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「 140文字の物語 」
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「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は、特別に優しい声で最後の嘘をついた。
最後だから優しく、甘く嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「君にもらったものは全部返す」と。
楽しかった思い出も、誕生日プレゼントも、全部返して、君のことを忘れようと思う。
そんなのは嘘だ、と心が叫ぶ。
頼むよ、ごまかされてください。
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優しい口づけは、口移しの愛だ。
された箇所に微熱がこもる。
余裕のある口づけに、心まで溶けていきそうだった。
揺れる心に、されるがままの口移しの愛を受け取る。
どうすればいいのか分からない。
唇がふれた箇所が愛しい愛しいと肌が声を上げる。
乱れた恋心に、これ以上しないで欲しいと願う。
唐突な雨に打たれて、すっかりびしょ濡れになった。
暑さから解放されて、これはこれで涼しかった。
梅雨の雨というよりも、真夏の夕立のような雨だった。
梅雨明けまで近いのだろうか。
冷たい雨は汗を流してくれて、気持ち良かった。
けれども、傘は持ち歩こうと思った。
洗濯物を増やしたくない。
私は突然、郷愁にかられて、新幹線に飛び乗った。
両親には、なんと説明しよう。
手土産すら持たずに故郷へと帰ってきた。
駅を降りると、旧友と邂逅した。
「帰ってきたんだな。久しぶりじゃないか」と旧友は、カラッとした笑顔を見せた。
うまく返事ができずに、私は頬を染める。
「久しぶりだね」
私は怖い夢を見て飛び起きた。
秒針が脳裏に響く。
目覚まし時計を見ると、まだ真夜中といっていい時間だった。
夢の内容は薄っすらと溶けていき、怖かったという印象だけが残った。
隣の部屋から明かりがもれていた。
私は恐る恐る、ふすまを開ける。
「どうしたの?」と姉が尋ねるから指先を握る。
青年が月光に照らされた満潮を見ていたら、少女が新茶を運んできた。
いつもはヘアゴムで結んでいる髪も、おろしているからわずかな風で揺れる。
「寒くありませんか?」少女は開かれた窓を見た。
「ちょうどいいぐらいだ」と青年は答えた。
恋心を冷やすのには、これぐらいの風がいる。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
まるで親からはぐれた幼子のような君の頭を撫でる。
「いなくなったりなんてしないよ」と。嘘をついた。
それでひとときでも君が慰められるならいい。
そんな嘘しか言えない僕をいっそ笑い飛ばしておくれよ。
寝る前にスマホが振動した。
緊急を要する用事でもできたのだろうか。
スマホをタップするとLINEの通知。
開けて見ると、猫の写真と『うちの子可愛いでしょ』という文面。
たいした用事ではなかったけれども、猫の写真に和む。
友人がペットを自慢してくるのは、これが初めてではない。
返信をする。
体育館に置き去りにされていたゴムボール。
片付けるのを忘れたのだろう。
ためいきをついて私はしまうことにした。
ふいに思いついてゴムボールを軽く蹴る。
体育館の壁に当たって弾む。
誰も見ていないことをいいことにもう一度蹴った。
くさくさしていた気分が晴れる。
私は笑顔で倉庫にしまった。
今年も彼方に行ってしまったあなたに贈り物を選ぶ。
そんな高価な物でなくていい。
あなたが生きていたら喜んでくれそうなささやかな物でいい。
こうしてあなたのための贈り物を選び始めてから、どれだけの月日が流れただろう。
カウンターに持っていくと「贈り物ですか?」と訊かれたから微笑む。
『恋じゃないとさ』

男たちが集まって杯を交わしていた。
肴は年頃の娘を持った男の愚痴。
「あんなに熱心に見ているのに、恋じゃないとさ」と男は言った。
「なら、愛か?」隣にいた男が混ぜっ返す。
男は首を横に振る。「だったら良かったんだけどな」と杯を呷る。
「ままならないな」笑った。
「iotuは、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
そんな嘘なら道化師のように涙マークをつけながら、笑顔を浮かべる。
「永遠を信じている」と。
僕は君に告げた。
君は泣きそうな顔をしてうなずいた。
二人ともそれが嘘だと知っていた。
本当に、ごめんね。
君との思い出は手放せないものが多すぎて、アルバム一冊を埋めるのは早かった。
思い出を過去にしないように、たくさん写真を撮った。
それをアルバムに収めていくと、懐かしい気持ちでいっぱいになった。
君と思い出をどれだけ作れるだろう。
アルバムは何冊、たまるだろう。
僕は笑顔になった。
目には映らないのに、その日その日で空気が違う。
晴れの日は汗ばむような暑い空気。
雨の日は少し寒気がするような空気。
風が運んでくる空気は、同じものはない。
巡りゆく季節のように、今日の空気は昨日の空気とは違うのだ。
それが不思議で、僕は明日の空気に期待する。
どうか晴れますように。
妖艶にしっぽを振って猫が近づいてくる。
そうすれば許されるとでも思っているように。
その後ろに君は艶やかな笑顔を浮かべて、僕に近づいてくる。
僕が許すと決めつけるように。
僕はそんな君を睨みつける。
君は白く細い指で僕の頬をなでる。
猫も足元にすり寄ってくる。
僕はためいきをついた。
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