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「 140文字の物語 」
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青年は喉の渇きを覚え、台所に向かう。
すると昼ご飯の下ごしらえをしている少女と顔を合わせることになった。
言葉をかける前に、少女は冷蔵庫を開ける。
綺麗に磨かれたグラスに麦茶が注がれる。
「どうぞ」と少女はグラスを差し出した。
わずかな変化も見逃さない少女との共同生活は順調だった。
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街で君を見かけた。
まるで迷子になったようにおぼつかない足取りだった。
それが心配になって、あとをつけた。
街の雑踏に隠れてしまうような小柄な君を追いかけるのは大変だった。
君はふらりと路地裏に入った。
僕もかける言葉を探しながら、路地裏へ行く。
君は泣き顔で、僕の両手に爪を立てる。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
それでも自分に言い聞かせるためには必要だった。
「すべて夢でも構わない」と。
想いを遂げた後は虚しさが残るばかりだ。
これからは赤の他人として振舞う。
こんなにも愛しいのに。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。
「私たちって何なんだろうね」下校中の幼なじみが唐突に言いだした。
僕は自然に足を止めた。
夕闇に輪郭を淡くする幼なじみは、どこか泣き出しそうだった。
「この関係に名前を付けるとするならば、幼なじみだろう」と僕は言った。
「それ以外の関係になりたいって言ったら?」幼なじみが尋ねた。
大通りを歩いて、食べ歩きなるものをしてみたい。
違うものを頼んで、一口ずつ分けあいたい。
そんなことも許されない。
何故なら、私とあなたは秘密の恋人同士だったから。
お互いに抱えこんでいるものが大きすぎるから、想いが通じた後も周囲にバレないように、と。
そう約束をしたのだった。
お風呂場の掃除は慣れたものだった。
少女の日課の一つだったから当然だった。
けれども、その余裕が事故を起こした。
青年がお風呂場に顔を出した。
突然のことで、スポンジを踏んでしまった。
洗い場の床に転ぶ、そう思っていた。
違う痛みが待っていた。
青年が優しく、両手を折れんばかりに握る。
缶詰が開かなくて缶切りを探している最中だった。
「少年よ、大志を抱け!」何に影響されたのか、姉が言ってきた。
「それよりも缶切り知らない?」と僕は尋ねた。
「あんたには虚構の大志もないっていうの?」妙に突っかかってくる。
僕は首を傾げた後、缶詰を諦めた。
姉の手に乗せる。
「iotuは、穏やかに微笑んで最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「全部忘れていいよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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僕は、穏やかに微笑んで最後の噓をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
心は迷子になったように、うろうろと揺れて、泣き出したいぐらい辛かった。
それでも微笑みは崩さなかった。
本当はすがりついて助けてほしいのに。
「全部忘れていいよ」と。君に告げた。
君は何も知らないままでいて。
彼女もまた世界を渡るトラベラー。
一つの世界に長くいてはいけない。
そんな宿命を背負っていた。
どれほど心地よくても、長居は世界の理を歪める。
そんな自分と同じ体質の人間がいることを知った時は、嬉しかった。
すれ違いとはいえ、出会えれば花が咲いた。
「また次の世界で」と言って別れる。
テストに出そうな範囲を友だちに絞ってもらって、慣れない勉強をした。
ノートをまとめ、単語帳を作った。
それだけでも、自分にとってはスゴいことだった。
その甲斐あって、ギリギリとはいえ赤点から免れた。
付き合ってくれた友だちには大感謝だった。
コンビニでダッツを奢ってもいいぐらいだ。
「この一杯のラーメンには世界ができている」突然、親友が言い出した。
悪い奴ではない、けれども周囲を見るという能力には恵まれてはいなかった。
これ以上、風変わりなことを言い出す前に、足を踏みつけ、顔を睨む。
「世界を飲み干す、という大事業。君にだって、その尊さが分かるだろう?」
少女がお風呂掃除をしている時だった。
ふらりと出かけた青年がふらりと帰ってきた。
少女はお風呂場から「お帰りなさい」と声をかけた。
何度か足音が通り過ぎて、お風呂場に青年が顔を出した。
「ここにいたのか」青年は笑いながら、お風呂場に入ってくる。
嬉しそうに、両手を指先でつつく。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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僕は、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
だから拳は開けない。
指を緩めた瞬間、弱音があふれだすだろう。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と。
本当はずっと覚えていてほしかった。
忘れないでほしかった。
君は何も知らないままでいて。
「あのね。おかしいでしょ」と幼い妹が困ったような表情を浮かべて、切り出した。
柔らかな髪を撫でて、言葉の続きを待つ。
「いじわるされるの」妹はためらうように言った。
気を引きたくて意地悪をする年頃だろう。
それで傷つくのが哀れだった。
「それでもね。大嫌い、って言えないの」と言う。
少女と二人、縁側で日向ぼっこをしていた。
いつまでも続けばいい、と思った穏やかな日常だった。
神剣・神楽が結んだ縁だ。
非日常こそが日常だろう。
生命が軽くなったような感覚を覚えながら、戦いに身を投じる。
同じ血の色を持つ同胞を斬り刻む時間こそが、少女と青年を繋げる日常だった。
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