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「 140文字の物語 」
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静かな葬儀だった。
今まで華々しく活躍してきた英雄の葬式に訪れる人は少なかった。
国を救ったというのに、もっと弔問客がいても良かったと思った。
喪主として、一人一人に挨拶した。
幼なじみがやって来た。
「泣きたいくせに、意地っ張り」と幼なじみは言った。
そうか僕は泣きたかったのか。
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君の心の片隅にいる人物が知りたい。
それは僕だという自信があるからかもしれない。
君の瞳は雄弁だ。
ふいに振り返ると必ず目線が合った。
そして君は恥ずかしそうに瞳を逸らした。
それだけで充分だろう。
ここは男らしく僕の方から恋の告白をした方がいいのだろうか。
きっと答えは決まっている。
不幸にも喪われた生命に心で泣く。
お医者さんは『年を越すのは難しいですね』と言っていた。
ずっと連れ添ってきた生命が喪われるのは辛いものだった。
正月だというのに、家はしんみりとした雰囲気が漂っていた。
大好きな栗きんとんも、ただ甘いだけで美味しいと思えなかった。
思い出が駆ける。
待つ場所で一番苦手なのは病院だ。
微かな話し声と緊急の病人をストレッチャーで走らせる音。
自分自身が健康でも、付き合いで来るのはあまり楽しくない。
それに良い思い出が一つもない。
「手震えちゃってさ」と君が言った。
嫌々ながらも、君の腕を両手を包む。
自分とは違う体温だ。
「ごめんね」
-
0時ちょうどにスマホが振動した。
『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』と簡素な文面。
送信相手は隣を歩いていた君。
「直接言えばいいんじゃないか?」と言うと「何となく気恥ずかしくて」と君は俯く。
そういうものだろうか。
僕もスマホで返信した。
五文字たして。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
君は僕と違って引き際を知っているし、ずけずけと踏みこんでは来ない。
分かっていたけど嘘が零れた。
君は何も知らないままでいて。
助けて欲しい気持ちを抱えた僕のことなんか。
愛の言葉の一つでも、ささやければ君は僕から離れていかなかったのだろうか。
恋愛ソングのように気障な言葉を君は期待していたのだろうか。
僕には君の気持ちがわからない。
ただ隣を歩く足音がないことが、冬風よりも寒かった。
僕は首をすくめて雑踏の中の一人になる。
君が見当たらない街で。
夜更けだろうと君から電話が着たら、車を飛ばした。
君を迎えに行くために。
だから眠る時はマナーモードにはしなかった。
君からの電話が着ることを期待して。
他の誰にも負けたくない。
君が一番に頼るのは僕であってほしい。
それぐらい君に夢中なんだ。
車の中で君とする他愛のない話が愛おしい。
掃除をしていたら懐かしいタイトルのDVDが出てきた。
どんなの内容だったのか忘れてしまったので、再生をした。
味方だと思った登場人物から、主人公が撃たれる。
それを見て泣いたことを思い出した。
まだ子どもだったと追憶する。
主人公が裏切られる伏線はきちんと張られていた。
それに気づく。
私は貴方の前では素直になれない。
どうしても本音をさらすことができない。
突っ張って、意地を張って、優しくなれない。
深夜遅くに着たメールにもつっけんどんな態度をとってしまった。
次の日に来た貴方は泣き顔で、両手を両手で包む。
そして『迷惑かけてごめん。嫌いにならないで』と言った。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」

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僕は、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
近すぎる距離は、不用意に君を傷つける。
本当は傍にいてほしいのに。
それでは君は幸せになれない。
だから、冷たく突き放すように嘘をついた。
胸の痛みは消えやしないな。
女はグラスを傾けて呟く。
「もう一度、あなたに会いたいな」聞く者はいない。
満ちた月と星が窓枠を飾る。
「あなたのいない生活にも慣れてきたよ。でも、ふと思うんだ」と女はグラスを呷る。
「もし、ここにあなたがいたら、どんなことを言うんだろう?って」写真立ての中で笑う男に向けて言う。
「どんなこともできるのだろう?」と男は嘲る。
「虹の狭間で生まれる宝石を献上しろ」笑い声が耳に響く。
無理難題だった。
伝説でしか語られない宝石をどうやって見つけることができるのだろう。
「宝石を見つけたら、姫を開放してくれるんですよね」と少年は言った。
「二言はない」と男は言う。
向日葵畑でかくれんぼ。
遠く近くで蝉の鳴き声が聞こえる。
じりじりと肌を焼く太陽。
私を探す君の声。
背の高い花は私を完全に隠している。
君の声を頼りにちょっとずつ移動する。
そしてそっと、君の背後から両手を折れんばかりに握る。
その時の君の表情ときたら、夏の記憶の1ページになった。
「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

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僕は、情けなく笑って最後の嘘をついた。
それは悪あがきのような嘘だった。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と。
どんなに求めても、どんなに手を伸ばしても、希望の光は遠すぎた。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
それだけは分かっているから、君に嘘をついた。
希望そのもの君へ。
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