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「 140文字の物語 」
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秋は夕暮れ、というように秋の夕暮れには何かが詰まっている。
切なくなるような、寂しくなるような、もうどこにも行けないような。
沈んでいく夕陽には宝石のように詰まっている。
それが胸を支配する。
墜ちていく鳥のような夕暮れに喉を詰まらせた。
ポロポロ零れる泣き顔で、指先を軽く握る。
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お祝い事には赤飯が欠かせない。
少し上等なお茶を用意しながら準備していた。
すると「オムライスが食べたい」と今日の主役が言う。
玉ねぎを刻みながら、これは玉ねぎのせいなんだって、言い訳しながら涙を流す。
好きなものが食べられる方が幸せに決まっている。
赤飯はお昼ごはんだ。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、幼子を慰めるように最後の嘘をついた。
それは前へ進むための嘘だった。
いつまでも小さな手を繋いでいられれば良かったのに、そうはいかない。
「いなくなったりしないよ」と。残酷な嘘をついた。
僕が前へ進むためには、君は重たすぎた。
嘘だと見破ってくれたらいいのに、そう願った。
「私ね」目も合わせずに彼女が切り出した。
カフェは活気にあふれていて、危うく聞き落とすところだった。
「あなたの一番心臓に悪い存在になりたいの」と目を半ば伏せて彼女は言った。
そこには危うい色香が漂う。
「もう、なってるよ」僕は言った。彼女は顔を上げて、僕の目を見て微笑んだ。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
もう、覚悟は決めたんだ。」

------

僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
君には伝わらないことを神に願った。
それは本音とは真逆の嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」と。
夢を追いかげ続けるのに疲れてしまった。
もう、覚悟は決めたんだ。
夢を見て旅立つ君と一緒にいられなくても、かまわない。
ため息を噛み殺す。
誕生日に年に数だけ、黄色いチューリップを貰った。
「誕生日おめでとう」と貴方は笑顔で言った。
黄色いチューリップは薫り高く、ハッとするほど鮮やかだった。
けれども私は純粋に喜べなかった。
花言葉なんて、あなたは知らないんでしょうね。
知っていたら選ばなかったはずだ。
礼の言葉を言う。
誰も彼も夢中になってしまうお年頃。
恋愛というのを味わう背格好になった。
背丈だけが伸びて、大人と変わらない。
けれども、その心はまだ柔らかで、繊細だった。
想うだけでは物足りない。手を繋ぎたい。さらに先のステップを踏みたい。
そんな年頃に二人はなった。
大人の見ていないところで。
黒に包まれた未亡人は歓喜する。
分からないように深々と下したヴェールの中で。
これで、晴れて自由の身だ。
二度目の結婚はないだろう。
夫は穏やかな人だったけれども、物足りないところがあった。
政略結婚の末だから、文句は言えなかったが。
初恋の青年には霞む。
誰にも言えない秘密だった。
青年が微睡みを満喫していたら、少女がベッドの上に登る。
そして「もう昼ですよ。起きないんですか?」と青年の胴を揺する。
「疲れているんだ」青年は半分眠りながら答えた。
すると少女は軽々しく、青年の指先に爪を立てる。
まるで力加減の分からない子猫のように。
青年は苦笑して目を開けた。
今日はパジャマパーティー。
集めた布団の上に色とりどりのお菓子が並ぶ。
これは美味しい、これはいまいち、と勝手な感想をつけながら笑いあう。
私は飲み物係だったからサイダーを持ってきた。
そこに軽い振動。持っていたペットボトルを落としそうになる。
無事だったからいいものを。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

------

僕は、ひどくためらいながら最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
嘘をつくのが苦手だからためらうのか、君を欺くのが苦手だからためらうのか分からない。
「すべては夢でも構わない」と。
これが本音なら、楽だったのに。
君とみる夢は、どんなにか素晴らしいものだろう。夢想する。
まるでコンビニの気軽さのように、同胞は神剣・神楽を狙ってくる。
まるで己の命もコンビニで支払えるように軽々しかった。
青年にはたまったものじゃない。
いくら神剣・神楽に生命を回復する力があるといっても、微々たるものだ。
望まない戦場に立たされたことに決意をしなければならない。
少女の願いで、海へ来るのは何度目だろうか。
寄せては返すの波音を子守唄にうつらうつらとする。
全ての生き物は海から生まれた、という。
だから、少女も青年も海から生まれてきたのだろう。
懐かしがって、海へ行きたくなるのだろう。
少女は嬉しそうに、青年の腕を握りしめる。
波打ち際に誘う。
「iotuは、穏やかに微笑んで最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

------

僕は、穏やかに微笑んで最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
別れゆく君を見送るための最初の嘘だった。
「まだ一人で生きていける」と。
これが本音だったら、楽だったのに。
君がいない世界で、僕は何度溜息を噛み殺していくのだろう。
君のいない世界で僕は作り笑いをするのだろう。
桜の下で君は立ち止まった。
ほろりひらりと花弁が君の頭に乗る。
僕も黙って、桜を見上げる。
こうして、君と見上げる桜は何度目だろうか。
沈黙の中で考える。
桜は花期が短いから、見頃を見逃すことがままあった。
今年はどうにか、間に合ったようだ。
散る桜が君の頭に乗ってベールのようだった。
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