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「 140文字の物語 」
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「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

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僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
神様どうか、お願いです。
君にこの震えが伝わらないようにしてください。
嘘つきの僕がつく最後の嘘なのです。
それは悪あがきのような嘘だった。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
僕は笑顔で見送った。
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君はずっと、こぶしを握り締めている。
痛くはないのだろうか。
君はずっと、唇をかみしめている。
痛くはないのだろうか。
君はずっと、棺を見つめている。
泣きたくても泣けないのだ。
だから、僕は君の手を包みこむ。
そして「君のかわりに、泣いてあげる」と言った。
僕は哀しい君のために泣いた。
私は空気ではない。
常に貴方の傍に入れるはずがない。
貴方を包みこんであげられるわけではない。
当たり前は、当たり前ではないのだ。
酸素だけでは生きていけるはずがない。
多すぎる酸素は貴方を苦しめるだろう。
けれども、少なすぎる酸素では酸欠を起こすだろう。
空気は貴方に合わせている。
君は泣き顔で、僕の両手を指先でなぞる。
まるで幽霊か、はたまた透明人間を相手にするかなように。
そして、ひときわ大きな怪我に君の指が止まった。
「痛かった?」君が問う。
「もう、昔のことだよ。痕が残っているだけだ」と僕は答えた。
「こんな大きな怪我をしたの」と君は息を長く吐き出す。
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
これが夢なら、とっておきの悪夢だろう。
それは現状打破のための嘘だった。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と、僕は君に淡々と告げた。
悪夢に囚われるのは僕ひとりで充分だった。
本音を仕舞い込んだまま、君とは別れる。
幸せだったよ。
真っ直ぐ続く道路に引かれた車高通行帯のように、君と僕との境界線は記されていた。
僕は守らなければいけない境界線を乗り越えたくなった。
君は生まれたての子犬のような瞳をして僕を見つめる。
まるで許しを請うように。
僕の胸の内にあった加虐性が顔をもたげる。
まずは君にふれるところから。
「どうしてお父さんは、お母さんを選んだの?」私は疑問に思っていたことを尋ねた。
家族団欒の夕食時だった。
沈黙が漂ったのが幼い私にもわかった。
この場を取りつくろわなければ、と話題を探すが見つからない。
それに、どうしても知りたかったのだ。
「心が綺麗だったからだよ」と父は言った。
生まれ持った立場というものがあった。
私のようなアメジスト色の瞳を持った者は、シトリン色の瞳を持った主に隷属することが定められていた。
何をされても逆らってはいけない。
そんな人権無視がまかり通る世界だった。
生まれ変わるのならマシな世界に生まれ変わりたい。
黙って手を握りしめる。
嫌々連れてこられたお見合い現場。
うわべだけの会話が交わされる。
私は俯いて時間が経つのを待っていた。
「お庭を案内して差し上げなさい」と言われて、追い出された。
私の身代金はいくらぐらいになるのだろうか。
「おい。挨拶もまともにできないのか」と無理矢理、指先に触れる。
顔を上げた。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「全部忘れていいよ」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

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僕は、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
「全部忘れていいよ」と、僕は言った。
「暇つぶしに付き合っていただけだから」と笑顔を浮かべる。
「忘れない!だって、好きな気持ちは変わらないもの」と君は言った。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。
突然、今の幸福が尊いものだと胸に過った。
この瞬間を共にいられることがどれほど素晴らしいものだと知らされた。
体を巡る液体が全て涙に変わってしまったのだろうか。
涙が溢れて止まらなくなった。
それに貴方はぎょっとする。
「どうしたの?」と尋ねる。
「幸せすぎて泣きたくなるの」と言う。
少しは大人っぽく見えるだろうか。
いつもよりほんの少しだけ赤いリップクリームを唇に乗せる。
まだルージュが似合う年頃ではない。
街を歩いていたら、兄妹と勘違いされるだろうか。
私の体の中の懐中時計はゆっくりと秒針が時を刻んでいく。
少しでも早く大人になりたいのにその進みは焦らせる。
「デートでも行くの?」と姉が訊いてきた。
めんどくさい相手につかまってしまったと思った。
頷いたら嘲笑されるだろうか。
姉は小瓶を一滴、私の頭上に零した。
甘い香りが広がった。
「香水は女の武器よ」と姉は言った。
それから私を抱きしめる。
「あなたにお似合いだから、この香水をあげる」
思い出がよみがえる。
幼馴染と初めて遊びに行った遊園地。
予約制だというのに、思ったよりも混雑していた。
「はぐれないように」と幼馴染が手を差し伸ばした。
私は仕方なく、指にしがみついた。
思えば子ども扱いされて恥ずかしかったのだろう。
今も幼馴染は手を差し伸ばす。
それを握り締める。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

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僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
揺れる天秤の片一方には君。
残る片一方には空虚だった。
「欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」と。
最後の嘘にしては上出来だろう。
これで君はためらなく僕から離れられる。
・・・うまく笑えたかな?
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