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「 140文字の物語 」
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雲も浮かばない絶好の夜だった。
月が徐々に欠けていく。
僕は立ちつくしてそれを見守る。
皆既月食の夜だった。
完全に見えない月の代わりに星々が夜空を彩っているようだった。
ほんのひとときの暗闇から月が円く姿を現していく。
欠け始めて、満月に戻るまで僕は華やかな天体ショーを眺めていた。
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正義とはどこにあるものだろうか。
正義のためなら、何をしてもいいのだろうか。
どんな言い訳も通用してしまうのだろうか。
兄が酔った武士に辻斬りされた。
兄は抵抗する暇なく滅多切りにされたという。
私には復讐の機会すら、与えられなかった。
兄を斬った武士というのが尊い立場だったからだ。
いつまでたっても手を繋いでくれない彼。
忘れられない誰かがいるのだろうか。
あなたのあたたかさを感じたいのに、誰かさんに嫉妬してしまう。
我慢の限界がきて「手を繋いで」と言ってしまった。
彼は恥ずかしそうに、指先を両手で包む。
「君を壊してしまいそうだから、これで我慢してくれる?」
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。
生きていかなきゃいけない。
それを捨て去るのは喜びも受ける資格もないということなのだから。
君に話すような事柄じゃなかった。
手探りでスイッチを探す。
ようやく見つけて、部屋の中が明るくなる。
完全に悪酔いだった。
失恋したからといって、いくらなんでも飲みすぎた。
リモコンで寒い部屋を暖める。
ガサゴソと薬箱を漁る。
胃腸薬を見つけたものの飲む気にならない。
でも、明日も仕事だ。
差し支えてはいけないだろう。
どんな天気の日でも写真を撮り続けた。
美しい青空だけではなく、曇り空や、雨の日も、365日間撮り続けた。
父が遺したアルバムの写真に重ねるように。
どんな気持ちで父はシャッターを切っていたのだろう。
決して人を撮らなかった父の風景写真を見つめる。
いつか撮り続ければわかるだろうか。
目を覚まして胸やけを感じた。
常備薬になっている胃腸薬を飲む。
漢方薬にも似た味わいの粉薬はサプリメントと違う。
独特な味が口の中で広がる。
原因は分かっている。
昨日の焼肉パーティーだ。
年甲斐もなくはしゃいで、黒焦げの肉も食べた記憶がある。
一時だったが楽しい時間だった。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は冷静であるように心がけつつ最後の嘘をついた。
それは僕が歩き出すための嘘だった。
弱気にならないための嘘だった。
「世界は希望で溢れている」と。
頼むよ、この強がりをごまかされてくれ。
闇夜のような絶望の中、一歩を踏み出すのだから。
怖がりな僕を知られたくない。
息を吸いこんだ。
僕と君は約束をした。
小指を絡めあって、運命だと信じて。
究極の遠距離恋愛になるとしても、お互いを見つめあった。
僕が日本を発つ時、君は泣いていた。
それでも、唇には笑顔を浮かべていた。
僕は君との約束通り、最果てを目指す。
だから、僕は大きく手を振った。
最果ての約束は絶対に守るよ。
まだまだ「暑い」と文句をつけていた日々だった。
背の高い花が真っ直ぐに太陽を見つめていた。
アスファルトは肌を灼くように熱かった。
季節はまだ『夏』だった。
いつもの帰り道、腕を上げて別れの挨拶をしようとした。
君は上目遣いで、俺の腕をぎゅっと握る。
離れたくない、と瞳が告げていた。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」

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僕は幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
変わらない毎日をくりかえすのが人の人生だと知っている。
それでも、ひととき君の笑顔が戻るのなら、君の手を取って逃げ出そう。
僕の胸の痛みは消えやしないな。
「あなたは綺麗なままでいて」と少女の髪をお母さんが梳く。
丁寧に、優しく、梳かれるのは、少しくすぐったかった。
「お姉ちゃんみたいになっては駄目よ」とお母さんが言う。
髪を明るく染め、コンタクトレンズに変えて、制服のスカートを短く切ったお姉ちゃんは綺麗になったと思うけれども。
少女はテスト結果が張り出された廊下で立ちすくむ。
握った拳は深く、きつく。
解れないことなどないように握り締める。
今回も2位だった。
もちろん1位は白金色の頭髪の少年だった。
一瞬、視線が交差した。
硝子玉のような瞳には感情らしきものが映っていなかった。
次こそは、と少女は胸に誓う。
嵐のような欲望で君を蹂躙する。
いつもの優しいキスも、今は貪るように激しく。
息すら奪ってしまうように、口づけをする。
今夜ばかりは穏やかではいられない。
嵐の前の木々のように君は悲しむ。
『変わってしまったの?』と涙混じりに問う。
ずっと君が貪欲なまでにも欲しかった。
本来の姿だ。
君を置いて出て行った。
どんな責め苦も甘んじて受けよう。
それだけ酷いことをしたのだから。
それなのに君は遠慮がちに、僕の指先に爪を立てるだけだった。
まるで罰ゲームのような、優しい痛み。
君が感じた痛みは、こんなものじゃないだろう。
そして「お帰りなさい」と君は抱きついてきた。
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