彼が問題行動を起こすと、付き合っている私が呼び出される。
先生たちも彼の行動パターンが分からないらしい。
幼稚園児のように無邪気で、残酷なだけなのに。
先生に呼び出される度に、ためいきをついてしまう。
こんな君に恋した私が悪いんですが。
それでも納得がいかない。
自分のことは自分で。
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氷が溶けて、グラスは水滴をまとう。
綺麗に磨かれたテーブルの上に水痕が残る。
この調子だと、グラスの中身であるアイスティーは味が薄くなっているだろう。
家のように、紅茶で作った氷が入っているわけじゃない。
仕方がないことだと思っても、苛立つ。
溶けた氷も、無言なあなたも、沈黙も。
君はさっきから怒っている。
鈍感な僕でもわかるぐらいに、君は怒っている。
デートに公園というのが悪かったのだろうか。
天気も良いし、木漏れ日の当たるベンチは素敵なものだと思ったのだけれども。
君は怒り顔で、僕の腕に指を絡める。
力いっぱいのそれが不満を教えてくる。
僕はすっかり悩む。
「iotuは、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「全部忘れていいよ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」
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僕は、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「全部忘れてくれていいよ」と。
君と一緒にいた思い出も、君に語った未来も、すべて忘れてほしい。
僕は嘘吐きだから、君と離れていく今になって、僕は怖くなったのだ。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。
学校でスマホを使うのは禁止されていた。
学校から離れて駅前まで続く道でも使用を禁止されていた。
だから学校内ではメモ帳のような手紙を手渡すのが流行っていた。
アナログのコミュニケーションしか持ち合わせていない僕らには、それが精一杯。
会話ができない分、手書きの手紙が増えていく。
張り出された白い紙に、自分の番号を探す。
「見つかった?」一緒に受験した親友が尋ねてきた。
私は不安になって泣きたい気持ちになる。
「えーと、番号は?見せて」親友が余裕なのは、自分の受験番号を見つけていたからだろう。
白い紙に無機質に並べられた番号の並びから見つけた。
笑顔になる。
パソコンで月食していく映像を眺めていた。
すると、飼い猫が膝に乗った。
飼い主がずっと同じ姿勢でいることに疑問を持ったのかもしれない。
「お前も月食を見るかい?」膝の上の猫を撫でる。猫はゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らす。
「一緒に見ようか」液晶画面に視線を戻す。
丸い月は欠けてきた。
優しく、君の指先を軽く握る。
悪ふざけのつもりだった。
君が僕と手を繋ぐことを嫌っていることは知っている。
だから、ちょっとしたいたずらのつもりだった。
それなのに君は無言で頬をリンゴのように真っ赤にする。
調子が狂った僕は思わず「ごめん」と謝った。
君は言葉を発せず、首を横に振る。
ホラー映画をクッションを抱えて観ていた。
リビングを通り過ぎた兄が笑った。
どうせ造り物だろう、と言うつもりだろう。
それでもスリルがあって、私には楽しみだ。
「殺人鬼よりも、彗星の方が人殺しだよ」と兄は告げた。
「考えてもみろ、殺した人間の桁が違う」理数系の兄が言った。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」
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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
「まだ一人で生きていける」と。
寄りかかりながら生きている僕は君に告げた。
君がいなければ寂しくて死んでしまいたい、と思うぐらい愛しているのに。
本音は仕舞い込んだまま。
僕は何でもないように、君に言った。
大人たちがいう『意味』なんてどうでもいい。
自分たちさえ気持ち良ければそれでいい。
二つが一つになるのが悪いなら、どうして私は生まれてきたの?
私たちはそれを真似しているだけだよ。
それなのに、大人たちは良い顔をしない。
これでも真剣に愛しているのよ。
たとえ、ひとときのものでも。
美容室に行き、髪型を相談する。
いつものようにオーダーすると雑誌を手渡された。
白髪が多かったせいだろうか。
実年齢よりも年配の女性が読む雑誌だった。
こういう時、時間は冷酷だと思った。
若返って見えるかは、美容師の腕に前に託す。
もう『女』として見られないのだろうか。
不安になった。
バカップルと呼ばれてもかまわない。
僕はたった一つの恋を大切にしたいのだ。
君自身を宝物のように愛でていたのだ。
恋に憶病な君に「お嬢さん、お手をどうぞ」と僕が言う。
君の顔が少し和らぐ。
優しく、差し出された手の指先を握る。
君の手が微かに震えるのは、それだけ傷ついてきた証だ。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
嘘をつくのに神様に祈るなんて欺瞞だ。
それでも祈った。
それは歩き出すための嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
君に伝えるように一言一言はっきりと言った。
頼むよ、ごまかされてください。
君の隣に幸せはいつもあったということを。
星屑が大量に墜ちてくる夜だった。
月はなく、海の中は暗闇だった。
珊瑚を密漁する不届き者が現れるような夜だった。
海は月の満ち欠けに影響され、海から生まれた人の体も例外ではなかった。
星屑が不届き者を照らしてくれる。
珊瑚を盗んでいくなら、そのまま溺れてしまえばいいのに。