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「 140文字の物語 」
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向かい側から、よたよたと蛇行運転をするドラックが走ってきた。
運転手はまともなのだろうか。
それぐらい揺れている。
無理矢理、隣を歩く彼女の両手を軽く握る。
「え?」驚く彼女を自分の傍に引き寄せる。
そこで彼女もトラックの存在に気がついた。
荷台を揺らしながら、トラックは通り過ぎた。
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「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

------

僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
本当になったら嬉しいけれども、そんなことはない。
分かっていて君に嘘をついた。
「すぐに追いつくから、先に行っていて」と。
モンスターの足音は迫っていた。
君よ、これがどうか嘘だと気づかないで。
君と最果てまで一緒にいると約束したね。
それは嘘ではないけれども、君が先に彼岸に行くとは思わなかったよ。
僕は此岸で、毎年、君が帰ってくるのを待っている。
あの日交わした約束を破った君を恨む。
どうして僕も一緒に連れて行ってくれなかったんだい。
一緒に最果ての先まで行きたかったよ。
いくら街灯があると言っても、この時期は夜になるのが早い。
切れかかった電球がチカチカと光っていた。
それが不安をあおる。
まるでホラーゲームの登場人物になってしまったようだ。
月でも出ていれば、少しはマシなのだろうが、新月の今日は期待ができない。
早く夜が短くなればいい、と思った。
「私はあなたの純粋さの化身」と唐突に言われた。
身も知らずな少女は道中で言うのだから、何かの勧誘かと思った。
「君は、どこから来たの?」僕はできるだけ優しい声で尋ねた。
「あなたの心の中からです」少女は言った。
ますますあやしい。
「僕の純粋さなら、もっと霞むんだと思うんだけど」
海に来た君は涙を流した。
寄せては返す波打ち際に立って、一人泣いていた。
僕はいつになったら泣き止むのだろう、と思いながら眺めていた。
波の音と君の涙がシンクロする。
君は「ありがとう」と泣き顔で、僕の手のひらを包む。
あたたかな手に包まれて「別に」と僕はそっけなく言ってしまった。
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
君だけは逃がしたい。
信じてもいない神に祈りを捧げた。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、僕は笑顔で言った。
不安げな表情をして君は道の先を進む。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
そうしたら最期まで一緒だ。
街灯に群がる蛾のように、男たちは私に群がる。
一睡の夢を見るのには、ちょうどよく見えるのかもしれない。
私がどんな女かも知らないで、仮初の愛の言葉をささやく。
私は嘘を吐きたくて、真っ赤なルージュを唇にのせる。
永遠が欲しいと思いながら、蛾たちの群れの中で夜の自由さを満喫する。
煙草を始めたのは、二十歳の成人式からだった。
振袖を着て、華やいでいる同級生を見て、羨ましくなったからだった。
こちらといえば毛玉のついたセーターにスキニーという姿だった。
それに自分だけ二次会の案内が来なかった。
それだけのことかもしれないけれど、きっかけには充分だったはずだ。
昏々と眠っていたようだ。
青年は寝癖をつけたままダイニングに降りた。
ダイニングでは少女と、すっかり冷めた朝食が待っていた。
この罪をどう許されればいいのだろうか。
一緒に食事をとるという約束を守ることができなかった。
少女は沈黙を保って、椅子に座っているのが悲しかった。
「ごめん」
デパートの屋上から見る景色は光がさざめき、まるで生き物のようだった。
僕と君と二人きり、冷たい風にさらされている。
君は目を逸らしつつ、僕の両手に指を絡める。
君の不安が伝わってくるようだった。
「やめておく?」と僕が尋ねると君は首を横に振った。
僕たちは手を繋いだまま踏み出した。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、ひどくためらいながら最後の嘘をついた。
それは歩き出すための嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」
君に誓うように言った。
本当はすでにあきらめているのに。
こんな酷い嘘は、二度と吐けない。
君が安心する笑顔を見たいだけだった。
そのために嘘を吐いた。
嘘はこれで最後にするよ。
君を想うと長い夜が明けてしまうほどだった。
今日も空が白み始めるのを見てしまった。
この気持ちは君にどこまで届いている?
ぐっすりと眠っているだろう君に問いかけたくなる。
スマホを見て、ためいきをつく。
君から『お休みなさい』というスタンプを送られてから、ずいぶんな時間が経った。
「僕は君が好きだ」と告白した。
崖から落ちるような気分で、心拍数は上昇中だ。
「私もあなたが好きよ」と君はニッコリ笑顔で言った。
「だって、一番の友だちだもの」と君は続ける。
違う、そうじゃない。
好きな種類が違うのだ。
それを説明するのは気恥ずかしかった。
告白のやり直しをしたい。
黒板を見ていら、緊迫した雰囲気の放送委員会の放送が流れた。
体育館に集合させられた。
なんのことはない。
非常訓練だ。
体育館は寒く、早くあたたかい教室に戻りたいと思ってしまう。
校長先生の話は思いのほか長くて、それを我慢する。
誰か貧血で倒れないかな、と不謹慎なことを考えてしまう。
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