政略結婚をすることとなった。
王族に産まれたのだから、いつかはやってくる日だ。
そのために勉強をし、そのために礼儀を学んだ。
恋というものをしたことがなかったから、未練があるとしたら、家族と会えなくなるということだけだった。
夫になる人は優しい人だった。
望んでいなかった幸せだ。
PR
両親と血の繋がりがない、と知った時は衝撃が強かった。
本当の両親に会いたい、と思ってしまった。
けれども、本当の両親とは会わせない、という約束があった。
成人した今、それがどんなにも良いことだったろうと思った。
義理の両親は充分すぎるぐらいに、慈しんでくれた。
感謝の言葉しかない。
格好悪くてもいいや。
このまま君と一言も喋らずにお別れするよりも、ずっといい。
僕はさりげなく、自分の両手をぎゅっと握る。
「あのさ」僕は君に声をかける。
泣きそうな顔をして、君は振り返った。
「仲直りしようよ」と僕は言った。
すると君の目からボロボロと涙が零れた。
「ごめんなさい」
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
・・・どうしようもないな。」
------
僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
これから別れゆく僕らにできることなんて、たかが知れている。
君につく最後の嘘はどれほど悲しいだろう。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。作った笑顔で言った。
我ながら、本当に・・・どうしようもないな。
「どうしたの?」君が尋ねた。
「なんでもないよ」と僕は笑った。
それを見た君は眉根をひそめる。
うまく笑えてないのは自覚している。
滑稽なピエロのような泣き笑いの表情をしているのだろう。
「大丈夫?」と君は再度尋ねた。
君には心配をかけたくなかった。
だから「大丈夫だよ」と僕は答えた。
完全な寝不足だった。
ついつい夜更かしするクセを何とかしなければ、と思いながら昨夜も夜更かしをしてしまった。
朝食は牛乳を一杯飲んだだけだ。
用意されていた朝食に悪かったが、気持ちが悪くて食べられなかった。
午前の授業中にお腹が空いて、今とは違った気持ち悪さを感じるのだろう。
君は恥ずかしそうに、僕の指を指先でつつく。
「してくれているんだね」僕の左手の薬指にはシンプルなデザインの結婚指輪がはまっている。
それは君も同じで、永遠を誓った日から外したことはない。
紙婚式を迎えた僕らは奮発したワインで乾杯をする。
グラスとグラスを重ね合うとチリンと鳴った。
「アーチェリーの言い換え言葉ってない?」紙の原稿用紙を走っていた鉛筆の音が止まっていた。
「洋弓?」私はいまいち納得できずに首をひねる。
「できたら口語で」親友は難しい注文をつける。
「アーチェリーはアーチェリーでしょ」私は読書を再開した。
鉛筆の音は止まったままだ。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」
------
僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
君の心が傷つくことを知っていて告げた。
これ以上、君を傷つけたくなくて、精一杯の嘘だった。
これが最後の嘘になる。
こんなことしか言えないなんて。我ながら馬鹿らしい。
少女はまるで葬式のような顔をして、青年の部屋に入ってきた。
パジャマ代わりのTシャツとジーンズ姿の青年は首をひねる。
少女は枕元の神剣・神楽をチラリと見た。
「ごめんなさい」と剣の巫女は謝る。
先日の大怪我を気にしているのだろうか。
「手放すつもりも、ないですけれど」と青年は言う。
うつらうつらと夢と現実の狭間を揺蕩っていた。
目覚まし時計が鳴る前のひとときは気持ちがいいものだ。
もう少し眠れるな、と思って毛布のぬくもりに包まれる。
再び夢の世界に入ろうとした瞬間、スマホが振動した。
目を開けて確認する。
メールが一通、届いた。
「おはよう」とそっけない文章。
誕生石でもあるガーネットの指輪をテーブルの上に置く。
指輪を貰った時の喜びは忘れられない。
いくら安物の石だとはいえ、誕生日プレゼントしてくれたことは嬉しかった。
震える声で「サヨナラ」と告げる。
数少ない荷物を持ち部屋から出て行く。
あなたは一度も振り返らなかった。
それが答えだ。
少女は青年から一番風呂を譲ってもらった。
お風呂は昼間のうちにピカピカと磨いたので気持ち良かった。
髪をタオルで拭きながら、青年のいる居間に向かう。
「お風呂ありがとうございました」少女はテレビを眺めている青年に声をかけた。
青年は振り返り優しく、少女の指を握る。
「あたたかいな」
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」
------
僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
どうせなら覚めない夢であればいいのに。
現実はそうはいかない。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
「君が幸せなら、幸せだよ」と。夢心地で囁いた。
これが本音なら、楽だったのに。
君の幸せを祈っているのは嘘ではない。
僕がいないのが嘘だ。
幼なじみだから、いつも傍にいるわけじゃない。
ひとりの女の子だと見てほしいと思っている。
器用なのに言えない私と、不器用だから気付かない貴方。
ずっと好きだった、と告白してしまえばいいんだろうけれども。
そんなつもりではなかった、と言われるのが怖くて、私はなかなか言い出せない。