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「 140文字の物語 」
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今日は見事な秋晴れ。
大物を片付けるにはぴったりだった。
とりあえず洗濯機を回しながら、布団を干す。
今日はふかふかの布団で眠れるかと思うと幸せな気分になった。
久しぶりのお日さまは、少し動くと汗がにじむ。
だからといって半袖では寒いだろう。
衣更えにちょうどいい。
夏物をまとめる。
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無我夢中に走っていたらいつの間にか廃墟に辿り着ていた。
逃げてきた場所よりも、おどろおどろしい雰囲気が漂っていた。
それでも追手から逃げるには、背に腹を変えられない。
「お邪魔します」小さな声で声をかけて廃墟の中に入っていた。
くすくすと笑う声には気がつかない。
長い夜の始まりだ。
神剣・神楽の癒しの力を持っても隠せない怪我を負った。
自分の血と返り血で、血みどろだった。
正直、こんな姿を少女に見せたくはなかった。
結界が溶けるように消える。
少女は小走りで近寄ってくる。
満面の笑みを浮かべながら、青年の指に触れる。
「大丈夫ですよね」と少女は尋ねるように言う。
風向きが変わった。
飛び出すなら、今だ。
新しいものを連れてきた風を再び捕まえるのは難儀なことだろう。
リンリンと鈴のように鳴く虫の隙間を通り抜ける風は、どんな色をしているのだろうか。
想像するだけでも楽しい。
私の頬を撫でる新しい風に無言で挨拶をする。
私は吹く風のように自由に駆けだした。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「君の全部を忘れたいんだ」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

------

切り出すのに勇気がいった。
僕はひどくためらないながら、最後の嘘をついた。
「君の全部を忘れたいんだ」と告げた。
君におぶさっていては前へ進めない。
君は大きな瞳に涙をためて僕を見上げる。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだった。
それでも僕は冷たい男の振りをする。
今生の別れになっても。
妹と自分は優秀な異能力を持っていた。
戦いに向く異能力だった。
平穏な日常と交換条件のように、契約を交わした。
世界は彼らを手放さない。
おそらく死に絶えるまでこきを使われるのだろう。
すくなくとも妹は自由にしてやりたい。
汚れ仕事をするのは自分だけで充分だと思った。
願いは叶わない。
録画された映像機器には、知らない人と自分が映っていた。
そのことを悲しむ。
忘却は罪だ。
知らない人は父親だと、歳を重ねた母親が教える。
全く覚えておらず、テレビの中で仲良くしているのが意外だった。
忘れたことを誤魔化しながら、母の言葉に相槌を打つ。
小さい自分を見るのは奇妙だった。
門限を送れた罰として、お風呂掃除をしていた。
タイルをごしごし洗って、立ちあがろうとした瞬間だった。
泡に足を取られて、にぎやかに転んだ。
「大丈夫か?」親に告げ口した兄が風呂場を覗きこんだ。
そして、手を差し出す。
嫌々ながらも、腕を握る。
せめての嫌味として泡のついた手で触れる。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

------

僕は小さく笑って最後の嘘をついた。
「ずっと君と一緒だよ」と。
それは心に無数にできた傷をいやすための嘘だった。
だってもう、仕方がないだろう?
『ずっと』も、『永遠』もないことを僕も君も知っている。
それでも約束を重ねるのは、未来に希望を託したいからだ。
「そうだね」君も淡く笑う。
「今度の日曜日にデートに行こう」教室で幼馴染が言った。
まだクラスメイトがちらほら残っていた。
痛いぐらいの視線が突き刺さる。
幼馴染はデートと言ったが、付き合ってすらいない。
本当にただの幼馴染だ。
「カフェに新メニューができたんだって」幼馴染は言う。
誰だこいつを甘やかしたのは。
「大丈夫だって」親友が背中を押す。
私といったら白い封筒をふれてばかりいる。
そのうち、くしゃくしゃになってしまうんじゃないか、と思う。
「私が渡してきてあげようか?」おせっかいな親友は言う。
「頑張る」と私は言う。
白い封筒を想い人の机の中に滑りこませる。
親友の思い通りになった。
迷いがちな人生を指し示す金色のコンパス。
しばらく見ない間に、摩耗していた。
どうしてもっと大切にしなかったのか。
金色のコンパスのように、心が傷つく。
丁寧に拭き取り、道を歩き出した。
迷いたくはなかった。
金色のコンパスを見ながら、これからは迷いのない人生を歩くと心の中で誓う。
「恋人らしく、手を繋いで歩こうよ」少年は勇気を出して言った。
「本気で言っている?」少女は冷たい目で言う。
「少しぐらい恋人らしいことをしようよ」少年はすがりつく。
少女はためいきをついた。仕方なく、といった様子で指に指を絡める。
「これで満足?」少女は尋ねた。
少年はうなずいた。
「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「全部忘れていいよ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は特別に優しい声で言った。
それが嘘だと気がつかれないように。
「全部忘れていいよ」と、笑顔で言った。
君の瞳は傷ついた、と次げていた。
頼むよ、ごまかされてくれないか。
君だけでも生き残ってほしい。
僕の命をかけて、ここから君を逃がさないといけないんだ。
君を守るための最後の嘘だ。
青年が戦いから帰ってきた。
「誕生日おめでとうございます」少女が出迎えてくれた。
今日はついてこなかったのは、この準備のためだろうか。
テーブルの上にはご馳走が並んでいた。
独り暮らしを始めてから祝ってもらったことはない。
ささやかな願いが叶う。
『絶対に生き残る』そう決められた。
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