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「 140文字の物語 」
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「私、怒っているんだからね!」君が言う。
「ごめん」と僕は謝る。
時刻は、そろそろ日付が変わる頃。
それなのに、君は僕のために飛び出してきてくれた。
それだけ不安にさせてしまったことに。
君は怒り顔で、僕の両手のひらを指先でなぞる。
まるで、僕というような存在の輪郭を確かめるように。
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誕生日に神になる儀式を行う。
代々受け継がれてきた神聖な儀式だ。
生まれた日時に合わせて、家の裏にある滝で禊を行うところからスタートだ。
神になったら、もう人間には戻れない。
だから誕生日を迎える前日、私は家を出た。
愛する人と手と手を取り合って見知らぬ地へと向かうのだ。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

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僕は、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
思ってもみたことのない嘘だった。
「世界は希望で溢れている」と。
それが本当だったら、どんなに良かったのだろう。
君を傷つけるものが何ひとつない。
幸福な世界だろう。
どうか嘘だと気づかないで。
あなたは茨の道を歩いていく。
無数の擦り傷ができると分かっているのに、その道を選んでいく。
その姿は尊いのかもしれないけれど、痛々しい。
だからお節介かもしれないけれど、私は言った。
「なんで幸せになってくれないの?」
「誰かが通らなくてはいけない道なら代わりたいんだ」と笑った。
荒廃した城を木の葉が染める。
まるで城を守るために流した兵士たちの血のように、赤く赤く。
その姿は絶景だった。
栄華を誇った城も、木の葉のように朽ちていくのを待っている。
やがて、歴史の渦に巻きこまれて誰も知らない城になるだろう。
それが時間というものだ。
踵を返して、元の道に戻る。
挨拶もそこそこ君は、泣きそうになりながら、腕を触れ合わせる。
まるで生きていることを確認するように、何度か君と僕の腕を触れ合わせる。
「痛くない?」君が問う。
その声がすでに涙声だ。
「怪我ならすっかりと治ったよ」と僕は君を安心させるように微笑んだ。
「良かったぁ」と君は笑った。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
かけがえのない君の前で言った。
これが本音なら、楽だったのに。
今も君を想って僕は、身を焦がしている。
君がいる毎日は、くだらないことが一つもない。
友だちとランチに行った。
久しぶりの外食に開放感があった。
「こっちのオムライスも美味しいわよ」と向かい側の友だちが言った。
「一口ちょうだい」と食いしん坊な私は言う。
そして雛鳥のように口を開いた。
皿ごと渡してきた友だちは苦笑する。
失敗したことに気づく。
習慣ほど怖いものはない。
生まれて初めて好きな人ができた。
お相手はずっと歳上の男の人。
彼から見たら私は殻を被ったひよこにしか見えないだろう。
それが分かったから想いは胸に秘めて、伝えないようにと思っていた。
たった一つ不安があるとすれば、彼にお似合いの女性が現れること。
きっと彼はそちらになびくだろう。
古傷が疼く。
傷自体は神剣・神楽のおかげもあって、痕跡すらないほど、綺麗に治っている。
ただ時折、思い出すように同胞から受けた傷だったものが痛む。
「どうかしましたか?」少女が問う。
どう言い訳をしようかと口唇を開く。
少女の顔を曇らせたくない。
「なんでもないよ」と青年は答えた。
「今日は付き合ってもらうわよ」君は大袈裟に言う。
「ただの買い出しだろう」と僕はぼやいた。
「違うわよ。二人っきりなのだからデートよ」君は高らかに言う。
「へいへい」と僕は適当な返事をした。
すると君は無理矢理、僕の両手を折れんばかりに握る。
「痛いな」と抗議すると「そんなに嫌?」
「iotuは、まるでいつも通りに最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「もう、迷わないよ」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、まるでいつも通りに最後の嘘をついた。
息をするかのように嘘を重ねてきた。
理由は様々だった。
けれども最後の嘘にしようと思う。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「もう、迷わないよ。今までありがとう」と。
もう決めたことなんだ。
本当に、ごめんね。
いつまでも優しい君でいて。
「お願いがあるの」ひどく切羽詰まった声で君は言う。
場所はビルの屋上。
揃えた靴の上には遺書。
もう最期の時だったから、君の言葉を聞く気になった。
「私の為だけに生きて」君は言った。
その表情は僕よりも真剣だった。
「僕は何もかもに疲れたんだ」と僕は告げる。
一歩踏み出せば奈落の底だ。
「おめでとう」白金色の頭髪の少年が言った。
祝福するとはどういうつもりなのだろうか。
少女はテスト結果を張り出された廊下に向かう。
「君の頑張りが評価されたね」と言うと白金色の頭髪の少年は教室に向かっていた。
少女は張り紙を仰ぐ。
同率一位だった。
いじわるを言われたんだと気がつく。
色鉛筆を取り出して、白紙の画用紙に色を重ねる。
思うままに描いていたら、自分の今の気持ちを表したかのような出来栄えになった。
暗くて、濁っていて、汚い。
色鉛筆はこんなにも綺麗な色が揃っているというのに。
まるで鎖をかけられた罪人が最期に描いたような絵ができた。
ためいきを零した。
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