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「 140文字の物語 」
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「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは独りでも歩き出すための嘘だった。
君を置いて、未来へと向かうための嘘だった。
不安げな瞳で僕を見つめる君に微笑んだ。
「ずっと君と一緒だよ」と。
すぐにバレる嘘をついた。
君よ、いっそ笑い飛ばしておくれよ。
『サヨナラ』も言えない僕に。
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駅前でビラ配りをしている若い女性たちがいた。
青年は少女の手を取って、急ぎ足で通り抜ける。
「無視してもいいんですか?」と少女が尋ねた。
「新興宗教のビラ配りだ。貰ったらセミナーの会場まで連れて行かれる」青年は言った。
「そういうものもあるんですね」世間知らずの少女は納得した。
太陽がの昇るところが見たい、と君が言った。
どこで見たい?、と君に甘い僕が尋ねた。
ためらいがちに君は、海が見えるところ、と言った。
暗闇の始発に乗って、海が見える場所までやってきた。
まだ少し日の出には早いようだった。
波を見る。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の指を両手で包む。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「今とても幸せだよ」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

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僕は、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
これ以上、悪辣な嘘を思いつくことはできないだろう。
涙を飲みこんで、顔には作り笑い。
「今とても幸せだよ」と。
君に向かってささやく。
どうか嘘だと気がつかないで。
かりそめでも僕に幸せを感じさせて。
他には何もいらない。
これ以上、望んではいけない。
願うのはただ一つの永遠。
君とこれから先の道を歩いていくという約束。
死が二人を分とうとも、プラチナの指輪が保証してくれる愛。
それを手にすることができるのなら、他には祈らない。
どうか、お願いです。
永遠をお与えください。
神に祈る。
今年は桜が咲いても寂しそうだった。
白いソメイヨシノの花弁がほろほろと散る。
缶ビール片手に桜の並木道を歩く。
独りでの花見だった。
はたから見たら気持ち悪いだろうか。
それとも、ただの酔っぱらいに片付けられるだろうか。
顔を上げて仰げば、人の生命のように儚い桜が道路へ落ちていく。
春らしく買ったパステルカラーの靴。
ウィンドウで見た時から、欲しいと思っていたのだ。
そのために残業をいとわずに、率先して行った。
いよいよ給料日、祈るようにお金をおろして靴屋さんに向かった。
人気の商品だったらしく最後の一つだった。
それを履いて歩く帰り道。
幸運に恵まれている。
ずっと楽しみにしていた旅行だ。
新幹線を降り、改札口を出ると手を差し伸ばされた。
じっと見ていると「はぐれたら困るだろう」とあなたは言った。
「ただでさえ、土地勘のないところで、迷子体質なんだから」と続ける。
私は嫌々ながらも、両手を触れ合わせる。
なんか子どもっぽくて嫌だった。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「君の全部を忘れたいんだ」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
真っ直ぐに君の瞳を見ていられなかった。
嘘だとバレてしまうから。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「君の全部を忘れたいんだ」と。
君はどんな顔をしているのだろう。
本当に、ごめんね。
未来へと向かって行くのだから荷物は軽い方がいいだろう。
あなたは物憂げな瞳で私を見た。
何度もくりかえしてきた恋の終焉が訪れる。
私はこれからの未来を覚悟をする。
「愛してる愛してる、愛していたかった」あなたは少しかすれた声でささやいた。
優しいあなたは別れの言葉まで優しい。
笑顔で『サヨナラ』ができそうだった。
私も愛していたかった。
「私の扱い方をそろそろ覚えてくれた?」自称ツンデレな彼女が言った。
君は自分の心に素直になれない、寂しがり屋な女の子。
そんなことを言えば怒りを買うだろう。
「だいたいね」と代わる言葉を告げた。
「頼りないわね」君は目を三角にして言った。
我儘をいうまでのカウントダウンが始まった。
「君の瞳はダイヤモンドみたいだね」事実だったから、僕は恥ずかしく思わずに言った。
けれども君にとっては当たり前ではなかったようだ。
白い頬が薄紅色に染まっていく。
「こんな公衆の面前で言わないでよ」と君は言った。
「だったら、二人きりの時ならいいの?」と僕は問う。
「許さないわよ」
子どもたちが走らない公園。
日向ぼっこをする夫婦がいない公園。
感染症は世界を変えてしまった。
誰もが家にこもり、うずくまっている。
そんな中、僕たちは公園のベンチで並んで座っていた。
何故か、君は怒り顔で、僕の指先に爪を立てた。
それは子猫のように、わずかな痛みだったから笑った。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、どうしようも泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
それでも、守れるものがあるのなら、そのために嘘をつくのは難しくはなかった。
「世界は希望で溢れている」と。
俯く君のために言葉を紡いだ。
僕の本音は仕舞い込んだまま。
君の前で泣いたりはしないよ。
どんな自分も演じることができる。
そう少女は思っていた。
実際、180度違う役柄も演じてきた。
「どんな私がお好みで?」少女は言った。
少年は「ありのままの君が一番好き」と微笑んだ。
「意外とつまらないことを言うのね」と少女はすねたように言う。
少女は恋愛遊戯をしたかったのだろう。
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