君が満面の笑みを浮かべながら、僕の指を軽く握る。
表情と裏腹に、ささやかな行動。
そんな君が僕にはたまらなく可愛くって、しっかりと君の指を握る。
君は恥ずかしそうに、視線を逸らした。
周りから、バカップルといわれてもかまわない。
だって、僕は君のことがこんなにも好きなんだから。
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「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
僕には君は重すぎた。
非力な僕では君を支えきれない。
本当は力になりたかったけれども。
「君にもらったものは全部返す」と。
温もり、想い出も、愛し合った日々も。
頼むよ、稚拙な嘘にごまかされてください。
「私たちに境界線なんていらない。そんな言葉で離れいかないで」君はまなじりに涙をためて言った。
それがあまりに綺麗だったから、手を伸ばしてしまった。
はらりと涙が散った。
ふれた涙はあたたかかった。
君を守るための境界線を破ってしまった。
ふれたら、離したくなくなる、と分かっていた。
並んでいた足音が一つになった。
少女は不思議に思って立ち止まる。
少年が遠い目をして、夕焼けを眺めていた。
沈みゆく太陽が空というスクリーンを赤く染めていた。
いつか見た夕焼けのようで、初めて見る夕焼けのようで、どこか胸に詰まるような光景だった。
少年の輪郭も、どこか淡かった。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
幸せでも、幸いでもなく、全き幸福を祈った。
「まだ一人で生きていける」と。
君なしでは、夜を越えるのも危うい僕にとって、最大級の嘘だった。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
最後だから言えた嘘だった。
君の涙の味は夢見るように甘かった。
僕のために零された涙だったから、よりいっそう甘美なものだった。
ぺろりと君の濡れた頬を舐める。
君はびっくりしたかのように、僕から距離を取った。
それでいい。
君の涙の味を知っているのは、僕だけでいい。
他の誰かが知る必要はないのだから。
僕は笑う。
少女は、自由課題で作ったミニチュアの家に悦が入る。
これなら、白金色の頭髪の少年に勝てるのではないか、と思った。
眠さを我慢して、ひとつひとつ丁寧に作った。
クラスメイト達から賞賛の言葉がもれる。
けれども、それは少年がやってくるまでだった。
同じミニチュアだったが、軍隊だった。
怖いものが見たいと君が言った。
だから僕はできるだけ怖いものを探した。
そしてその念願、叶って君を誘う日がきた。
雷鳴が轟く日だった。
それだけでも迫力満点だったが、廃墟へと案内する。
幽霊が出るといういわくつきな建物だ。
それを君にも伝える。
「どう?」と僕は照れる。
君は無言だった。
「これで何度目の遅刻?」待ち合わせの時刻に間に合わなかった僕に、君が怒る。
当然だろう。
「今日という今日は許さないんだから」君は言葉を区切った。
「罰ゲームとして、一日手を繋いでいてもらいます」と目を逸らしつつ、君は言った。
僕は柔らかな君の指を軽く握る。
嬉しい罰ゲームだった。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
もう、覚悟は決めたんだ。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
いつまでも幸せを探している君の肩を抱いた。
君は静かに涙を零した。
それが綺麗で、心にしまっておきたい、と思った。
僕はもう、覚悟を決めたんだ。
君と不幸せになる。
薄紅色の桜の下、別れを告げた恋人の背を見送った。
迷いもなく真っ直ぐ進む姿を見て、国のためとはどんなものだろうか。
そんなことを思った。
振り返ることもないだろうから、声を殺して涙を流した。
にじむ背中を追いかけていきたい、と思った。
国のためではなく、私のために生きてほしかった。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
・・・どうしようもないな。」
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僕は、君から目をそらしながら最後の嘘をついた。
君と視線を合わしたら、嘘だと分かってしまうだろうから。
それは現状打破のための嘘だった。
「君が居なくても何も変わらないさ」と。
すぐにバレるような嘘だった。
本当に僕は・・・どうしようもないな。
こんな嘘が最後の嘘だなんて恥ずかしい。
短冊を渡されて困った。
願い事を書くのに、途惑ってしまったからだ。
自分が願っていることを正直に書けばいい。
そう言われてさらに困った。
渋々ながら、筆を取る。
『君が僕以外の誰かを好きになりませんように。好きになった奴が死にますように』
それを君は見て「なんて物騒な願い事」と言う。
「どうしてそんなに優しくしてくれるの?」君が尋ねた。
「意味なんてないよ。したいからしているだけ」と僕は答えた。
回答はお気に召さなかったようだ。
君は不満そうな顔をする。
どう答えれば正解だったのだろうか。
僕は、君に格別親切にしたつもりはない。
自然に優しくしているだけだった。
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」
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僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
幸せになりたがる君に告げた。
これで僕たちは心の迷子になる。
幸せはいつも傍にあるというのに、否定した。
君が見つけた幸せがほしい。
そんな僕をいっそ笑い飛ばしておくれよ。