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「 140文字の物語 」
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思い出の中のあなたは優しい。
いつも私のことを気遣ってくれた。
ひとり電車に乗ると、あなたのことを思い出す。
吊革に手が届かない私のために、腕を差し出してくれた。
私は優しく、腕をぎゅっと握る。
いつもの風景だった。
けれども、今はあなたがいない。
手すりにつかまりながら思い出す。
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いつかあげた四つ葉のクローバー。
君は押し花にして、ラミネート加工にしてしおりにしている。
花言葉すら知らない頃に渡したものだった。
「きちんとしたしおりを買いなよ」僕は言った。
「大切にもさせてくれないの?」君は真っ直ぐと僕を見つめる。
「あなたから貰ったものは、どれも宝物よ」
予定通りに進む婚儀に、逆に不安になった。
ありたいていに言えば、よくある政略結婚だった。
弱小国が神子姫を差し出す代わりに、皇国には併呑されないというものだ。
国の面子をかけた大勝負に失敗は許されない。
初めて見た旦那様は戦上手と噂のわりに怜悧な美貌な人だった。
上手くやれそうだ。
泡のように儚い月光だから、みんな気づかない。
第一、現代人は忙しすぎる。
空を見上げる余裕すらない。
雨さえ降っていなければ、天候を気にする人など少数派だろう。
だから満月の度ついている、月の異名を知っている人など知っている人物はどれぐらいいるだろう。
淡い輪郭の月に君がささやく。
君は病院のベッドの上で横たわっていた。
看護師さんの話を聞くと、あまり眠れていないらしい。
君は恥ずかしそうに「両手を繋いでくれない?」と言った。
だから僕は勇気を奮って、両手を両手で包む。
ひんやりとした病人らしい手の温度に僕はビックリする。
「ありがとう」君は微笑んで礼を言う。
愛の言葉の一つでも、かければ違った未来があったのだろうか。
一歩的に貰うばかりで、返すことなんて考えていなかった。
君が紡ぐ言葉たちは何かの冗談のように感じていた。
臆病で、卑屈で、根暗な僕には、太陽のように明るい君はふさわしくない。
愛の言葉を綴る前に君は落胆したように去った。
愛し愛される関係がこんなにも満たされた気分になるとは知らなかった。
教えてくれた君にどれだけ感謝をすればいいのだろうか。
君は何でもないような顔をして笑うのだろう。
僕にとって君は比べようがないぐらい最愛の人。
もう失うのは勘弁だ。
優しく手を繋いで、長く続く道を歩いていきたい。
アイスクリームにも魂というものがあるのだろうか。
それなら悪いことをした、と手元を見る。
わずかに残ったアイスクリームとワッフルスコーン。
早い話がつまづきそうになってよろけたらアイスクリームを地面に落としてしまったのだ。
アスファルトに溶けていく白い個体にはアリが集まり始めた。
いつも寂しそうに笑う君。
笑っているのに、泣いているように見える君。
そんな君だから、これからの人生は屈託なく笑っていてほしい。
僕は勇気を総動員して言う。
「僕が、君を幸せにしたい」
君の薬指のサイズの誕生石があしらわれた指輪も用意した。
君は僕の言葉を受け入れてくれるだろうか。
明日も一緒に登校するのに、別れが寂しかった。
生まれる時からずっとお隣さんが綺麗になったからだろうか。
ただ隣に住んでいるということだけで、一緒に登下校をしている。
きっと幼馴染よりも大切な恋人ができたのなら、一緒に帰ることはなくなるのだろう。
それが近い将来のようで悲しい。
今日の晩ご飯はインスタントヌードルだ。
本当はお湯を沸かすのですら、面倒だった。
派手につけられた傷跡を、濡れタオルで拭う。
ヒリヒリとした痛みを感じる。
ためいきをついているうちにお湯が沸いた。
熱湯を注ぐと居間まで運ぶ。
濡れタオルをキッチンに置くと、傷跡のつけられた腕を見る。
定期健診に病院にやってきた。
不安があるのだろう。
ずっと鳴いてばかりいる。
大人しく順番を待っている飼い主たちに頭を下げ、謝る。
キャリケースを開ける。
そしてそっと、小さくあたたかい両手を両手で包む。
「大丈夫だよ」と飼い猫に言い聞かせる。
悪戯っ子はささやかに指に爪を立てる。
「君と僕の間には境界線なんていらない」勇気を奮って僕は言った。
君の瞳がにじむ。
嬉し涙だろうか、悲しみの涙だろうか。
僕には判断できなかった。
3歩、友だちの距離。
それを埋めるように僕は君に近づいた。
君は逃げなかった。
それが答えでいいよね。
もう離れて歩く必要はないよね。
放課後の教室なんて覗くんじゃなかった。
幼馴染がクラスメイトと楽しそうに話していた。
幼馴染は、まだ見たことのない顔で嬉しそうに笑っていた。
そんな表情、僕の前では浮かべたことがなかった。
特別な相手なんだ。
僕は静かにその場から立ち去った。
ただの幼馴染が出る場面ではなかった。
「ちょっと出かけてくる」青年は言った。
「ちょっととは、戦いですか?」少女は鋭い目で青年を見つめる。
青年は狼狽する。
この戦いを少女には見せたくはなかった。
だから黙って出て行きたいと思っていた。
「ついていきます」少女は重ねるように言った。
神剣・神楽が嬉しそうに律動していた。
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