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「 140文字の物語 」
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寝台の横たわった少女を見届ける。
「ねえ、お願いがあるの」少女は少年の瞳を見つめる。
「私がすっかり眠ってしまえるまで、手を繋いでいてくれる?」少女がおねだりする。
「他の人には頼んじゃダメですよ」少年は恥ずかしそうに、両手を触れ合わせる。
ほっそりとした手に性差を感じた。
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夜闇の中、手を繋いで歩いた。
爪月はとうに沈んでいるので、灯りは星々だけだった。
並んで歩いていた足音が一つ消えた。
少女は不審に思って振り返ると、唇を重ねられた。
少女は大きな瞳をさらに大きくした。
「忘れて、なんて残酷だね」唇を塞いだ少年が言った。
少女の胸に灯火が灯った。
今年は夏が短かった。
すでに立秋も過ぎるとそれが顕著だった。
日中の暑さは辟易するが、長々しき尾のように夜が長くなるのは大歓迎だった。
月が晧く、美しく見える。
星空が地上に囁いているように聴こえる。
射干玉色を背景に月と星が躍るさまを見るのは楽しかった。
それがひとときのものでも。
掛け時計が決まった数だけ音を鳴らす。
世界が朝になったことを知らせる。
遅れて携帯電話のアラームが鳴る。
液晶画面を押す。
アラームが鳴り終わるのと掛け時計の音が鳴り終わるのは同時だった。
起き上がらなければ、今日も一日忙しい。
微睡の中でやることリストを考える。
二度寝しそうだった。
少女は怒り顔で、少年と繋いでいる手の手のひらを折れんばかりに握る。
それで少年は反省したどころか、嬉しそうな顔をした。
「これはただの旅行じゃないのよ」少女は少年を見上げる。
「視察だろ?」少年は答えた。
「だったら、どうしてふらふらとあちらこちらを立ち寄るの!」少女は怒鳴った。
「私のことをどう思っている?」君は不安で揺れた瞳で尋ねてきた。
「二文字以内で答えを聞かせて」君は言った。
答えは一つしかない。
僕は苦笑する。
「二文字なんかでは表せないよ」僕は秘密話をするように、君の耳元で囁く。
「好きだし、大好きだし、愛している」僕の言葉で耳まで赤くなった。
文章を打っては消し、迷いながら言葉を紡いでいく。
失礼さがないように、それでいて親しみがあるように。
頭を悩ませながら打ったメールを送信した。
届いたようだけれども、読んでくれるだろうか。
返信があるだろうか。
携帯電話の液晶画面を見つめたまま。
大丈夫と誰かに言って欲しかった。
運命は枝のように様々な選択肢があった。
誰よりも朝早く起き、今日は少し涼しいから上着を羽織る。
外の新聞受けから朝刊をダイニングテーブルに置く。
グリルで魚を焼きながら、お味噌汁を作る。
賑やかな音を立てて、ご飯が炊ける。
誰かのために忙しい朝を選んだのは、自分だ。
後悔はない。
肌寒さを感じて、カーディガンを羽織った。
部屋の温度は快適なもののはずなのに。
震える少女に、青年は遠慮がちに、両手に触れる。
やはり青年の手も冷たかった。
「熱があるみたいだな。体温計を持ってくるからお茶であたたまっていてくれ」
青年は指示を出すと、隣室に向かって行ってしまった。
高い壁の前に集合させられた。
新米の魔法使いたちは身長の何倍もある壁を見つめる。
「実践訓練を始めます」年嵩の魔法使いが言った。
「課題はこの壁を乗り越えること。手段は問いません」指導役の魔法使いは言う。
一瞬、ざわつく。
箒を持ってきて良かった。
これぐらいの高さなら、越えられる。
愛しい愛しい方。
決して結ばれてはいけない方。
仮面で顔を隠してもその香りでわかる。
その声でわかる。
「レディ。ラストダンスの機会をお与えくださりますか?」
優しい物腰で差し出された手に、手を重ねる。
今、禁忌の果実をもぎとる。
交わる視線に、握られた手の熱に、蕩けそうだ。
「これ以上勉強の邪魔をするなら」少女は枯れ枝を拾って線を描く。
「こっち側には入ってこないでね」勝気な少女は言った。
引かれた境界線に少年は、そろりとなぞる。
枯れ枝を置くと少女は読書を再開した。
少年は線を乗り越える。
こんな小さな約束事を守る気はなかった。
境界線なんていらない。
今回テスト勉強に身が入らなかった。
ぼんやりと考え事をしてしまった。
今回のテストの成績は無残なものだろう。
少女は決意をして、順位を張り出された廊下に向かう。
白金色の頭髪の少年は氷のように冷たい目がまるで溶けるように少女を見た。
「調子が悪いの?」少年の問いに対抗心が芽生えた。
君は僕と一緒なのに遠い目をする。
それが僕の胸を刺す。
今まで付き合ってきた恋人たちと重ねられているのだろうか。
僕はこれ以上ないくらい君が好きだけれども、過去の恋人たちもそうだろう。
臆病な僕は物思いにふけるキミに質問することができない。
それなのに知りたい。
見事な堂々巡りだ。
僕には君はふさわしくない。
本当は夜景のレストランでワインを楽しみながら談話する。
そんな光景が似合う君。
チェーン店のラーメン屋で味噌ラーメンを食べる僕とミスマッチだ。
でもせめて、隣に立つことだけは許されたい。
気持ちは一生、伝えるつもりはないから。
君の笑顔をずっと見たいんだ。
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