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「 140文字の物語 」
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慣れたはずだった。
斬ったり斬られたりするのは。
死の瀬戸際にいることも。
神剣・神楽の主になって、同胞を殺すのは日常になってきていた。
それなのに手が震えて、神剣・神楽を握ることができない。
そんな青年に「大丈夫ですよ」と少女は手を重ねる。
温かい手に震えはゆっくりと解けていく。
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煙草の煙は匂いがつくから庭で吸っていた。
「お昼ができましたよー」と少女がやってきた。
「吸い終わったら行く」青年は答えた。
少女は狼狽していた。
「煙草を吸うんですね」少女は言った。
そういえば少女の前で吸うことはなかった。
「煙草ってどんな味ですか?」少女の質問に口移して遂げる。
休日の昼の電車は空いていた。
君とシートに座って、目的地の話をしていた。
電車の揺れに、とんと僕と君の肩がぶつかりあった。
軽々しくふれあったから、僕は自分の両手を握り締める。
これ以上、君のテリトリーに入らないように。
君と僕はただの友だちだ。
期待しないように、すっと離れた。
生れて初めて好きになった人には、すでに好きになっている人がいた。
どうしても振り向いてほしくて色んな手段を講じた。
けれども想いの反比例のように、好きになった人の『恋』は成熟しつつあった。
報われないのはわかっていたけど、あまりにも残酷な結末だった。
神様というものはいないのだ。
恋人と喧嘩した。
自己嫌悪に浸って部屋にこもる。
自分の方が悪いことは知っている。
恋人は気づかいに溢れていた。
それなのに口論になってしまった。
携帯電話が振動する。
恋人からのものだろう。
今は見たくない。
どうせ謝罪の文句が連なっているだろう。
機嫌を取ろうとする言葉を見たくない。
街は四方をコンクリートに囲まれていた。
ネオンがきらびやかで虚栄を張っていた。
魂すら売り払う覚悟があれば、なんでも揃う街だった。
物心をついた時からいるから、感覚がマヒしている。
いわゆる生み捨てだ。
それでも人並みに恋というものをした。
身分違いだと分かっていたけれども伝える。
「そんなに信用できない?」少女は言った。
何度も目が合えば気になるだろう。
「目で追ってしまうのは、つい癖で。動いているから気になるんだ」と少年は言い訳をする。
「まるで監視されているみたいだから、見ないでほしいんだけど」少女はもっともなことを言う。
「気をつけるよ」少年は言う。
君と待ち合わせをして帰るようになってから、どれぐらい経つだろう。
最初は恥ずかしくて、無言で帰り道を辿っていた。
今は当たり障りのない話を交わすことができるようになった。
君の家まで送っていくのは日課になっていた。
どれほど時間を一緒に過ごしても別れの時が来ると寂しいと思った。
パソコンの液晶画面をじっくりと見てしまった。
好きで読んでいる電子書籍が打ち切りになる、という情報がタイムラインに流れてきた。
急いでコンビニまで雑誌を買いに行った。
ページをめくると、第一部が終わると書いてあった。
第二部の予定はあるとコメントされていて、脱力する。
良かった。
長く家を空けていられないので日帰り旅行だった。
それでも少女は微笑んだ。
空席が目立つ電車に揺られて、目的地に向かう。
青年は無造作に置かれた少女の手を見る。
触れても大丈夫だろうか。
青年は優しく、少女の指に触れる。
少女がこちらを見たので、青年は目を逸らした。
子どもみたいだった。
周りから見れば、ちっぽけで歪な愛だろう。
けれども僕にはこれしかない。
だから大切大切にしていた。
僕の愛の対になる欠けた愛を探してる。
君の愛を見せてよ。
もしかすると欠けた部分がぴったりと合うかもしれないだろう?
本当は誰でも良いわけじゃなくって君だったら嬉しいんだ。
お願いだよ。
タイミングというものがあるのだろうか。
彼の第一印象は悪くなかった。
いい歳して独り身でいると何かと言われる昨今。
酒の勢いもあって付き合うこととなった。
今日は昼間にデートをする。
いつも夜ばかりだから新鮮だった。
落ち着いたカフェで真面目な彼が尋ねる。
「俺のどこが好きですか?」
「いつも遊んでいるような子どもたちとは違うのだよ」少女は父親から釘を刺される。
「丁寧に挨拶しなさい」お転婆なところのある少女は、緊張した。
同い年ぐらいのお人形さんのような少年と引き合わされた。
少女はぎこちなく、両手にしがみつく。
練習してきた挨拶はすっかりと無駄になった。
唐突に涙を流し始めた私に、あなたはハンカチを手渡す。
「嫌なことがあったのか?」あなたは尋ねる。
私は首を横に振る。
「悲しいことがあったのか?」あなたは再度尋ねる。
私はまた首を横に振る。
「笑顔の君が好きなんだ。どうすれば涙が止まる?」あなたは困ったように尋ねる。
分からない。
彼と親友の視線が一瞬、絡み合った。
その様子は親密で、自然だった。
まだ私は彼を見つめることができないのに。
親友が親し気に彼の名を呼ぶのも、嫌だった。
それに応える彼も、もっと嫌だった。
まるで私は除け者のようだった。
まるで隠れ蓑にされている気分になった。
こんなに愛しているのに。
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