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「 140文字の物語 」
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「iotuは、感情を抑えながら最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
・・・どうしようもないな。」

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僕は、感情を抑えながら最後の嘘をついた。
なるだけ、君に嘘だとバレないように。
まるで自然に、切り出した。
それは未来へと歩き出すための嘘だった。
「いなくなったりしないよ」とささやかな嘘をついた。
感情はすでに、君を置いて先を見据えているというのに。
・・・本当どうしようもないな。
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潮風が少女の髪をなびく。
陽はとうに沈み、月が顔を出す時間だった。
波打ち際はまるで子守唄のように、一定のリズムを刻む。
少女は素足で歩いていく。
日中の暑さから解放されて、ほんの少しばかり涼しい。
微かに吹く風が塩の味がした。
結ばず垂らしたままの髪が自由気ままに風に遊ばれていた。
インクを流したような闇夜に涼風が吹いた。
静かに咲く薔薇の花に手を伸ばせば、棘が毒針のように指先に刺さる。
まるでさわれるのを厭うように、この花は棘を持つ。
それでも少年は気にせずに、闇夜に咲く薔薇の花を摘んだ。
赤く滲んだ指先をそのままに眠る少女の枕辺にそっと捧げる。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
・・・泣いたりしないよ。」

------

僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
それでも良いと僕は思った。
仮初の幸せに君が包まれるなら、喜んで僕は傷つこう。
「世界は希望で溢れている」と嘘をつく。
君は幸せそうに笑う。
その笑顔を守るためだから、僕は・・・君の前で泣いたりしないよ。
涙すら浮かばない乾いた目で君が僕を見る。
「なんでこの手を離してくれないの?」と君が言った。
生きるのに疲れ切った表情をしていた。
「君が好きだから」僕はありのままの気持ちを伝えた。
手を離したら最後、君は命を絶つだろう。
それが伝わってくるのだから余計に君の手は離せるわけがない。
文字が裏写りせずに、さらさら書けるペンは貴重だった。
特にアイデアを外で練る時、さっとペンを出してメモ帳に書けるのは作家にとって素晴らしい必需品だった。
ようやく巡り会えたボールペンがワンコインの値段だとしても気にならない。
作家は今日もメモ帳とボールペンを持って散歩に出る。
もうすぐこの国は破滅するだろう。
民衆の怒りの矛先は国王夫妻に向かうことが分かっていた。
おそらく長い牢獄生活の後、首を落とされるだろう。
国王夫妻は愛娘の肩に手を置く。
そして涙を流した。
せめて愛娘だけでも国外に逃がしてやりたい。
惜別の時は迫っていた。
平民のような姿ごと抱いた。
白線の外側を歩いていた君を無理矢理、抱き寄せると抵抗された。
けれども僕はめげずに手のひらを軽く握る。
そして白線の内側に君を入れる。法定速度を守っていないトラックが君の隣を通り過ぎた。
君の長い髪が風圧でさらりと流れていった。
「ありがとう」腕の中の君はようやく笑顔を見せた。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
そうでも思っていなければやっていられない。
それはたぶん最低の嘘だった。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と、僕は笑った。
つられたのか、安心したのか、君も笑った。
僕の胸が痛んだ。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
予感がした。
彼から痛いぐらいに、力いっぱい抱きしめられた。
表情は見えなかったけれども、震える腕が悲しかった。
私も腕を伸ばして、彼の背中にそっと回す。
「離してあげられなくてごめんね」耳元で彼の声がささやく。
「これぐらい大丈夫だよ」と私は彼の背中をトントンと叩く。
あたたかな滴が散った。
制服のデザインを募るコンテストが始まった。
今の制服がダサいといって着崩す生徒が多いからだった。
それなら、お前たち好みの制服とはどんなものなんだ。という教師たちの挑戦状だった。
今の制服に不満はなかったけれども、面白そうだった。
ラノベで出てくるような制服もいいな、と思った。
誕生石の小さなガーネットがはまった指輪をコップの中に落とす。
子どもだましのような指輪かも。
実際、初めてのバイトで買えてしまったぐらいだ。
だからといって嘲笑することはないだろう。
コップの中のガーネットは、ゆらゆらと尾をひるがえす金魚のように見えた。
小さな世界は息づいている。
二人は電車に揺られながら、他愛のない話を交わしていた。
そうでもしなければ退屈な昼下がり。
ふいに、僕はあくびをもらした。
すると君はそっと、両手のひらに爪を立てる。
話に集中していなかったことがバレてしまったようだ。
こんな昼間は、転寝をしながら夢でも見ていたい。
電車が揺れた。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

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僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
いっそのこと泣いてしまえれば、どんなに良かったのだろうか。
泣けないから余計に辛い嘘だった。
それは前へ進むための嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」と。
心はグラグラ揺れているというのに。
どうか嘘だと君は気づかないで。
「別れよう」と僕は切り出した。突然のことに君は目を丸くした。
「君とは、幸せになれないから」ぼそぼそと理由を告げると、君は笑いだす。
「あなたと不幸せになる覚悟はとっくにできているよ。恋ってそういうものでしょう?」と君は言った。
「君が不幸になるのは見たくない」と僕は呟いた。
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