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「 140文字の物語 」
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『あなたは綺麗なままでいて』とお母さんが私の髪を梳く。
お母さんの望み通り、長く伸ばした髪だった。
くしけずった髪をお母さんは三つ編みにしていく。
『お父さんには内緒よ』とお母さんは耳元で囁く。
単身赴任をしているお父さんに、恋人ができたのは知っている。
まるで呪縛のようだった。
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独り波打ち際を歩いていると、ある日のことを思い出す。
もう帰ってこない日々だ。
少女は楽し気に波打ち際を往復していた。
飽きないのかと青年は見守っていた。
もう帰ってこない日常だった。
少女はもう青年の隣にはいない。
帰らない日々はそれが切なくもあり、寂しさでもあり、未練でもあった。
真夜中に少女の部屋に訪れた。
音を立てずに入室すると起きていた少女が悲鳴をあげそうになり、狼狽する。
少年は少女が泣いているのではないかと思って、少女の元へやってきたのだ。
目をこすったのだろうか、少女の目元は赤かった。
忍ぶ恋をしている少年は心配になった。
少女は微かに笑った。
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
本当に、ごめんね。」

------

僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは歩き出すための嘘だった。
「いなくなったりなんてしないよ」と。
自分の夢を叶えるために君を置いて歩き出す。
僕は、すぐさまバレるような嘘をついた。
本当に、ごめんね。
本当の事を言って君が泣くのを見たくないんだ。
だから嘘をついた。
「愛している」唐突に耳元でささやかれた。
くすぐったくて、思わず笑ってしまった。
「そう言って欲しいんでしょ?」と彼と視線が合う。
「あなたが本気じゃないことぐらいお見通しよ」と私は断言した。
すると、彼はつまらなさそうな顔をした。
「愛しているわ」と私は彼の鼻にくちづけをした。
泣きそうな顔をした彼が家までやってきた。
とりあえず上がってもらうことにした。
話はそれからだ。
お気に入りの紅茶を淹れ、お気に入りのティーカップを出す。
「ごめん」と彼は歪んだ紙箱をテーブルの上に置いた。
中には崩れたショートケーキ。
記念日を覚えていてくれたと知り、舞い上がる。
広々とした大地を見て、少女は感嘆する。
これこそ探し求めていた世界であった。
父から譲られた万年筆でメモを取っていく。
少しの過不足もなく。
それを側で見ていた少年は目を細める。
太陽のように光る少女が眩しかったからだ。
少年には、輝かしい目的がない。
未来に向かう姿が羨ましかった。
初々しい花嫁御寮は初夜の作法も知らないらしい。
これから更けていく夜に泣き顔で、自分の手のひらを軽く握る。
困ったことになったと花婿は思う。
これから共に歩んでいくのだから、最初が肝心だ。
花婿は花嫁の手に手を重ねる。
そして、涙が伝う頬にくちづけをする。
「大丈夫だよ」と甘く囁く。
風邪を引くと決まって夕食はカレーになった。
母曰く、栄養的にもベストだそうだ。
他の家ではプリンやリンゴやらを食べるらしいのに。
熱を出して、早退してくると母は楽し気にカレーの仕込みを始めた。
何事も教科書通りにはいかない、ということだろうか。
重い体をベッドに置いた。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
本当に、ごめんね。 」

------

僕はひどくためらいながら最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
君のための嘘ではなかった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
君の前で言った。
本当に、ごめんね。
君と過ごす日々は、かけがえのないものだったのに。
つまらないものにしてしまった。
心の中で謝った。
君は世界を救う聖女だという。
たった一人のかけがえのない人柱だという。
僕の知っている君は、お転婆で、無垢な笑顔を浮かべる普通の少女だった。
僕は君に恋していた。
けれども『ずっと』はない。
人柱になる日が近づいてきた。
僕は君の手を引いて、逃げ出した。
世界ごときに、渡してたまるか。
ひっそりとした空き地で四つ葉のクローバーを探していた。
三つ葉なら見つかるのに四つ葉は見つからない。
どうしても君に渡したいのに。
幸せのシンボルはなかなか見つからないから幸せなのだろうか。
僕は諦めて三つ葉のクローバーを摘んで押し花にした。
それを栞にして渡すと君は喜んでくれた。
冬の瞬く星を無視して、君の横顔に見惚れていた。
月のない夜に燦然と輝く星よりも、君の方が綺麗だった。
ふいに君が僕のほうを見る。
僕の視線に気がついてしまったのだろうか。
言い訳台詞を探していると、君ははにかむ。
淡い微笑みに心臓が飛び跳ねた。
「星が綺麗だね」君は優しい声で言った。
今日は二人が出会った記念日。
君はすっかりと忘れている。
そんな君を嫌いになれなくて、ただのデートになってしまっても良かった。
僕が覚えていれば良いだけなのだから。
さりげなく、自分の両手のひらに指を絡める。
ぎゅっと握った指先は、君との心の距離。
まだ僕は君の一番にしてもらえない。
「君のことを愛している」君の耳元でささやいた。
「冗談ばっかり」と君はくすくすと笑う。
いつもの悪戯だと思っているのだろうか。
本気の言葉だったのに。
大きな瞳を覗きこめば、まったく警戒心のない光が宿っていた。
だから、その頬にキスをした。
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