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「 140文字の物語 」
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新聞受けから新聞を取りに行った少女が戻ってきた。
大きな瞳をキラキラと輝かせて青年の手を引く。
「虹が出ていましたよ!」と明るく笑う。
それが年頃の少女らしくて、青年は面倒だったが腰を上げた。
青空に大きなアーチが架かっていた。
「もっと、はっきりしていたんですが」少女は脱力する。
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眠り姫のように健やかな眠りについている君。
僕はぎこちなく、その両手をぎゅっと握る。
あたたかな温もりが伝わってくる。
永遠の眠りについているわけではない。
そう分かっていても、怖くなる。
二度と君のまぶたが開かれないかもしれない、と。
だから、君の上下する胸を見て僕は安堵する。
『君のせなか』

君のせなかを見るのが好きだった。
大きくて広い君のせなかに寄りかかるのも好きだった。
君のせなかは私に休みを与えてくれる。
寄りかかると、ホッと安堵した。
君のせなかを独り占めできるのが、とても幸福だった。
お喋りしたことはないけれど、もたれかかった夜は数度ある。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「もう、迷わないよ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

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僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
このままではだめなのは分かっている。
「もう、迷わないよ」と、君に嘘をついた。
・・・まだ泣いちゃだめだ。
君に心配をかけてはいけない。
作り笑顔を浮かべて、君が立ち去るまで待て。
泣くのはそれからだ。
寄せては返す波打ち際を少女は楽し気に歩く。
寒くはないのだろうか、と青年は見守る。
一通り歩いていたのか、少女は青年の元に帰ってきた。
「海が好きなんだな」と青年は言った。
「原始の母ですから。全ての生命は海から生まれてきたんですよ」と少女は微笑んだ。
そんなものかと青年は思った。
家のカレンダーに赤いマジックペンで花丸をつけた記念日。
いつもよりも手のこんだ料理を作って、帰りを待っていた。
いつ帰ってくるだろうか、ドキドキしながら待っていた。
けれども日付が変わっても帰ってこなかった。
気持ちを無視されて目を潤ませる。
こんな関係になっちゃったのだろうか。
「あ、久しぶり」まるで昨日も出会っていたような気軽な挨拶だった。
君が故郷を離れてから、両手の指では足りないほど時間が過ぎたようなのに。
君は全然、変わっていない。
だから私は怒り顔で、両手に爪を立てる。
「変わっていないようだな」と君は苦笑する。
しばらく言葉を交わしてあげない。
僕は立ちあがれないと思った。
もうこれ以上、歩き続けるなんてできないと思った。
座りこんだ地面は冷たかった。
ここで諦めてしまおうか。
そんなことを考えながら、首を横に振った。
君に会うための道だ。
こんなところでへこたれることはできない。
足に力をこめて、僕は再出発をした。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

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僕は、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をついた。
君と別れて歩き出すための嘘だった。
「すべて夢でも構わない」と。
その夢は君と別れてまで叶える価値のあるものなのだろうか。
君の涙に釣られるように、目の奥が熱くなる。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
泣くのは独りでこっそりとする。
運命というのは残酷だ。
アカシックレコードに記されたようにやってくる。
これ以上、君を泣かせることはないのかと思ったら、マシなような気がした。
いつもの時間に病室に顏を出した君に告げる。
「明日死ぬんだってさ、今のうちにお別れの挨拶をしとけって死神に言われた」やっぱり君は泣いた。
「もう一度、好きって言って」少女は懇願する。
両想いになったという実感が欲しかった。
長いこと片想いをしていたから、突然の告白はにわかに信じがたい。
「何度でも言うよ。君が呆れるまで。僕は君が好きだ」と少年は少女の髪を撫でながら言う。
不安を溶かしていくような仕草に胸が高鳴る。
湯船に浸かりながら、今日あったことを振り返る。
一番、驚いたのは昼の散歩のときだった。
折々の花を咲かせていた家が樹木を伐採していた。
その代わり味気のないコンクリートの駐車場になっていた。
もう花々を楽しめないと思ったら、狼狽する。
日常の微かな楽しみだったのに。
ためいきをつく。
空調の効いた部屋は暖かいを通り越して暑い。
まるで夏に巻き戻ってしまったようだ。
まあ、こんな暖かい部屋で食べるアイスは至福なものですが。
君は炬燵の中にもぐってだらんとしていた。
「アイス、食べるか?」俺はとりあえず尋ねてみた。
すると君は上目遣いで、俺の手のひらを触れ合わせる。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
それで君が楽になるのなら、それでいいと思った。
声は上擦っていなかっただろうか。
初めての嘘だったから、君は気がついただろうか。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
幼なじみから鼻先にキスをされた。
「酔ってるな」と僕は冷静に言った。
幼なじみはすでに3缶目の缶チューハイを空にしていた。
幼なじみはクスクスと笑う。
「頬が赤いのも気のせいってことにしてあげる」と言う。
それはこっちの台詞だ。
キスなんてしたのは酔っているせいだってことにしてやる。
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