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「 140文字の物語 」
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今日は久しぶりのデートだった。
メールではなく、待ち合わせ場所で待っていた君は可愛かった。
僕を見つけて、小さく手を振る。
僕は一秒も惜しくなって駆けだした。
君は満面の笑みを浮かべながら、指を触れ合わせる。
僕よりも少しだけひんやりとした手が切なくって、君の手を力強く握り返した。
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「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
君が傷つかないように、甘く、柔らかに。
それはどうしようもない嘘だった。
「君にもらったものは全部返す」と。
初めて貰った誕生日プレゼントも、積み重なっていった想い出も、心に芽吹いた恋情も。
これが本音なら、楽だったのに。僕は思った。
「あなたの望み通りの性格になりましょう」メイド型のアンドロイドは言った。
忙しい日常を快適に過ごすために買った品だ。
決して安い値段でなかったが、見目麗しい姿のアンドロイドは新しい家族ができたようで嬉しかった。
「どんな私がお好みで?」と優しい声が流暢に尋ねる。
孤独が癒される。
君の唇を掠めるように奪った。
柔らかな感触の唇はミルクの香りがした。
リップクリームの香りだろう。
君は大きな瞳に見る見ると涙をためた。
それは頬を伝い、無言で僕をなじる。
「初めてだったのに」嗚咽混じりに君が言った。
僕はその言葉に後悔した。
もっと君の気持ちを考えればよかった。
雲に覆われて銀河を見ることができない。
一つの星になってしまった妹の姿を見られない。
きらきら星変奏曲が好きだった妹は、神様に愛されたのだろう。
ランドセルを背負うこともなく、天国へと召された。
満天に輝く星の一つになってしまったのだ。
いまだに星を見ては胸が締めつけられ私は泣く。
あなたはもう忘れてしまったのかしら?
ささやかな記念日だ。
忙しい日常の中では紛れてしまうのだろう。
デートできることを喜ばなきゃと私は思った。
ふいにあなたは「手を貸して」と言った。
嫌々ながらも、差し出して指をぎゅっと握る。
「間違えた。指を貸して」とあなたは薬指に指輪を通した。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

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僕は、ひどくためらいながら最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
心の叫びを吐き出すような嘘だった。
「世界で一番、大嫌い」と。
君に告げたところで、君は驚きもしなかった。
「知っているわよ」と君は嘘なのに微笑んだ。
これで良かったんだ。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
待ち合わせ場所に先につくのは、私の方。
彼はいつも遅い。
時間ピッタリに来ることも稀だ。
時間が過ぎて、姿が見えないことを不安に思うのは私ばかり。
何か連絡がないか、スマホを何度も確認してしまう。
もうこの恋は終わりなのかな。
私だけが想っている片恋に似ていて、心が揺れて哀しくなる。
燃えるように咲く花弁を噛む。
歯痕のついた花弁に満足して立ち去ろうとしたところで、侍女と視線が合った。
「お部屋にいなかったものですから」と侍女は明らかに狼狽していた。
僕はそんな侍女に近づいて、耳たぶを噛む。
花弁と同じように僕の歯痕が残る。
所有の証拠のように。
愉悦を感じた。
青嵐をやり過ごして、スーパーに向かった。
めっきり食が細くなった妹が「お姉ちゃんの炒飯が食べたい」と言ったからだ。
炒飯を生産するために、炊飯器に米をセットして、いざ出陣!
冷蔵庫の中は空っぽだったから、買わなければならないものはたくさんある。
それは妹の笑顔のためだ。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

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僕は、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
何もかもが失うというのなら、最初からいらない。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。
作り笑いを浮かべながら君に言う。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
永遠を君と誓いあいたいなんて綺麗すぎる夢だ。
母が亡くなってからというもの、父は研究により打ちこむようになった。
立ち入り禁止の研究室で、こもっていた。
そして、そんな父も亡くなった。
最期に研究室の鍵を託された。
四十九日をすましてから鍵を使った。
そこには母がいた。
「どうしたの?」と生前の母の声。
機械の母が私を抱きしめる。
たまにしか帰ってこない父が「相手側に失礼のないような」と僕に言った。
「相手はいつもと違うご令嬢なのよ。きちんと挨拶をするのですよ」着飾った母が言った。
招待された屋敷の中で、同じ年頃のどこか物憂げな雰囲気の少女と出会った。
「初めまして」僕は力強く、両手のひらを両手で包む。
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

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僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
緊張で震える声が君に気づかれないといいのだろうけれども。
嘘をつくのは難しい。
それは本音とは真逆の嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と。
なんたる滑稽な嘘だろう。
この世の中、怖いものだらけだ。
だってもう、仕方がないだろう?
君のためだ。
家につくなり「帰りが遅かったわね」と母に皮肉られた。
靴を脱ぎながら「今日は帰りが遅くなるって、言ったじゃん」と私は答えた。
「だからといって日が沈むまで帰ってこないとは思わなかったわよ」と母から苛立ちをぶつけられる。
本当に言いたいのは、夫だろう。
めんどくさいひとたちだった。
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