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「 140文字の物語 」
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昼はインスタントカレーだった。
中辛のカレーを流しこむように食べた。
書類を書いているうちに、ボールペンが書けなくなった。
分解してみると芯の買い替え時期だった。
予備の替え芯を入れて元に戻す。
すると、なんだか目が潤む。
どうして、こんなことをやっているんだろう。
悲しくなってきた。
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「大丈夫だよ」と君が後押ししてくれる。
「今まで頑張ってきたんでしょ。絶対、大丈夫」と君は微笑む。
「勇気を分けてくれる?」僕が尋ねると「もちろん」と君は頷く。
そっと、君の両手のひらを僕の両手を包む。
このぬくもりがあれば、自分に負けそうにない。
君の言う通り「大丈夫」そうだ。
朝晩、涼しくなったとはいえ、真昼は汗が滴る。
暦の上では、とっくのとうに秋になっているのに。
この残暑は辛い。
木陰を見つけて、ガーゼハンカチで汗を拭う。
熱中症になってしまいそうだがジャケットは脱げない。
清潔感のある姿が顧客を確保するからだ。
人間は第一印象に左右される。
魂は真夜中に見る揚羽蝶のよう。
生死の間をさまよっている。
生きていくことの辛さ、死んでいくことの辛さ。
その両方を持っているように感じた。
ひと夏、生きられない儚さが神秘性を醸し出す。
写真集を眺めていたが、立ちあがる。
魂がどこにあるのかは神様が決めることだ。
ただ生きていくだけ。
君は些細なことで壊れてしまいそう。
そんな繊細な何かでできているような。
真昼の公園は思ったよりも静かで、二人そろってベンチに座っていると百年前からそうしているような気がした。
君の存在を確かめたくて「手をさわってもいい?」と僕は尋ねた。
君は頷いた。
恐る恐る、両手を両手で包む。
嘘吐きの心臓は、きっと棘だらけだ。
息をするように嘘を吐くハートが綺麗なピンクだとは思えない。
自分と他人を傷つけるような棘が生えているに違いない。
そして、痛みに気づかずに嘘を重ねる。
嘘を吐きすぎて、本当のことなんて分からなくなっているに違いない。
ほんの少しばかり同情をした。
虹色の未来は硝煙と共に消え去った。
まだあたたかい体から生命の色が流れていく。
自分よりも大きな体を支えきれない。
手のひらが紅葉よりも赤くなる。
「大丈夫ですか?」それはこっちの台詞だった。
守られた自分が悲しむのはルール違反だろうか。
「早く治療してもらいましょう」明るく言った。
気づかい上手な彼は、エスコートも完璧。
『ちょっとおしゃれをしてきてね』とメールが送られてきた。
一番大切な時に着るワンピースを着て、待ち合わせ場所に行った。
彼は笑顔で「似合っているよ」と笑う。
そして腕を差し出す。
私は遠慮がちに、腕に触れる。
記念日の今日、どこへ行くのだろう。
会うなり、ぎゅっと抱きしめられた。
抗議しようと思ったが、左肩に濡れる感覚があった。
そろりと視線だけ動かして見る。
静かに涙を流していた。
それで言葉を紡ぐことを諦めた。
「離してあげられなくてごめんね」耳元に囁かれたのは甘い言葉ではなかった。
幼子が迷子になったような言葉だった。
「今日は午後に雨が降るって」テレビを観ていた私は弟に声をかけた。
朝練で誰よりも早く出る弟は確実に傘を持って出かけた。
味気のない黒い大きな傘だ。
天気予報は珍しく当たった。
それなのに、弟は濡れて帰ってきた。
「傘はどうしたの?」タオルで体を拭いていた弟に尋ねた。
答えはなかった。
今夜、身も心もあなたのモノになる。
ずっと慕っていたあなたのモノになれることは幸福だった。
「閨では殿方に従うように」と古参の侍女が言う。
記念すべき、初夜に何があるというのだろうか。
「嫌だったら言ってくれ」優しいあなたは言った。
首を振る。
あなたは嬉しそうに、指にしがみついた。
「ねぇねぇ、虹だよ」君は振り向く。
先ほどまでの豪雨はすっかりと止んだ。
雨宿りに入ったカフェの窓を君は指す。
虹を見るのは、いつぶりだろうか。
なかなか目にかかるものではなかったけれども、君のはしゃぎっぷりは子どものようだった。
「虹の根元には幸せが眠っているんだって」君は笑う。
大きな満月は魂まで抜き取ってしまったのか。
君はぼんやりと月をながめていた。
夜風に吹かれて、僕が隣にいるのに一言もない。
不思議な沈黙が漂っていた。
ここにいる君は僕の知っている君なのだろうか。
分からなくなる。
月を見つめる横顔は、にぎやかな君にふさわしくなく、とても儚げだった。
「ほら、手を繋ごう。ダンスの練習だ」あなたは言った。
「当日は壁の華で結構」と私は言った。
「そういうわけにはいかないだろう。私の婚約者なのだから」とあなたを手を差し出す。
家柄だけで選ばれたのに、どうしてこんなに優しくしてくれるのだろう。
嫌々ながらも、両手に指を絡める。
雨の日の約束は、大きな傘を持ってくること。
傘は二人で一本。
相合傘をして帰るためだ。
そのため自転車通学を徒歩通学に切り替える。
あなたは律儀にこの約束を守ってくれる。
だから、みんなが憂鬱だという雨の日が楽しみで仕方ない。
傘の中で聞くあなたの声は、小さくても美しく耳に響く。
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