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「 140文字の物語 」
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僕たちは家出することにした。
もう耐えられない家庭崩壊に、僕も君も未成年だというのに、家を出えることにしたのだ。
辛うじて貯めたお小遣いを握りしめて、街を目指す。
見つかったらどうしよう、という不安はあった。
また元の家に戻されるのだろうか。
「全部僕のせいしていいよ」と言った。
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「これなんか、面白そうじゃない?」買い物に付き合ってくれた先輩には嬉しかったけれども、奇抜なものを勧められる。
「誕生日プレゼントなんですよ、先輩」と僕は言った。
「ありきたりなものよりも記憶に残るプレゼントになると思うよ」先輩は悪びれもせずに笑った。
僕は人選に誤ったと思う。
図書室で借りる本がクラスメイトと被った。
「次の課題で必要なんだ」と僕が言えば「こんな高い本、買う余裕なんてない」と君が言った。
その後も、こっちが借りる、成績がいいんだからなくても大丈夫だろう、と堂々巡りになった。
下校時間のチャイムが鳴った。
クラスメイトは諦めて遠ざかる。
ようやく天気は例年並みを覚えたようだ。
眩い夏を連れてくる梅雨らしい雨が降る。
僕も君も傘を差して登校する日々だった。
「いつになったら梅雨が明けるんだろうね」と君が言った。
差した傘の分、君との距離が遠い。
そしてそっと、君の指先を僕は指先でつつく。
濡れるのもかまわず手を繋ぐ。
「iotuは、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

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僕は、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。
最後ぐらいは明るくお別れしよう。
それは悪あがきのような嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
声のトーンは明るいのに、発言した言葉はひどく冷淡だった。
「わかった」君はうなずいた。
僕は・・・うまく笑えたかな?
自信がなかったよ。
「俺が悪かったよ。言い過ぎた」その言葉に、君は涙を流した。
「もう、喋ってくれないかと思った」と君は嗚咽混じりに言った。
「不安にさせて、ごめん。仲直りをしよう」と言った。
堂々と、言ってみたけれど不安が過って自分の手のひらをぎゅっと握る。
君は涙を流しながら、それでも笑った。
「おにぎり持って、木蓮を観に行きたい」と私が呟いたのも無理からぬことだった。
デスクの上の書類の山に現実逃避をしたのだ。
「先輩。もう木蓮の時期ではありませんよ」可愛げのない後輩がツッコミを入れる。
「今年は春が短かったなぁ」と私はぼやく。
「書類を溜めたのは先輩です」
「流れ星が流れたら、何を願う?」僕は望遠鏡を覗きながら尋ねた。
「ナイショ。叶わなくなったら嫌だから」君はクスクスと笑いを含んだ声で言う。
「それは夢の話じゃないか?」僕にまで笑いが伝染する。
「そういう、あなたは何を願うの?」君が尋ねた。
願うのはただ一つの永遠。
君といる未来。
カメラを買うのに友人に付き合ってもらった。
手軽に撮るだけならスマホで充分だ。
だからといって一眼レフを買うのは懐が痛い。
友人と堂々巡りになる。
売り場の店員さんが「どのような写真を撮りたいのですか?」と尋ねてくれた。
このままでは僕は許さないと思うほどの口論になるところだった。
身分の差など考えていなかった子ども時代。
貴族といえども末端貴族の出身の僕が王族である姫君にふれた。
軽々しく、指を握り締める。
「あなたはとても綺麗だ」と僕は告げた。
姫君は大きな瞳をさらに大きくして「ありがとう」と笑った。
その笑顔は可愛らしかった。
良い思い出の一つになった。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をついた。
今まで君にたくさんの嘘をついてきたけれども、いよいよ最後の日がやってきた。
それは歩き出すための嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
君を見捨てるように冷淡に告げた。
君の瞳が潤むのを見ながら、本音は仕舞い込んだまま。
あなたは憎ませれもくれない、ずるい人だ。
私の心を惑わすだけ惑わして、するりと風のように抜け出した。
私はあなたの顔を見るだけで心臓が締めつけるように痛むのに、あなたは飄々とした顔だ。
いっそ憎めれば、どんなに楽だろう。
今晩も瞳があなたを抱きしめるから、私は眠ることができない。
逢いたい気持ちが膨れ上がって手紙を書いた。
投函してから後悔をした。
まるでラブレターにみたいな文面の手紙を君はどんな気持ちで読むのだろうか。
顔から火が出るように熱くなってきた。
手紙を出したことを忘れようと深酒をする毎晩だった。
カタンと郵便受けが鳴った。
返事が返ってきたのだ。
休みの日だというのに僕はいつも通りに起床した。
スマホのアラームを切り忘れたのだ。
隣で眠っていた君が寝ぼけ眼で僕を見つめる。
焦点が合っていない目で「行ってらっしゃい?」と口唇が動く。
「まだ眠っていていいよ」と僕は君の眼の上に手のひらを置く。
君の睡眠時間は僕が守る。
君は眠る。
「出ていくの?」喧嘩の末に君は言った。
意地っぱりな君は『ごめんなさい』が言えないのは知っている。
でも、今回は君の方が悪い。
僕は無言で玄関の方へ向かう。
君は怒り顔で、僕の両手にしがみつく。
「話はまだ終わってないんだけど」と君は言う。
可愛らしく謝れればいいのにと僕は思った。
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