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「 140文字の物語 」
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毎朝、2個のおむすびがテーブルの上に置いてある。
そして付箋に『今日も頑張ってね』と書かれているものがある。
仕事ですれ違いが多い夫婦のささやかなコミュニケーションだ。
おむすびを食べる。
同じ米なのに妻が握ったおむすびが美味しいのは、何故なのだろうか?
ずっと不思議だ。
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『変われなかったあの子』

あの子はありとあらゆるDVを受けていた。
それに同情する大人たちはいなかった。
だから僕ができることは何でもやってあげた。
徐々にあの子は僕を下僕のように扱うようになった。
そんな人生は嫌だと、僕はあの子から離れた。
風の噂では父に似た夫と結婚したらしい。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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大丈夫と自分に言い聞かせながら嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」と。
それがどれほどの努力が必要なのか、君は何も知らないままでいて。
その方が僕の負担も軽くなるから。
大丈夫、大丈夫と自分に嘘をつく。
これが最後の嘘なのだから大丈夫と。
君に最後まで伝えることのできない一言があった。
ずっと胸の奥底で眠っていた感情がこみあげてくる。
でも、伝えたら君の負担になるだろう。
『また、明日』と別れることができないのだから、黙っていた方がいいのだろう。
精一杯の笑顔を浮かべて、違う言葉を君に告げる。
君も微笑んでくれた。
『キスには魔法がかかっているから、運命の人に出会うまでしてはいけないの』
くりかえされる母の言葉に聞き飽きていた。
運命の人なんて、そう簡単に分かるものなのだろうか。
社交界にデビューする歳になり、殿方と言葉を交わすようになった。
バルコニーに涼んでいたら、不意打ちにキスされた。
世界を支える女神の化身だと名乗った。
確かにキラキラと輝く星のような光を纏っていた。
僕は女神の化身を避けて通学路を歩いていこうとした。
そうしたら首根っこを掴まれた。
女神の化身とやらも手荒いようだ。
「何故、無視をする」女神の化身は言った。
「世界を救うことに興味がないので」
眠り姫は幸せな夢を見ているのだろうか。
満面の笑みを浮かべながら、騎士の両手をぎゅっと握る。
小さな手から伝わるぬくもりは、幸福のようだった。
眠る前は怖がっていたのに、寝物語をしたら、すっと眠りについた。
騎士はその様子を見て笑む。
眠り姫が目覚める時まで、小さな手を握っている。
「iotuは、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

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僕はいっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
いつまでも膠着状態な関係を変えるための最後の嘘だった。
「いなくなったりなんてしないよ」と。
どうか嘘だと気づかないで。
明日の朝がきて、僕がいないことを嘆いたりしないで。
僕は君のために旅立つのだから。
君は二人の距離感に困っている。
ずっと一緒にいたから迷う気持ちも分かる。
幼馴染から恋人にステップアップしたのだ。
もう境界線なんていらない。
君のひんやりとした手を握る。
幼馴染の頃に繋いでいた手とは違い、力強く握る。
君は僕の瞳を途惑うように見つめる。
でも振り払うことはなかった。
幼馴染に今夜観るDVDを託す。
この前、散々怒ったのでまともなものを選んでくることを祈る。
とはいえ、ジャンルの指定をしなかったので、今日もハズレを引くかもしれない。
枝の数だけあるタイトルの中で、幼馴染は何を選んでくるのだろうか。
それが楽しみでもある。
だから特に告げずに任せた。
今日も満員電車に揺られる。
電車のリズムに合わせて、スカートの上からふれられる感触。
私はげんなりとした。
制服が可愛いと評判の学校だから、よくあることだった。
私は勇気を出す。
仕方なく、顔を見られない相手の両手に爪を立てる。
先輩たちは安全ピンを刺すというのだから、可愛いものだ。
「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

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僕は特別に優しい声で嘘をついた。
それは悪あがきのような嘘だった。
「世界で一番、大嫌い」と。
・・・うまく笑えたかな?
君を傷つけてでも、僕は幸せになる。
これが最後の嘘なのだから、君は盛大に泣けばいい。
僕は君以上に泣いたのだから。
道化師のような笑顔の下で、涙を飲みこんできた。
『早く結婚してくれれば良いのに』と思った。
そうすれば高嶺の花だと諦められる。
それなのに彼女ときたら『みんなが結婚出来たら、私の番かな』と笑う。
そんな優しい笑顔を見たら、いつまでたっても未練が残る。
お似合いの相手がいるのだから、さっさと結婚すれば良いのに。
俺は溜息をついた。
立冬を過ぎ、朝日が差しこむまでの時間が長くなった。
目覚まし時計を止めて、ベッドから降りる。
床は冷たく、一気に目が覚める。
窓を開けると、冬の風が室内に入りこむ。
風が髪をさらっていく。
漆黒の空は、まだ夜の時間だろうか。
月のない夜空に星が煌めいていた。
体冷えるほど見惚れていた。
背伸びして胸まであくドレスを着た。
少しでもあなたの目に留まるように。
私の挨拶の番になった。
あなたに会釈する。
あなたは私の肩に手を置く。
「意中の殿方でもいるのかな?」と腰を曲げて、私の耳元でささやく。
それはあなたです、と言えたらどんなに良かっただろう。
私は赤面して頷いた。
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