色の瑞雲が見えた。
少女は青年を呼びに行く。
「珍しいな」と青年は呟いた。
少女は目を潤ませる。
ただ二人で空を見上げているだけなのに不思議だった。
吐く息も白く、うかうかとためいきをつけない。
そんな季節になった。
君がそっと、僕の腕を指先でつつく。
子どものような仕草に思わず失笑してしまう。
それがお気に召さなかったようで、君はそっぽを向く。
僕は冷たい君の指先を握り締める。
天然ホッカイロの役目を果たす。
君は僕を見上げた。
「これはあくまで政略結婚なんですからね」何度も大臣に言われた。
「帝国との友好関係を深めるために皇帝から寵愛されてください」大臣は冷めたようなことを言う。
王女はそんなものだと思い嫁いだ。
すると初夜で囁かれた。
「あくまで僕が、あなたを愛していたいんです。心配しないでください」
「どうかしたか?」青年は少女に尋ねた。
少女は赤面して、首を横に振る。
どうやら気になることがあるらしい。
少女の視線は正直で青年の顔を見つめる。
青年は微苦笑を浮かべる。
「気になることがあるなら言って欲しい」青年の言葉に少女は口を開いた。
「男性でも口唇は柔らかいって本で読んで」
少女は青年のそばにいられれば幸せだった。
一番になれなくてもその瞬間を独り占めできるということが嬉しかった。
青年に『彼女』ができる前までは。
幼なじみの立場に甘えていた結果だった。
いくら悔やんでも悔やみきれない。
もっと早く行動に出ればよかった。
そうすればいつまでも一緒だった。
くたくたにくたびれた革靴には一種の美しさがあった。
どんな時も寄り添ってきた。
どんな場所も歩いてきた。
想い出が詰めこんで飴色に染まっている。
昨日も履いていたように、今日も履いていくものだと思っていた。
「新しいの買ってきたわよ」母に革靴を手を渡された。
それを見て悲しむ。
小さな子どもが泣き顔で、兄らしき子どもの腕を軽く握る。
席を譲ると申し出をしたが兄らしき子どもに、やんわりと断られてしまった。
今時、しっかりした子どもだ。
感心しながら電車の中で見守った。
兄らしき子どもは優しく小さな子どもの頭を撫でる。
聞き取れなかったが何やらささやいた。
「どっちがいいと思う?」少女は少年に尋ねる。
正直、どっちでもいいと思う。
「試着させてもらえば?」と少年は無難な答えを言った。
「私は、あなたに訊いているの!どっちが好み?」少女は言った。
「はいはい、可愛い可愛い。どっちも似合っているよ」少年は投げやりに言った。
「どっち?」
林が鬱蒼と茂る神社で少女ははしゃぐ。
青年はそれを見守って、ゆっくりとついていく。
自然と呼吸が楽になるのは、緑のおかげだろうか。
「早く本殿に行きましょう」少女が折り返してきて青年の手を取る。
久しぶりに何もない日だ。
「ここのご神木は見なきゃ損ですよ」嬉しそうに少女は笑う。
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