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「 140文字の物語 」
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体温と同じか、それ以上の気温を叩き出した日。
君は仕事中だというのに、ゆらゆらと揺れていた。
備品の体温計で熱を測らせる。
その間にコップ一杯の麦茶を注いで持ってくる。
君は一気に冷たい麦茶を飲み干した。
体温計が鳴った。
君の平熱よりも少し高い。
熱中症の一歩手前だったのだろうか。
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朝ご飯のフルーツをリンゴとバナナの狭間で揺れる。
食いしん坊の君なら、どちらを選ぶだろう。
『両方!』と元気よく答える姿を思い浮かべる。
そんな君を朝から想像できて、学校で会うのが楽しみになってきた。
早くリンゴかバナナかを選ばなければ。
どちらも美味しそうだから僕は困ってしまう。
旅行先というのは、何があるのか分からない。
このご時世だ、慎重すぎてもかまわないだろう。
遠く通り過ぎたら、笑い話になってもいいだろう。
それなのにマスクをつけた君は、あちらこちらに近寄ってふれていく。
だから僕は力強く、君の指先を両手で包む。
「約束は?」僕が睨むと君は縮こまる。
パジャマ姿で階段を降りる。
すでに母の作った朝食が並んでいた。
「今日はお昼、どうする?」母が味噌汁を温めながら尋ねてきた。
寝ぼけ眼で私は椅子を引く。
「ハンバーガーが食べたい」と目の前の幸せを眺めながら言った。
手作りを否定したわけではない。
「楽ちんね」と母は笑った。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

------

僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それは相手の笑顔の嘘だった。
いつでも笑っていてほしかったから、嘘をついた。
幼子なのは僕の方なのかもしれない。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と。
できるだけ優しく、君のために僕は笑顔を浮かべる。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
少しだけお洒落をしたくて、ヒールのあるミュールを買った。
今までスニーカーばかりを履いていた私にとって、驚きの買い物だった。
ミュールを履いて、デートに行った。
ドキドキしながら待ち合わせ場所で待っていた。
「今日は特別なの」と私が言うと「はいはい、可愛い可愛い」と子ども扱い。
掠めるように夜風が頬にふれた。
陽が昇る前の早朝の風は気持ち良いものだった。
ふと思い出すのは君のこと。
遠く離れてしまったけれども、君は今でも元気にやっているのだろうか。
そんな心配は無用だ、と君は明るい笑顔を浮かべているだろう。
掠めた風が感傷を呼び起こす。
僕は君に会いたい。
「僕が悪かったよ」と謝った。
すると涙をためた瞳でこちらを見つめていた君は「私もごめんなさい」と言った。
これで仲直りだ。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の腕に触れる。
やっぱり君は、笑っている方が可愛いや。
そんな僕の気持ちを知っているのか、君は穢れない真白な笑顔を浮かべる。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

------

僕は、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をついた。
心音が君に伝わらずに良かった。
これ以上ないぐらいに鼓動が高鳴っている。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」と。
一番欲しかったものに言う。
「本当に?」
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。
海に深く潜れば潜るほど、水圧はかかり息ができなくなる。
そんな苦しみを地上の上で、僕は味わった。
君は手のひらを返すように、簡単に僕を裏切った。
君には僕でなくても良かったのだ。
財布代わりになる便利な愛玩動物であれば、君は愛想を振りまく。
そうやってずっと君は生きてきたのだろう。
「寒くなかった?」君が質問をした。
「ちっとも」と僕は強がりを言った。
ほんの少し外に出ていたけれども、この冬の寒さには閉口した。
手がかじかんでいた。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の指を両手で包む。
君の温かいぬくもりが伝わってくる。
「嘘つきさん」と君は僕の手を握り締める。
「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
・・・泣いたりしないよ。」

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僕は、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
君はヒーラーだから、最後まで生き残っていなければならない。
僕はアタッカーだから生存順位は低い。
だから君が安心するような嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
・・・泣いたりはしないよ。
話題作の映画を観て、カフェで感想を言いあっていた。
どこが見どころだったか、どこが感動したところだったか。
注文したホットコーヒーが冷めるぐらいに話しあった。
ふと私は思い立った。
「あの甘いセリフを君の口から、聴いてみたい」と言った。
すると君はむせたのか、咳をゴホゴホとする。
ガラスケースに貼りつくように、ゆらゆらと揺れるクラゲを見ていた。
半透明なクラゲの動きは見ていて、飽きることはない。
今の彼と初めてデートをしたのも、この水族館だったな、と感慨にふける。
彼がこの場所を選んだ理由は知りたくない。
私がクラゲを見ていたら何時間でもご機嫌だから、と。
遠く近く聞こえる声。
各々の場所に隠れて、鬼を囃したてる。
子どもたちは十字路に置かれた空き缶を虎視眈々と狙う。
親戚の子ども相手は疲れると、里帰りした青年は思った。
青年を嘲るように、昔ながらの遊びを提案してくる。
最初は可愛いところもあるんだな、と思っていた青年も限界だった。
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