『別れの詩』
君はいつでも詩集を持ち歩いていた。
暇さえあれば頁をめくっていた。
気になって「どんな内容なの?」と尋ねたことがあった。
君は「ナイショ」と微笑んで、詩集を鞄にしまった。
見せてもらえないと余計に見てみたくなる。
君が席を外した隙に詩集を開く。
別れの詩ばかりだった。
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「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」
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僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは本音とは真逆の嘘だった。
「すべて夢でも構わない」と。
届きそうで手が届かない君への想いだったのかもしれな。
ほんのひとときでいいから、君と現実で恋人同士になれたら良かったのに。
君が嘘だと見破ってくれたらいいのに、と思った。
この度、告白が成功して、お付き合いすることになりました。
今まで異性にからかわれることが多く、恐怖症になりかかっていました。
それなのにあなたは違いました。
けれども近すぎるとまだ怖い、恋人同士になったのだから離れても嫌。
我ながら複雑怪奇な想いをあなたに抱くようになりました。
君は全天の中できらりと輝く一等星。
誰よりも苛烈に、誰よりも煌めく存在だった。
その点、僕は肉眼でギリギリ見える六等星だろう。
街に出たら見えることもないささやかな光を地上に届けるだけだ。
僕も君みたいに注目を浴びる存在になりたい。
誰もが知っている名前になりたい。と思ってしまう。
またどこかで邂逅するさ、と楽観視していた。
黒いフレームの中に納まった顔写真を見つめる。
黒と白の弾幕がピアノ鍵盤のようで、流れている曲も相まって、彼が弾いているような気がした。
もう道で交わることはないのだと思ったら、涙が溢れそうになった。
拳をぎゅっと握りしめる。
永訣の刻だ。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」
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僕は、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と。
誰よりも希望を追い求めているというのに。
偽りの言葉を君に吐き捨てて、君から希望を求める。
胸の痛みは消えやしないな。
僕は、自嘲気味に唇の口角を上げる。
「男と女の間に友情が成立しないなんて嘘だよね」君はカラカラと笑って言う。
「そうだね」と僕は同意した。
「ずっと友だちでいようね」君は僕の首に腕を回す。
「そうだね」と僕は缶ジュースのプルタブに目をやる。
僕にはずっと伝えることのできない一言があった。
『君が好き』と心の中で呟く。
「文化祭のミスコン出てみない?」実行委員で忙しそうな親友に頼まれた。
「私なんかが出る幕じゃないよ」と断る。
それでも、そう言ってくれたことに満更じゃない気分になった。
「お願い!伝統を断ちたくないの」
「ごめんね」と私は謝る。
文化祭当日、ミスコンは行われた。
私の方が可愛かった。
その家には見事な椿が咲いていた。
折々に花を咲かす樹木を植えている家だった。
この間まで鈴なりに山茶花が咲いていたけれども、今は椿だ。
背より高い木を仰ぐ。
ふいに風に揺れた椿が首からポトリと落ちた。
枯れ始める前の慈悲だろうか。
落ちた椿を拾い上げる。
恋情よりも赤い色をしていた。
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「街がキラキラしているね」と言う君の声がキラキラしていた。
人工でできたイルミネーションよりも、君の声の方が僕をドキドキさせる。
駅前には忙しなく足を運ぶ人たち。
花屋さんには赤い花々。
その前で迷っているお兄さんたち。
ジュエリーショップに入っていく恋人たち。
いつか僕も君に贈れるのかな。
「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
・・・泣いたりしないよ。」
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何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
本当は怖くてたまらなかったけれども、君には見せられない。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
・・・泣いたりはしないよ。
少なくとも君の背中が見えなくなるまでは。
それが嘘つきの僕ができることだ。
規則正しい生活から、勉強は捗るものだ。
それを少女は知っていたが眠る時間を削って、教科書に向かった。
誰よりも努力をしていた。
けれども白金色の頭髪の少年に勝てたことはない。
今度のテストこそ、一番初めに名前が書いてありますように。
少女は願う。
かじかむ手をこすりながら頁をめくる。
昼過ぎの電車は空いている。
カタンコトンと音を立ててレールを滑っていく。
二人を連れて電車は走っていく。
あまり外に出ない少女は車窓に釘付けだった。
青年はちょっとしたいじわるをしたくなった。
優しく、少女の両手を指先でなぞる。
「びっくりさせないでください」と少女が青年に向き直る。
君が好きで、嘘をついた。
それだけ僕にとって、君は大切な存在だった。
涙は見たくなかったから、作り笑いを浮かべた。
「今度も、大丈夫だよ」と僕は手を差し出した。
「本当に?」君の声が震えていた。
小指同士を絡めあう。
無事に戻ってくるという約束。
そんな保証はどこにもないと知っていた。
いつもいじわるをしてくる少年が小袋を持ってやって来た。
小袋の色はピンク。
少年らしくないチョイスだ。
無言で押しつけてきた。
少女は恐る恐る小袋を開ける。
カエルが出てくるのか、それとも虫の死骸が出てくるのか。
少女を驚かせるような物が入っているのに違いない。
小袋の中身は飴だった。