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「 140文字の物語 」
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初めて婚約者と顔を合わせた。
どうせ政略結婚だから、結婚式まで顔を見なくてもおかしくなかった。
一応、親も気を使ったのだろう。
私は「死体みたいな顔色ね」と言った。
ブルーブラッドのお貴族様らしい肌色だった。
「素直じゃないとこも可愛くてよろしい。気に入ったぞ」と婚約者は言った。
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わざと帰り道を遠回りした。
君にも分かっていただろうけれども、何も言わなかった。
沈黙を埋めるように、二人の足音がリズムを生み出す。
僕も君ももう少しだけ、一緒にいたかったのだ。
本当に少しだけ、あと少しだけ、夕日が沈む間だけ。
ここで『サヨウナラ』は少し寂しいじゃないか。だから。
インスタントだからといって悪いものばかりではありません。
娘さんをちょっと拝借しますよ。
そう男は言って、少女の手を取る。
懐かしいインスタントカメラで少女を写す。
「どうぞ、今日の記念に」と男は撮影した写真を手渡した。
そこにはフォトショップでは、修正できない瞬間が写っていた。
彼女は怒り顔で、僕の指先に触れる。
のどかな公園にはふさわしくない状況だった。
彼女が怒っている理由は単純だ。
デートコースの変更が気に入らない。
たまには、緑が茂る公園でもいいかな、と僕は思ってしまった。
二人が一緒にいれば、それは嬉しいデートだ。
そう思ってしまった僕の失敗だ。
「iotuは、まるでいつも通りに最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、まるでいつも通りに最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための噓だった。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と。
もう二度と会うこともないだろうから。
それなら想い出という優しい形を残して欲しくなかった。
これが本音なら、楽だったのに。
君に忘れられない痕をつけたいと願った。
白尽くめの部屋は規則正しい音をさせていた。
白いベッドに横たわるあなたの顔は、紙のように白かった。
「はい。今日のプリント」と私はカバンから出した。
それを受け取ったあなたは眩いばかりの微笑みを浮かべた。
「明日死ぬんだってさ、看護師が立ち話をしていたよ」
私は否定ができなかった。
心が揺れる。
ゆりかごの中にいるように。
ハンモックの中にいるように。
それは心地よい揺れだった。
眠りと目覚めの狭間にいるようだった。
もう少し、この気持ち良さを味わっていたかった。
けれども、目覚まし時計は非情だ。
起きなければならない時間に、けたたましい音を立てる。
二度寝したい。
僕は誓いを立てたんだ。
いついかなる時も、君の味方である、と。
その誓いを果たす時が来た。
僕は暁闇の中、走る。
嘲笑されて、孤独に陥ってしまった君を慰めるために。
君が独りぼっちで、涙を流さないように。
僕は素晴らしい朝が来るまで、傍にいられるように。
僕は君のために、全力疾走した。
君はいたずらな子猫のようだ。
今も目を逸らしつつ、僕の手のひらに爪を立てる。
綺麗に切りそろえられている爪は痛くなかったけれども。
『かまって』というサインを出しているようだった。
だから僕は君のほっそりとした手を握り締めた。
驚いたように君が僕を見つめる。
いたずらは成功のようだ。
心のエンジンが不調のようだ。
筆を持ったまま、一文字も書けないでいる。
筆を硯の上に乗せた。
そこへ、スキップした妻がやってきた。
妻はいつでもご機嫌だ。
「採れたての苺はどうですか?」と皿に乗った瑞々しい苺を差し出した。
「一つ、貰おう」と手を伸ばす。
「全部でもいいのに」
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
いや、そうなればいいと一抹の希望を含んだ嘘だった。
「いなくなったりなんてしないよ」と。
君を置いて姿を消す僕を許して欲しい。
これが最期の嘘だから。
君は何も知らないままでいて。
僕は静かに星に願う。
『可愛い貴方』呪縛のような言葉が押しつけられる。
美しいその人は私の髪を撫でる。
『貴方の全てが愛おしいの』美しい人は微笑む。
嘘か本当か分からない言葉を紡ぐ。
愛という名の鎖で私を縛りつける。
私は逃げ出したいのに、残された美しい人が悲しむような気がして、行動に移せなかった。
自然と足が止まった。
空は美しい夕焼けを迎えていた。
「早く帰ろうよ」と幼なじみは何が不満なのか訴えた。
少しばかりの寄り道をすることは、いつものことだったのに。
もう少し夕焼けを見ていたかったけれども、幼なじみにあわせて歩き出した。
幼なじみは影を見つめながら、黙々と歩いていた。
目が靄が出てきたように霞む。
生死を分かつ時間がきたようだった。
規則正しい機械音が耳にこだまする。
生かされているだけなら、ここで終わりにしてほしかった。
機械が繋ぐ生にしがみつきたくなかった。
それは残される家族にとっては酷なことなのかもしれない。
もう充分に生きた、というのに。
星空すら凍てつく夜だった。
言葉もなく、二人は歩いていた。
どこまで逃げればいいのだろうか。
寒さばかりが二人を包みこんでいた。
結局、どこにも行けずに短い朝を迎えた。
僕は泣きそうになりながら、両手のひらを軽く握る。
繋げそうで、繋げなかった手を握り締める。
「ごめん」と僕は謝った。
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