忍者ブログ
「 140文字の物語 」
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは傷をいやすための嘘だった。
誰の傷だろうか?
僕の傷だろうか、君の傷だろうか。
もう区別がつかないほど満身創痍だ。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と。嘘をついた。
君が嘘だと見破ってくれたらいいのに。
そんなことはないけれど。
PR
君は一つも悪くない。
その手が血に塗れていても、君は無垢だ。
だから僕は君を落ち着かせるように言った。
「全部ぼくのせいにしていいよ。君は何も知らない。偶然、立ち会っただけだ」
僕の言葉に、君は機械づくりのように顔を向ける。
「さあ、手を洗って、早く逃げるんだ」と僕は微笑んだ。
僕は君の唇を啄むように口づけをした。
僕の愛をありったけ注ぎこんだ。
性急な口づけに君は驚いているようだったけれど、解って欲しい。
僕にとって君は唯一の愛している人だった。
君以外の人間はいらない。
それほど君という存在は大きかった。
人を愛するということを教えてくれたのは君だった。
君があげる悲鳴を聞き続けていた。
秒針の囁く声とハーモニーする。
僕を馬鹿にし続けていた君にも意外な欠点があったのだ、と感じいった。
君のお願いは安っぽくて、哀れだった。
君は叫び続ける。
どれほど泣き続けるのだろう。
囁き声を奏でる秒針を眺めながら、僕は見物した。
楽しい気分だった。
『行かないで』と言えなくて優しく、腕に触れる。
離れていこうとしたあなたは、立ち止まる。
私の手を撫でて、一本ずつ指を腕から離す。
そして、すっかりとつかんでいた手をほどくと、無言で背を向けた。
ああ、これで別れなんだと思うと、私はいつまでも小さくなっていくあなたの背を見続けた。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

------

僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
涙をこらえて、震える声で、君に嘘をつく。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
君と過ごす毎日に、くだらないことなどないというのに。
どうか君は何も知らないままでいて。
嘘つきの僕は願った。
奥手のあなた。
寒さを言い訳にして手を繋いでもいいのに、それすらできない。
これではいつまでたっても恋人同士らしくなれない。
だから、私の方から歩み寄る。
「寒いけど、手を繋いでいればあたたかいね」とあなたの手を握る。
「そうですね」緊張で震える声であなたは言った。
私は笑顔になる。
青春といえば甘酸っぱい恋愛だろう。
誰かが誰かを好きになる。
それは素敵なことだった。
同じ学校に入ってきた少年少女たちもそれを味わっていた。
それなのに、私は片恋すらできていなかった。
何が悪いのだろうか。
見当がつかなかった。
私は独り取り残されたようで、不満が胸から噴き出す。
布の上、ひとひらの舞う胡蝶を生み出す機械が止まった。
同じところを何度も、針は刺し続ける。
どうやら糸と糸が絡まってしまったようだ。
機械を一度、止める。
引っかかるそれを切ってしまう。
そして新しい糸を針に通す。
機械を再起動すると、細い糸は再び胡蝶の文様を刺繍しだした。
安心する。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

------

僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と。強がりを口にした。
君が何も知らない無垢な少女からルージュが似合う女性になりつつある。
僕のちっぽけさが分かり離れていくだろう。
こんな酷い嘘は、二度と吐けない。と思った。
君と手と手を繋ぐと、世界中の幸せを二人じめしているような気がするんだ。
君と僕だけで世界は完結している。
君の瞳の中に映る僕は、どれほど間抜けだろうか。
幸せに酔いしれている。
君はそんな僕を見て、微笑んでくれる。
繋いだ手を離したりはしない。
それだけで僕は誰より幸せになれるんだ。
どうして神様は昼と夜を分けてしまったのだろう。
活動する時間を太陽が昇っている昼と決めてしまったのだろうか。
段ボールの中で夜を過ごす僕は、独りぼっちだ。
誰も彼もが夜は眠っている。
話し相手すら見つけることができない僕は、分たれた時間を恨む。
昼に起きている人たちには分からない。
掛け時計の秒針が滑るように走る。
それはまるで狂気沙汰のように、変わらずに。
音もなく進むそれをぼんやりと眺めていた。
後どれぐらい経てば、朝日が昇ってくるのだろうか。
夜の隙間に迷いこんでしまった僕は、秒針を追いかける。
一秒でも早く朝がくればいいと願う。
孤独ではなくなるから。
君は嬉しそうに、僕の両手のひらをぎゅっと握る。
今日は雨が降らなくて良かった、と僕は思う。
雨が降ったら、君の飛び切りの笑顔を見ることはできなかっただろう。
久しぶりのデートは気持ち良い屋外だった。
心なしか太陽まで僕らを祝福してくれているようだった。
それぐらい僕も嬉しかった。
「iotuは、穏やかに微笑んで最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

------

僕は、穏やかに微笑んで最後の嘘をついた。
それは前へ進むための嘘だった。
こうでもしなければ、後ろばかりを振り返って、前進することはできなかっただろう。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。
「本当に?」君が僕を真っ直ぐ見つめて尋ねた。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。僕は思う。
PREV ← HOME → NEXT
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH