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「 140文字の物語 」
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季節は気づかないうちに通り過ぎてしまう。
踏んだ感触で、それが木の葉だということに気がついた。
枝から葉が落ちる季節になったのだと、ようやく気がついた。
君は目をそらしつつ、僕の両手のひらを触れ合わせる。
その頬が赤いのは夕焼けのせいだけじゃないだろう。
僕はそっと君の手を握った。
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「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、情けなく笑って最後の嘘をついた。
だって滑稽だろう。
笑ってでもいなければ、やり過ごすことができない嘘だった。
それはどうしようもない嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
ここが僕の死地だ。
生命を使い切るにはふさわしい場所だ。
君よ、いっそ笑い飛ばしておくれよ。
返事はいりません。
どんな言葉も軽々しくなるでしょう。
そんな言葉遊びのような返事は欲しくないのです。
優しくしてくれたあなたが好きです。
あくまで僕が、あなたを愛していたいんです。
あなたからの愛が欲しいと願ったりはしません。
あなたを愛している、という事実だけで満ち足りるのです。
映画研で恋愛映画を撮ることになった。
ヒロイン役は監督のイメージで、清楚な印象のあるあの子になった。
三角関係の微妙に揺れる恋心にふさわしいだろう。
最後のシーンでは主人公役とキスがあるそうだ。
一介のアシスタントには知りたくないことだ。
あの子が好きだったから余計に微妙な気分だ。
ランタンの明かりを頼りに夜道を歩く。
ふいに風が吹いて燈心が揺れた。
それだけのことで背筋が冷たくなった。
お化けが出たところで中身のない亡霊だ。
見えただけで、それ以上の被害はない。
分かっていても、鳥の羽ばたく音だけでも恐ろしかった。
一番に朝を迎える役目を選ばなければよかった。
今日、遊びに来た親戚の子は最悪だった。
軽々しく、私の大切のドールの指先に触れる。
「まるで人間みたいだな」とドールのスカートをめくる。
「いっちょ前にパンツを履いているぜ」と親戚の子は言った。
悪ふざけにも限度がある。
私はドールを取り上げて、親戚の子の頬を苛立ちでひっぱたいた。
乗りたい遊園地のジェットコースターは、一定年齢以下は親の同意が必要だった。
誕生日だからと連れてきてもらった遊園地だ。
「もちろん乗ってきていいわよ」と母は微笑んで送り出してくれた。
僕はジェットコースターの乗り場に駆けていく。
「転ばないようにね」と声が後押しする。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をついた。
みっともない愁嘆場は見せられない。
だから、弱みを見せないように嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
分かっていたけれども、鈍い痛みは心を突く。
「世界は希望で溢れている」と。静かに告げた。
頼むよ、ごまかされてください。
月のない夜に、僕らは言葉もなく歩き続けていた。
繋いだ手が唯一のぬくもりのように、無二の絆のように。
僕は何も言わなかったし、君も何も言わなかった。
星たちの光を浴びて、前へ向かって歩いていた。
空の色が染まり始めた。
朝がやってくるのだ。
僕らにとっての世界の終わりがやってきた。
男と女はバーのカウンターにいた。
それぞれカクテルを片手に、小さな声で話しあっていた。
どこにでもある光景だった。
それなのに、こんなシーンに不釣り合いのように、男は微かに笑みを浮かべた。
女の瞳から涙が零れて、カクテルグラスに滑り落ちた。
バーテンダーは静かに次のオーダーを待つ。
「お前はもっと真面目になった方がいい」と木の葉を踏みながら青年は言った。
「これ以上ないくらい真面目だけど?」娘は息を弾ませる。
「言葉は言霊というように、それだけの力がこもっている」青年は確認するかのように言う。
「そんなこと知ってるよ。その話をするの何度目?」娘は呆れた。
君はぎこちなく、僕の指に指を絡める。
「別に手を繋ぎたかったわけじゃないんだから」君は言い訳を並べるように言う。
「これだけ人がいたら、あんたが迷子になるんじゃないかって思っただけなんだから」君は素直に言わない。
それを知っている僕は笑顔で「ありがとう」と言う。
「感謝しなさい」
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
君を愛していたのには嘘はなかった。
だから、できるだけ優しく囁く。
「君を、信じきることができなくてごめん」と。
たとえ君が嘘をついていても僕は疑わないだろう。
僕が嘘をついたように。
本音は仕舞い込んだまま。
「僕と君の関係はただの友だちだろう?」と僕は事実を言った。
すると君は学校の廊下だというのに、泣き顔で、僕の腕を両手で包む。
「そんな悲しいことを言うなよ。腹心の友だと言ってくれてもいいんだよ」と君が言った。
何かのメディアに影響されたのだろうか。
僕には、厄介この上なかった。
-
短冊片手に小一時間。
「そんなに深く考えなくてもいいんだよ」と親友が笑う。
天の神様に願うことだ。
簡単な願い事ではいけないような気がして、短冊を見てしまう。
親友はすでに笹の葉に短冊を飾っている。
これ以上、親友を待たせてはいけない。
『私以外の誰かの願いが叶いますように』と書く。
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