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「 140文字の物語 」
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「顔、赤いけど大丈夫?」そう言いながら君は僕の額にふれる。
「熱い。熱があるかもしれないから、保健室に行こう」親切心溢れる君が言った。
「次の授業、テストがあるから」僕は呟くように言った。
今度こそ満点を取らないと。
「テストなんて、いくらでも受けられるよ」君は善意で言う。
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あなたは無言で深紅の薔薇を差し出す。
どういうつもりだろうか。
薔薇は薫り高く鮮やかだった。
永遠を生きられない人間のように儚かった。
「ありがとう」と私が言えば、あなたの顔に淡い笑顔が浮かんだ。
胸の内を示すような深紅の薔薇なのに、あなたははにかんだような顔をする。
目を瞬かせる。
「ギブアップする?」僕は君に声をかけた。
「大丈夫」君の声は震えていた。
24時間コンビニが開いている現代で肝試しなんて馬鹿らしいし、早く終わらせてしまいたい。
君は目を逸らしつつ、僕の両手に触れる。
存在を確かめるような仕草に、こちらが幽霊になった気分になる。
あたたかったけど。
ようやく秋めいてきた白露の頃。
稲穂の中で靴を見つけた。
片手に載るくらいの小さな靴の持つ主はいずこに。
風変わりなシンデレラを探す王子になった気分だ。
とりあえずこの近辺には、こんな小さな靴が合うような少女はいなかったはずだ。
両親の里帰りに連れてこられたのだろうか。
待ち合わせ時間になっても、あなたの姿を見つけることができなかった。
スマホで見ても、電車の遅延情報はなかった。
不安に思っていると、走ってくるあなたが見えた。
私は手を振る。
「ゴメン、遅刻した」あなたは謝罪する。
そして、さりげなく額にキスをした。
なんて恥ずかしい人なんだろうか!
「いつまでも子ども扱いしないでください」私は言った。
「そういうほど子どもだというよ」あなたは苦笑した。
「もう大人なんですから」私は訴える。
幼い頃から面倒を見ている側からしてからは、いつまでたっても子どもに見えるのだろう。
あなたはふいに屈んで唇を掠め取る。
「大人だろう?」
今日は天気がいい。
連日の雨とは遠く、星が煌めいて見える。
カメラを片手に空を仰ぐ。
満足のできる写真ができるほどシャッターを切る。
空の変化は顕著だった。
特に夜明けから朝にかけては、ダイナミックと言っても良かった。
東の空が白み始めたと思ったら、あっという間に鮮やかな日の出だ。
肝試しに墓地に来たものの、先ほどから一歩も歩けずにいる。
適当な組み合わせだったがくじ運が悪かったようだ。
僕は無理矢理つかまれている、腕を握り締めている手を指先でなぞる。
「な、何するんですか?」君は悲鳴のような声を上げる。
「さっさと周るよ。怖いことなんてないよ」僕は言った。
運命というものを信じられるだろうか。
夢の中で何度も出会ったその人が目の前にいた。
遠い昔に別れた愛しい人。
この再会は宿命だったのだろうか。
君は変わらない笑顔で、僕の昔の名を呼んだ。
懐かしさに涙が一滴、落ちた。
もう二度と別れ離れにならない。
僕は強く君を抱きしめた。
唇に真っ赤なルージュを引く。
青白い肌がより、青白く見える。
少しでも年齢差が埋められるといい。
そう思いながら購入したものだった。
似合わないくせにね。
彼との差は化粧一つで埋められるようなものではない。
ティッシュペーパーでルージュを拭う。
まだ幼い顔が鏡に映る。
微かに唇が紅色だ。
背伸びをして、こちらに合わせようとする少女に欲望を感じる。
まだまだ幼い少女を籠の中に閉じこめて、目隠しをしてしまいたいと思う。
「どうかしましたか?」少女は何も知らずに大きな瞳で青年を見上げる。
「何でもないよ」青年は取りつくろう。
少女がもう少し大人になったら、抱きしめよう。
何事もないように廊下をすれ違う。
挨拶もなく、無言で立ち去る。
その際さりげなく、両手のひらに指を絡める。
瞬きよりも長く、呼吸よりも短く。
秘密な恋人同士だから、誰かに見られると困ったことにしまう。
視線が交じりあう。
今はそれだけで充分だ。
いつか堂々と、恋人宣言したいと離れる。
「落とし穴にご注意を」いつもと違った紳士らしい言葉づかいで青年は言った。
「いまどき、落とし穴なんてあるわけないじゃないですか」少女は笑った。
その耳元に力強い音が響いた。
青年に閉じこめられた少女はビックリする。
青年の顔を近づいてきて額にキスされた。
「落とし穴に落ちたか?」
少しのミスも許されない。
100点満点ではないテストには課題が、ごっそりと与えられた。
完璧主義の両親に育てられた私は、反抗期もなかった。
ただ両親から愛されてほしくて、勉強を頑張った。
一つ下の妹は可愛らしい外見を利用して100点満点のテストでなくても許された。
妹が羨ましい。
夏の花であるひまわりは捕まえられた。
暗い地下牢で鎖に繋がれている。
太陽を追いかけている姿は、もう見れないことを主は知らない。
俯いてひまわりは涙を流す。早く地上のみなと同じように、季節の中で朽ち果てたい。
そう願い、訴えるけれども、ひまわりを気に入ってしまった主には届かない。
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